2012年1月14日の全国公開を前に、2011年12月19日、午後、一足早く日本のファンお披露目された「マイウェイ ‐12,000キロの真実‐ BASED ON A TRUE STORY」。初めて日本で上映されるのに際し、メガホンをとったカン・ジェギュ監督をはじめ、主演のオダギリジョー、チャン・ドンゴン、ファン・ビンビンが韓国、中国から東京に集結し、ザ・ペニンシュラ東京のグランド・ボールルームで完成披露来日記者会見が開かれた。
アメリカ国立公文書館で見つかった1枚の写真。ドイツ軍の軍服を着てドイツ兵に交わる1人の東洋人の姿が写し出されている。それを題材にソ連軍、ドイツ軍の軍服を着て12,000キロにもおよぶ道のりを生き抜いたある男たち(辰雄:オダギリジョー、ジュンシク:チャン・ドンゴン)の葛藤、友情を描いたこの「マイウェイ」。「すべてを失っても夢をあきらめず、生きる道を探し続ける…」ただ戦争の悲劇を描いて終わるだけではない、「希望を見出す力」を描いた作品だ。
カン・ジェギュ監督、オダギリジョー、チャン・ドンゴン、ファン・ビンビンの順で登場した。なかでもファン・ビンビンは先の舞台挨拶でのフリルがかわいらしいオフショルダーのロングドレスから、白地にレースが施されたシースルーに同じ白のロングを合わせ、大きな瞳の美しさがより際立つドレッシーな装いを身にまとわせてマスコミの前に再登場した。
まず、俳優陣から挨拶が行なわれた。
オダギリジョーの挨拶からはじまった。「こんばんは。オダギリです。今日初めて日本で上映することになって、すごく緊張というか心配というか不安というか、そんな気持ちです。なかなか日本で戦争映画は作ることも観る機会もないと思いますが、カン・ジェギュ監督は日本でも大ヒットした「シュリ」「ブラザーフッド」などを手がけ、韓国でも歴史に残る監督といわれています。戦争映画の醍醐味をフィルムに焼き付けることができる監督だと思っています。期待してもらえればうれしいです。今日はよろしくお願いします。」とカン・ジェギュ監督や戦争映画に対する思いを赤裸々に語った。
チャン・ドンゴンは「こんばんは。チャン・ドンゴンです。」とここでも日本語での挨拶から。チャン・ドンゴンは今作品では7~8割りは日本語のセリフだった。2002年の「ロスト・メモリーズ」でも、セリフの大部分が日本語である役をこなしているが、今回の作品は戦闘シーンのなかでの日本語のセリフはとても苦労したことだろう。「みなさまお久しぶりです。今回「マイウェイ」を皆さんにご紹介するためにやって参りました。日本と韓国で同時に公開されるということははじめてなので、いつにもまして緊張しておりました。また一方では、みなさんがどのような思いで観ていただけるか期待でいっぱいです。1年近い歳月をかけてスタッフ全員が苦労して作り上げた作品ですので、みなさん、愛情と声援をお願いいたします。」誰もが公開時に感じるであろう不安感と期待感でいっぱいな様子がうかがえた。
ファン・ビンビンは「こんにちは。別の映画「マイウェイ」を携え、また日本に来れたことをうれしく思っています。日本の皆さんにこの映画を気に入っていただけたらうれしいです。この映画は監督、そして私達俳優、本当に苦労して作り上げました。ぜひ応援してください。宣伝をよろしくお願いいたします。」とこの作品を愛している心情が垣間見られた。
カン・ジェギュ監督からは「みなさん、お会いできてうれしいです。この作品はシナリオが完成するまで4年という歳月を要しました。長い時間をかけて作り上げ、韓国、日本、中国の俳優とスタッフが集まって、力を集結して作り上げた作品です。ワンカット、ワンカット本当に最後までベストを尽くして作りました。この場を借りてみなさんに感謝の意を表したいと思います。この「マイウェイ」が韓国、日本、中国の発展に少しでも役に立てればという気持ちでいっぱいです。そして、日本と韓国がこの映画を通じて少しでも近くなり、お互い理解し合えるきっかけになればと思っています。」と映画の持つ力を信じるカン・ジェギュ監督ならではの挨拶だったのではないだろうか。
代表質問が行なわれた。
Q1:<カン・ジェギュ監督> 壮大なスケールの映画で、元はアメリカ国立公文書館に保存される1枚の写真からストーリーが出来上がったとうかがったが、その写真を見たときの思い、また、どのように作品に仕上げていったのか?
