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2012年11月7日 12:27

『未熟な犯罪者』合同インタビュー!!

未熟すぎる母親と大人になれない少年という親子の関係を繊細に描く『未熟な犯罪者』。東京国際映画祭コンペティション部門に招待された本作品に主演する、イ・ジョンヒョンとソ・ヨンジュ、カン・イグァン監督(脚本/エクゼクティブ・プロデューサー)が来日し、合同インタビューに応じてくれた。

Q:本作品が、海外の映画祭で上映されるという気持ちはいかがですか?

ソ・ヨンジュ:僕にとっては初めてのことなので、とても緊張しますね。少しは慣れてきたとはいえ、未だにちょっと胸の震えが残っています。

イ・ジョンヒョン:東京国際映画祭はアジアで一番大きな映画祭ですから、私たちの作品が選ばれて、とても光栄です。この映画祭に出品されることの知らせを聞いた時は、あまりに嬉しくて飛んで叫んで喜びました。たくさんの作品の中から(本作品を)選んでいただいて感謝しています。大好きな日本にまた来ることができて本当にありがたいです。

カン監督映画を作るとか観せるというのは、同じ考えを持つ友人に会うようなものだと思います。日本の観客の方に一緒に観ていただいて、色々な話ができるということは本当に嬉しいことです。

Q:ソ・ヨンジュさんは、劇中でラブシーンがありましたが、難しくなかったですか?

ソ・ヨンジュ:とても難しかったです。あのシーンはとても長く時間をかけて撮ったんです。撮影の序盤の時期に撮ったのですが、一日がかりで撮影して、自分にとっては難しくて大変でした。でも、またやれといわれたら出来ると思います(笑)。

Q:ご自身の好きなシーンや思い入れのあるシーン、ぜひ観てほしいシーンがあったら教えて下さい。

イ・ジョンヒョン:漢江(川沿い)を歩きながら、私が演じるヒョスンが今まで生きてきた人生を息子に話すシーンがあります。とっても悲しいシーンですが、観客の皆さんにはぜひご覧いただきたいと思います。

カン監督:漢江を歩くシーンは、私も好きです。他には、母と息子が一緒に安い旅館に行くというところで、初めて二人が向き合って息子が母親にもたれかかるというシーンがあるんです。最初は母に抱かれて良い想いを持っていたのですが、また複雑な違う考えも持つようになるという内容も気に入っています。

ソ・ヨンジュ:僕は、ジグが少年院にいる時に母が会いにきてくれて、最初に話しかけてくれるシーンがとても印象に残っています。

 

Q:主演のお二人は本来のご自分とは境遇も性格も違うキャラクターでしたが、役作りはどのようになさいましたか?

イ・ジョンヒョン:私が演じたヒョスンというキャラクターは、彼女自身も犯罪少年(少女も含む)だったのです。人生の果てを見たような、本当に困難な人生を生きてきたのですが、13年ぶりに我が子と出会って、新しい人生をまたスタートさせるという背景があったので、希望を持って生きるところを演じようと努力をしました。劇中では、色々お願いするシーンが多かったのですが、困難だからと泣き言を言ってお願いするのではなく、笑顔でした方がいいのではないか、ヒョスンだったらきっとそうするだろうと思って演じました。13年ぶりに息子に会うということは、彼女にとっては大きな心構えが必要だったんだと思います。だからこそ笑顔でいた方がいいのではないかと考えました。そして笑顔になることで、現実から脱皮できるのではないかという思いが彼女にはあったと思います。撮影中は監督とたくさん対話し、監督が私の自然な演技を引き出してくれました。以前に『사과(サグァ)』という素敵な作品を撮られた監督さんですので、私も役になりきることができました。

ソ・ヨンジュ:今回ジグを演じる上で、実際に軽犯罪を犯した少年たちがどんな風に遊んでいるのか、どんな行動をしているのか観察するようにしました。少年院にも実際に行ってみて、少年たちと少し話をすることができました。そういう経験が役作りに活かされたと思います。

Q:このお二人をキャスティングした理由は?

