左から)東 啓介 池田亮 高羽彩 有澤樟太郎
2020年7月、コロナ禍により3月から休館していたシアタークリエに俳優とクリエイターが集まって立ち上げた新企画『TOHO MUSICAL LAB.』。1ヶ月の稽古を経て2本の新作ミュージカルを作り上げ、生のエンターテインメントを届けた。このチャレンジが大きな評判を呼び、2023年11月に第2弾を実施することが決定。高羽彩(タカハ劇団)と池田亮(ゆうめい)が脚本・演出を担当し、新たな2作品を上演する。
公演に向けて、それぞれの短編で主演を務める有澤樟太郎と東啓介、脚本・演出の高羽彩と池田亮による取材会が行われた。
高羽が描く『わたしを、褒めて』は、初日を迎える直前の舞台裏の物語。現場が一番バタバタしている時の様子をドタバタコメディとして届けるバックステージものだ。このテーマについて、高羽は「普段、俳優さんを目にする機会はあっても、裏方のスタッフさんが何をしているかはお客様になかなか伝わらないと思います。皆さんのプロフェッショナルな仕事があって作品がお客様の元に届くことを伝えたいのと、それを知るとお芝居を見るのがもっと楽しくなるんじゃないかという思いがあります。客席にいる皆様も、悔しさを飲み込んだり悲しみを乗り越えたりしながら自分のお仕事に向かっていると思うので、エールも同時に届けるつもりで、生々しいけど楽しい、フィクションのバックステージものをやりたいと思っています」と話す。
主演を務める有澤は「TOHO MUSICAL LAB.という素敵な企画に参加できることも、高羽さんとまたご一緒できるのも、すごい方々と共演できるのも楽しみ。さらに今回は短編で実験的な作品。短い期間ですが色々なチャレンジをして、高羽さんが作ってくださったお客さんに届けたい作品に自分の思いを乗せていきたいです」と意気込んだ。
池田が脚本・演出を務める『DESK』は、アニメーション業界で働く人々を描いた作品。池田は「TOHO MUSICAL LAB.と言うことで、実験や研究開発をする場だと思っています。今回短編の新作オリジナルミュージカルを作る上で、今までにないミュージカルにしたいと思いました。同時に、色々な方から話を聞いて、現代社会で働いている人の声を歌にしたら凄まじいパワーが生まれると感じました。それをミュージカルにしてみようと思ったんです。素晴らしいキャスト・スタッフの方々に揃っていただき、贅沢な時間で滅多にない機会。観客を含めた皆さんで新しいものを見つけられたらいいなと思います」と期待を語った。
主演の東は「この企画に参加できることが本当に光栄です。前回は無観客で、劇場で観たかったと思っている方もたくさんいると思いますし、LAB.=実験という試みも素敵だと思います。こうした取り組みにより、ミュージカルを好きになってくださる方が増えたり活気が出たりしたらいいなと思います。ミュージカルは堅苦しくないとわかってもらえたり、素敵な楽曲に勇気付けられたり、やってみたいと思ってもらえたら。演劇を見てお客様の人生が少し豊かになったら嬉しいですね」と笑顔を見せる。
今回の企画やミュージカルの魅力について、有澤は「みんな大好きですよね。僕の周りにも、ミュージカルだから観たいっていう人も多い。ハッピーになれる作品も多くて僕も大好きです。今回は短編の同時上映で、偶然“バックステージ”というテーマが被った。ファンタジーというよりみんなに刺さるような歌詞になっていると思います」と話し、東は「今回の作品は皆様にとってエールになると思いますし、皆さんにもたくさん歌ってほしいなと思いますね。本音を言えないってストレスじゃないですか。気持ちを歌にすることでポップになったりラブソングに変わったり、色々な色が見えてくる。そこがミュージカルのかっこよさ、可愛さ、素敵なところだと思います」と魅力をあげる。