A1:6年前にインターネットにドイツ軍服を着た東洋人(アメリカ軍の捕虜)の1枚の写真がアップされ、問題視されました。それを素材にして、一つのシナリオ「D-DAY」が発表されました。そして、ドキュメンタリーも制作されました。小説もあります。そのシナリオを読んで、新鮮でドラマチックだと思いました。しかし、ほかの作品があったので、すぐには作品化できませんでした。でも、ドキュメンタリーを見て、近現代史において小説よりもっと小説性があることに驚きました。それで、ぜひ映画化したいと思いました。4年前に自分でシナリオを書き直し、今回の作品となりました。
Q2:<オダギリジョー> スタントなしの壮絶なアクションシーンについて、どうだったか?
A2:いかがでしたか…(そう言われても)。(笑)それはきつかったです。たぶん、表現的に適している言葉は「この世のものとは思えない」でしょうか。ひどさが…。日本における戦争映画は親子愛や愛国心をテーマにすることが多いですが、大掛かりな戦闘シーンは地理的にも金銭的もなかなか難しいことで、僕のなかで経験のない規模の戦闘シーンの毎日だったので、皆さんの想像を絶するひどい現場でした。(笑)今日のこの会見はニコニコ動画で生放送されているということで、言葉を選びなさいと注意されているんで…。(笑)本物の戦車も使っていて、戦車が行きかう現場やマシンガンを打ちまくる現場も今後はないだろうし、いい経験をさせてもらったと思っています。
Q3:<チャン・ドンゴン> 「ブラザーフッド」以来のカン・ジェギュ監督とのタッグだが、今回の作品でのエピソードは?
A3:カン・ジェギュ監督とは「ブラザーフッド」以来7年ぶりでした。戦争映画はこれで2度目ですので前作での経験が役に立つかと思っていました。最初は戦争映画出演がはじめての俳優達にアドバイスをしていましが、実際、今回の現場では全然役に立つような状況でありませんでした。前作と比べてもスケールが大きなシーンが多く、特に現場は海辺ということもあり、-17度にもなることがありました。すごく寒いなか、薄い軍服のみでの撮影が続いたので、俳優たちは軍服のなかに着込んだりもしたのですが、暖まることはなかったです。それが辛かったです。
Q4:<ファン・ビンビン> 日本人に家族を殺されて復讐の鬼と化したスナイパーの役だったが、みなさん過酷な現場だったと話されていますが、いかがでしたか?どのようなエピソードがありますか?
A4:確かに大変でした。現場では誰も女性扱いしてくれないんです。まず、撮影に入る前に中国で射撃の練習やアクションの練習をし、韓国に行ってからは、韓国のアクション監督から指導を受けました。現場では、監督をはじめ、チャン・ドンゴンさんもオダギリジョーさんも良くしてくれましたが、女を捨てなければならないという状況でした。男性と一緒に走るシーンでは、私はチャン・ドンゴンさんのように足が長くないので(笑)なかなか大変でしたが、必死で走りました。そして、氷水のような冷たい川の中にも男性と一緒に入りました。女優は本当は戦争映画は出たくないというのが本音ですが、監督に出演の約束をした以上、「やらなければ!」と言う思いで、演じていました。この映画は戦争シーンが多くありますが、実のところは人間同士の愛、心がふれあうというのがテーマです。史実のなかには残酷なことが起きていたわけですが、今のような人間同士の心のふれあいが当時もあったというのがこの映画の根本にあると思っています。
記者からの質問に続いた。
Q1:<カン・ジェギュ監督> 日中韓から、それぞれスターをキャスティングされた今回の作品、オダギリジョー、チャン・ドンゴン、ファン・ビンビンの3人をキャスティングした理由は?
