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2024年3月1日 18:00

松藤史恩&藤田直哉監督インタビュー 大衆演劇の魅力を描き出す、映画『瞼の転校生』 「大切なものがぎゅっと詰まった」作品に

大衆演劇の世界で生き、公演に合わせて1カ月ごとに転校を繰り返す中学生が、川口市を舞台に、限られた時間の中で出会う人々と心を通わせながら成長していく姿を描いた映画『瞼の転校生』が、3月2日から全国順次公開される。大衆演劇一座に生まれた裕貴を演じる松藤史恩と本作で長編映画デビューを果たす藤田直哉監督に、大衆演劇の魅力や撮影の裏話などを聞いた。

――藤田監督が大衆演劇を題材にした映画を撮ろうと考えた理由やきっかけを教えてください。

藤田:これまで僕は、10代の子どもたちをメインに扱った作品に携わったことがなかったんですね。それで、そういう作品を作ってみたいというのがまずありました。そうして考えていた時に、たまたま大衆演劇に出会ったんです。スーパー銭湯に行くのが好きなので、その存在は知っていたんですが、全く観る機会がなくて。ですが、僕の妻の親戚が大衆演劇の役者さんをやっていたということを聞き、興味を持つようになって観に行ってみようと。それで観てみたら、小さな子どもや、若い役者さんが舞台で活躍していたんですよ。その光景に衝撃を受けて、これを題材に描いてみたいと思って企画しました。

――松藤さんは大衆演劇をご存知でしたか?

松藤:この作品に出演するまでは全然知りませんでした。ただ、僕は小学1年生の頃に歌舞伎を体験して、それから歌舞伎にハマって色々な作品を観ていたので、大衆演劇も歌舞伎に近いのかなという感覚がありました。

――どんなところに大衆演劇の魅力を感じていますか?

松藤:歌舞伎はきっちりしている文化という印象がありますが、大衆演劇はもっと気軽に観られます。なので、居心地が良くて、誰でも気楽に観られる。役者さんとの距離がすごく近いというのも楽しいです。僕はこの映画に出演してからハマってしまって、個人的にも観に行っています。

――監督はいかがですか?

藤田:松藤くんも言っていましたが、カジュアルでお客さんとの距離が近いところが面白いところだと思います。扱っている題材は昔の時代の物語が多いので、僕自身も最初はハードルが高いんじゃないかと思っていたんですが、実際に観てみるとすごく分かりやすい。お客さんを楽しませようという目線で演じてくれるので、例えばお客さんをいじったり、一緒になって掛け合いをしたり、お客さんファーストな空間を作っているということに面白さを感じました。

――今作では、松藤さんは大衆演劇一座に生まれ、大衆演劇の役者として活動している裕貴を演じます。そうした役柄を演じるにあたって、かなり準備をされたんですか?

藤田:かなりではなかったよね(笑)。ただ、彼は、歌舞伎や日本舞踊をやっていたからか、僕が思っていたよりも何倍も飲み込みが早くて、準備の時間はあまりかからなかった印象です。

――監督が松藤さんを主役に選んだのは、松藤さんがそうした素地を持っていたからというのもあるんですか?

藤田:いや、実はそれは関係ないんですよ。彼に決めた後に、そういえばそうだったなと思い返したくらいで。

――そうすると、松藤さんに主演を演じてもらいたいと思ったのはどんな理由からだったんですか?

藤田:オーディション会場にいる時から、物おじしない雰囲気を持っていて、自分の言葉で話している印象があって、それが目を引きました。普通、これくらいの年代の子たちって、大人を前にすると虚勢を張ってしまったり、いいところを見せようとしがちなんですが、彼には全くそういうところがない。いい意味で生意気で、カッコつけない感じがあって、この人と一緒にやりたいと思ったんです。

――松藤さんは、オーディションの時には、大衆演劇をテーマにした作品だと分かって受けたのですよね?

藤田:そうですね。ただ、オーディションの芝居は普通の会話だったから、大衆演劇の芝居をその場で見せたわけではないんですよ。

松藤:そういうこともあって、オーディションには大衆演劇のことはそれほど調べて臨んだということではないです。

――では、撮影に入る前に実際に大衆演劇の練習をしてみて、いかがでしたか?

松藤:女形の着付けをして写真撮影をしたのが最初でした。白塗りをしたんですが、白塗りをすると、スイッチが切り替わって、根っこから自分が変わるような感覚があるんです。それは小さい頃からそうなんですが、自分でも性格が変わるのが分かるんですよね。

藤田:舞踊の練習も村田寛奈さんと一緒にやっていたよね。村田さんはダンスが上手いので、日本舞踊もスムーズに入れたようで、僕はそれを見守るだけだったので楽をさせてもらいました(笑)。

――今回、大衆演劇の「劇団美松」も参加しています。「劇団美松」にオファーしたのはどういった思いからだったのですか?