また、高羽と池田は普段、自らの劇団でストレートプレイを中心に行っている。高羽は「ミュージカルは音楽の力で強制的に心の扉を開きますよね。ミュージカルという非日常な空間と、お仕事という日常に即したテーマが重なった時にすごく素敵なことができるんじゃないかと思っています」と語り、池田は「初めてミュージカルを見た時、なぜかわからないけど歌を聴いて言葉にならないものを感じたんです。普段、仕事中や疲れた時にふと聴いた知らない音楽ですごく感動することってありますよね。そんな時に、ミュージカルってすごく非日常かつリアリティのあるものなんじゃないかと思い、今回の脚本に繋がった気がします」と振り返る。
また、楽曲について池田が「僕の脚本だけ読むと暗いと思いきや、意外と明るい雰囲気です」と話すと、東は「えー!? 暗いなって思ってました(笑)」と驚きの表情を浮かべ、有澤も「マネージャーさんが(東に)一生懸命説明してたもんね。でも救いはあると思う……って(笑)」と頷く。池田は「明るく元気な方が開放感があるなと思うのと、疲れ切っている時って変なテンションになるのであのイメージ」と説明。高羽は「自分が観る時に、ミュージカルならできるだけ長く歌ってほしいんです。一応セリフもあるけど、常に何かしらの音がなっているようにしたいです。バックステージの物語なので、バンドメンバーの皆さんにも現れてもらおうかと」と話し、さらに2作とも生演奏であることが明かされた。
演出家の2人から見た主演・カンパニーの印象について、高羽は「(有澤とは)数年前にご一緒して、当時もビッグでしたが今はさらにビッグになりました。本当に楽しみですし、この座組のメインを張っていただける俳優さんだと期待しています。私がストレートプレイ畑でやっていることもあって他のキャストの皆さんは初めまして。本当に達者な方々なので安心してキャラクターと作品を委ねようと思います。ストレートの演出に慣れている私との共同作業も楽しんでやっていただけたら」と期待を寄せる。池田は「(東を)初めて見たのは舞台『弱虫ペダル』でした。原作を知っているからじゃなく舞台としてすごく楽しかったんですね。(東演じる葦木場拓斗は)3年生で初めてインターハイに出場する熱い役なんですが、途中から東さん本人にすごく目線が行ってしまいました。2.5次元舞台で演じている俳優さんの方が印象に残る、本人のことを知りたくなることって中々ない。今回こうして一緒にできるのが嬉しいです」と喜びを語った。
共演者について聞かれた東は「豊原さんは事務所の後輩で、共演も多いので今回も楽しみ。壮さんは末満健一さんの『TRUMP』シリーズ以来の共演なので、また一緒にお仕事できるのが楽しみです」と話し、有澤は「歌が上手い3人に囲まれるんですよね。めっちゃ楽しみです! のびのびできたらいいなと思います」と張り切る。
最後に、東から脚本・演出の2人に「気になることがあるんです。普段はご自身の劇団の作品を1本見てもらっている中、オムニバスで同時上演。演出家としては意識しますか?」と質問が。池田が「普段だと対バンみたいなイメージがあるけど、今回は違いますね。高羽さんも自分も絶対新しい発見がある。バラエティー豊かなネタ見せ番組のような感覚で楽しんでほしいです」と語ると、高羽も「どちらが先に上演かまだ決まっていませんが、私が書いているのが初日直前のバックステージということもあって、池田さんの作品にバトンを渡すようなものになるといいなと思っています。私の作品に出てきたスタッフさんたちが池田さんの作品の背後に浮かび上がっていくような構造になったら。2本で1つの作品になったら素敵だと意識して書きました」と締め括った。
TOHO MUSICAL LAB.
『わたしを、褒めて』
脚本・演出 高羽 彩(タカハ劇団)
作詞・作曲 ポップしなないで
出演 有澤樟太郎 美弥るりか エリアンナ 屋比久知奈
『DESK』
作詞・脚本・演出 池田亮(ゆうめい)
作曲 深澤恵梨香
出演 東 啓介 豊原江理佳 山崎大輝 壮 一帆
(2作品同時上演)
会場:シアタークリエ
公演日時:2023 年 11 月 22 日(水)19 時
11 月 23 日(木祝)12時/16時
HP https://www.tohostage.com/tohomusicallab/