A1:チャン・ドンゴンさんについては。ノルマンディーの海辺で辰雄と再会したとき、「私たちはあまりにも遠くに来てしまった」というセリフがあるんですが、このセリフの感情とまなざしを表現できる俳優はチャン・ドンゴンしかないと思いました。オダギリジョーさんについては。映画で一緒に仕事ができるとは思っていませんでした。本当に繊細で丁寧は芝居ができる、すばらいし俳優だと思っていました。今回運よく一緒に仕事ができてよかったです。ファン・ビンビンさんについては。韓国と中国との合作映画にも出演されていて、普段からすばらいしい女優だと思っていました。残念ながら、今回の「マイウェイ」では早く死んでしまう役なので、たくさんのファンの方々ががっかりするのではないかと心配しています。なので、次の作品では最後まで長生きする役でまた一緒に仕事をしたいと思っています。それから、オダギリジョーさんとチャン・ドンゴンさんが並んでいるシーンを想像するだけで、男である自分が見ても本当に男前で魅力的に感じます。そうすると、日本、韓国にいるお2人の女性ファンはどれだけ喜ぶんだろう?と思うだけで私もうれしくなりました。
Q2:キャストの一押しのシーンは?
A2:<オダギリジョー>
その質問が一番困るんですよね…。ちょっとだけぶっちゃけると…(笑)韓国ではヒットしなければならないのはもちろんのこと、日本でもヒットしなれければ、監督は喜べないと思うんですよ。1人でも多くの方に観ていただきたい、これが本心です。このシーンを!というのはないです。とにかく映画を観てもらったほうがスタッフ一同みな幸せになりますので、もう見所なんて書かなくていいですよ。(爆笑)とにかく見てほしいということが伝われば。
<チャン・ドンゴン>
(日本語で)その通りです!(笑)私もオダギリジョーさんと同じ心境です。一つ申し上げるならば、日本の観客の皆さんが見た場合、スケールの大きい戦争シーンがあるので、新鮮なシーンと映ると思います。そのような視覚的なおもしろさや2人の男性にまつわるストーリーを中心に観ていただければ、おもしろく観ていただけるのではないかと思います。
<ファン・ビンビン>
2人のおっしゃる通りだと思います。(笑)今日、この前に個別インタビューを受けていたんですが、そのときにある記者の方が「2時間20分だとはじめ聞いて長いと思っていたが、観るとあっという間に時間が過ぎ、それでも足りないと思うくらいだ」と話されていて、本当にそのような映画だと思います。この映画は中国、韓国、日本のスタッフ、キャストが本当に苦労して撮影しました。映画が好きな方なら特にアジアの力が結集したこの作品は失望することはないと思います。おすすめをというならば、観た方がご自分の良かったシーンをお友達に伝えてほしいと思います。
監督はじめ、俳優人からユーモアあるコメントでありながら、この「マイウェイ」にかけた熱い情熱が伝わってきた。それだけ、過酷な撮影現場でありながら、本当にアジアの力が結束したチームだったのだろう。
マイウェイアース(京城からノルマンディーまでの道のりを描いた大きな地球儀)の点灯式が行なわれた。
ノルマンディー上陸作戦が撮影された場所をさがすためのロケハンの移動距離は地球1周分にもなったそうだ。それだけカン・ジェギュ監督がこの作品にこだわりを持っていたという証だろう。辰雄とジュンシクが移動した距離はタイトルにもあるように京城からノルマンディーまで12,000キロ。ただの戦争映画ではなく、人間ドラマであり、韓国、中国、日本の3つの国が力を合わて作り上げた作品「マイウェイ」。世界にその力を発信できるようにという思いを込めて、マイウェイアースを点灯させるため、カン・ジェギュ監督、オダギリジョー、チャン・ドンゴン、ファン・ビンビンが手をかざす。そして、マイウェイアースが光り輝いた。そして、その後、4人は朝から精力的にプロモーション活動をされていたにも関わらず、笑顔でフォトセッションに応じていた。
文:S.T