カン監督:まず、母親ヒョスンを決めるにあたって2つのポイントがありました。1つめは見た目がいかにも子供を持っていないような感じに見える人。そしてそうでありながら実のところは未婚の母という印象を出すことができ、年齢的には30代の半ばくらいと考えていました。もう1つは、この作品はドラマチックな内容なので、内面の演技、感情の深みが出せるような女優さんを探していました。1996年、当時15歳だったイ・ジョンヒョンさんが出演していた『つぼみ』という映画を観て、立派な女優さんだと思っていました。その後歌手の活動を主にされていたので、なかなか俳優としてお見かけすることはなかったのですが、ちょうど今回のキャスティングを考えているときに『波乱万丈』という短編映画を観ました。彼女は今でも演技に対する情熱を持っているし、この役にピッタリだろうと思ってオフォーしました。彼女もシナリオを気に入ってくれて出演を快諾してくれました。ヒョスンの役は難しかったと思います。肯定的なポジティブな前向きのエネルギーが必要な役でしたが、彼女は本能的にそれを持っていたと思います。

そして、ジグという役は中学2年生くらいで、完全な子供から青少年に移り変わる中間くらいの年齢。その年代の俳優を探していたのですが、韓国では小学生や高校生の子役はたくさんいるのですが、中学生の子役が少なくて、実際に中学校を訪ねてみたり、公開オーディションをしてみました。ようやく会えたのがソ・ヨンジュ君です。彼の眼差しには深いものがありました。話をしてみると本当に子供らしいところがあって、純粋さを感じられたので決めました。

 

Q:イ・ジョンヒョンさんが、この作品を選んだ理由は何ですか?

イ・ジョンヒョン:出演のオファーをいただいた時は大きな衝撃を受けました。私は韓国では若く見える方なので、母親役と聞いて「どうして私をキャスティングしようと思うのですか?」と逆に問い返したところ、監督が未婚の母というのは見た目には全くお母さんらしく見えない人がほとんどで、子供とも友達のような関係であって、今回の映画でもそれを求めているとおっしゃったんです。シナリオを見たら本当に良くて、リアリティがありつつナチュラルで穏やかな気持ちで観る事ができるのですが、途中に爆発的なシーンがあるというのもいいなと思いました。監督が私たちをしっかりと引っ張ってくれたので、上手に演じられていい作品ができ感謝しています。

Q:映画出演まで間が空いたのはなぜ?

イ・ジョンヒョン:なかなか、納得のいくシナリオに出会えなかったので、映画の出演はしてなかったのですが、ドラマは時々出演していました。これからも、演技と歌手の活動を平行して頑張っていきたいと思っています。実は、次も映画の作品に出演する予定です。

Q:この作品を通じて何を伝えたいですか?

カン監督:今回の映画は、犯罪を犯した少年あるいは未婚の母を描いた作品ではありますが、あくまでも“母親と子供の物語”として観てくれたら嬉しいです。映画の中で二人が会うことによって展開していく物語を追っていき、私たちの目の前にこのような二人が現れた場合、果たして社会はどのように二人を受け入れられるのかという事を考える時間になってほしいです。

Q:実際に撮影してみて、印象や演技が違っていたところはありましたか?

カン監督:俳優の皆さんと仕事をするということは、1つの作品を媒介としてお互いを知る過程だと思います。イ・ジョンヒョンさんについては、映画やテレビ、音楽を通して知ってはいましたが、個人的には知らなかったわけです。今回仕事で実際に会って、色々な話を交わしたので、次に何かの作品で会ったときには更に深みのある話もできるのではないかと思います。今回の作業は信頼の土台を築くことができたのではないでしょうか。ソ・ヨンジュ君の場合は、以前にも映画やドラマに出演していますが、今回のようにメインとして出演するのは初めてだと思います。最初は私ともなかなか息があわなかったんですよ。いろんな話をしながら映画を撮りはじめ、中盤から後半にかけては本当に演技が上手いなぁと思えるようになりました。短期間でどんどん良くなっていったんです。彼とも信頼関係が築けて、本当に気分のいい作業になりました。

Q:無茶をして失敗をした経験を乗り越えていくにはどうすればいいか、ご自身の考えを教えて下さい。

イ・ジョンヒョン:ヒョスンやジグのような人物は、世の中には多いと思います。そういう人たちが生じないためには、家庭も大事ですが、それ以前に社会の関心や制度が必要ではないでしょうか。生活が困難な人のための福祉の面での優遇も発展していくべきだと思います。さらに教育の機会もたくさん与えてあげられれば、ヒョスンやジグのような境遇の人たちは減ってくると思います。幼くして未婚の母になるということは性教育もしっかり受けていないということもありますよね。いい環境の中で、そういう教育もキチンと受けられるようにするべきですね。

Q:ジグが本来は悪い子ではないのに、悪いことに関わってしまうことを、ご自身の中でどうやって理解して演じましたか?

ソ・ヨンジュ:ジグというのは、少年でありながら犯罪を犯してしまうのですが、元々は悪い子ではないのです。たまたま仲間に恵まれなくて仕方なく悪いことをしてしまうのですが、それでも彼はそれを克服して勝つべきだったと思うのですが、勝つことができず犯罪少年になってしまいました。その反面、社会の中でたくさんの人がいるにも関わらず誰一人として彼を守ってあげなかった。そしてまた仕方なく彼は犯罪を犯してしまったんだと思って演じました。

Q:ソ・ヨンジュさんは、2007年の9歳の時にデビューされてまだ14歳とお若いですが、俳優になろうと思ったきっかけは?また、これからどんな俳優になっていきたいですか?

ソ・ヨンジュ:街中でスカウトされて俳優になりました。ですから、何も知らないまま演技を始めたのです。でも、やってみたら演技がとっても面白くて、僕も演技が上手くできるかな?頑張ってみようかなと思うようになりました。今後は、僕が笑ったら観てくれる人も笑って、僕が泣いたら観てくれる人も泣いてくれるような、お互い共感ができるような俳優になりたいです。

Q:監督にとって、いい映画とはどんな映画ですか?

カン監督:2つあげられると思います。1つは、同じ時代を生きる人が共感できる映画。そういう意味では商業的な映画ととらえられがちですが、そうではなくて、大衆性があるということはやはり皆さんが共感できるということなので、いい映画だと言えると思います。あと、映画作品としてみた場合に一歩一歩着実に、皆が思っている想いを表現する映画がいい映画だと思います。人々の心の中をキチンと反映させ、一歩ずつ歩んでいき足跡を残せる作品ですね。

Q:歌手としても活躍されるイ・ジョンヒョンさんから見て、現在のK-POPはどう思いますか?また、ご自身の歌手としての方向性はいかがですか?

イ・ジョンヒョン:後輩たちが、ヨーロッパやアメリカなどでヒットしているということに対して拍手を送りたいと思います。ただ、音楽性、歌唱力、ステージ上のパフォーマンスは高まっているのですが、本当に流行が早く変わってしまうんですね。長く人々の心に残るようなヒット曲がなかなか生まれないというのが、ちょっと残念ですね。それから、俳優というのは、監督やシナリオに対して信頼する気持ちがあれば、どんな役でも身を投じてその役になりきるという姿勢が大事だと思います。今回未婚の母という役でしたが、女優さんのなかでは避ける方もいるかもしれませんが、私は信頼があったので引き受けました。歌手の活動では、私はもともと非常に強い個性をみせる歌手でしたので、俳優の活動とは違って、自分のやりたいこと、やりたいジャンルをどんどんやって好きな活動をしていきたいなと思っています。

一つ一つの質問に真摯に答えてくれたイ・ジョンヒョン、ソ・ヨンジュ、そしてカン・イグァン監督。その言葉からは作品に対する自信と愛情が感じられた。『未熟な犯罪者』は、「第25回東京国際映画祭」で審査委員特別賞を受賞し、ソ・ヨンジュは最優秀男優賞を受賞、2冠の栄光に輝いた。高い演技力と独自のリアリティを感じさせる作品からのメッセージをぜひ受け取ってほしい。

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