藤田:この企画を決めて脚本を書く前に、「劇団美松」の座長の松川祐司さんと市川華丸くんに取材する機会をいただいて、華丸くんの実体験も色々と聞かせていただきました。その時のお話が、この映画に大きく影響したと思います。そうした経緯があったのでぜひご出演していただきたいとお願いしました。

――なるほど。この作品では大衆演劇をテーマに扱っていながらも、一方で主人公の成長や友情などを描いた青春ストーリーでもあります。先ほど、最初は10代の子を描きたいという思いからスタートしたとおっしゃっていましたが、青春ストーリーを描くということに関しては、監督はどのような思いがありますか?

藤田:今、振り返ると自分の学生時代や若い頃は、学校の規律やルールに対して常に不満を抱えていたところがあったと思います。今回の映画にも学校は出てきますが、学校外で出会った友達だったり、学校外で活動する裕貴だったりに焦点を当てていて、そういう人たちを肯定したい気持ちがもしかしたらあったのかもしれないと今は思います。

――松藤さんは裕貴を演じるにあたっては、どんなことを意識されたんですか?

松藤:裕貴くんは自分の考えは絶対突き通す、いい意味で頑固な人だなと思います。大衆演劇の道に進むという思いは絶対に変えない。ただ、そんな子でも、進路が目の前に迫ってくると悩んでしまうこともあって。そんな時にも友達がいることで色々なことを考えられると思うので、やっぱり友達という存在は大きいなと感じながら演じました。

――松藤さんも子役として活動されてきたので共感できるところもあったのではないですか?

松藤:それはありました。僕は、昔、友達の仕草ばっかり気にしてしまう時期があって。怒っている時の表情を演技に使おうと思ってしまって、ひたすら観察してしまっていたんです。でも、友達は友達として普通に接したいなと。やっていることは違うけれども、歩んでいる道は裕貴と同じなのかなと思うシーンもあって、共感できるところもたくさんありました。

――今、ちょうど中学3年生で、裕貴と同じ年齢になりますが、悩みも理解できるところは多かったですか?

松藤:はい。進路選択で「大衆演劇をやるんだ」と思っていても悩む気持ちが裕貴の中にあると思いますが、僕もこのまま高校に進むのか、それとも芸能の活動を重視した学校に進むのか悩んだ時期がありました。演技もしたいけれども、これまで仲良くしていた友達たちと一緒に高校に進んだら楽しいだろうなという気持ちもあって…。僕は芸能の方に行くことを決めましたが、そうやって葛藤するところは裕貴と同じかなと思います。

――監督から松藤さんには、お芝居や役作りについてどのような演出がありましたか?

藤田:とにかくオーディション会場に入ってきた時から、裕貴という役柄にハマっていると感じたので、基本的には本人が考えてきたペースで演じてもらって、違う方向性に行きそうだなと思った時だけ修正するという感じでした。こういう人間だからこう演じてということはほとんどなかったと思います。彼が考えてきた通りにやってもらったことによって考えてもいなかった化学反応が起こることがあるんですよ。全く予期しなかった動きや言い回しが出てきて、それを採用させてもらうことも多かったですね。

――番印象に残っているシーンと苦労したシーンを教えてください!

松藤:苦労したシーンは、女形を演じているシーンです。高い声を出すのがどうしても難しくて、いっぱい練習したのを覚えています。印象に残っているのは、河川敷を歩いているシーンです。歩いているのに意味があるのかなと思って(笑)、印象に残っていますね。

藤田:女形のシーンも含めて、篠原演芸場で撮影させてもらったシーンは全て苦労しましたね。あのシーンは、基本的に松藤くんが女形をしている時間が長くて、結構な時間、衣装を着て、カツラをかぶってやってもらってたんですよ。多分、本人も慣れないことをしている疲れも感じていただろうと思いますが、でも撮り切らないといけない。そうした状況の中で話し合いながら、疲労を映像に見せないように撮影したというのは苦労したシーンかもしれませんね。印象に残っているシーンは、僕も河川敷と言おうと思いましたが、他のシーンを挙げるならば、川沿いの学校の前を裕貴と建が二人で歩くシーンです。後半の撮影だったので、松藤くんと(建役の齋藤)潤くんも仲良くなっていて、すごくいい関係が作られているのがあのシーンから伝わってきたので、いい絵が撮れたと感じたシーンでした。

――松藤さんは、今お話にあった齋藤さん、それから茉那役の葉山さらさんとのお芝居はいかがでしたか?

松藤: 2人ともすごく上手くて、自由な演技をしていて。僕もどちらかといえば自由に演技するのが好きなので、合うところがあって演技しやすかったです。

――監督から見た3人のお芝居はいかがでしたか?

藤田: 3人とも相手に合わせるというよりは、思い思いに演技してくれたので、それが良かったです。今回のキャラクターとしてもその演技が合っていると思いましたし、お互いに自分をぶつけることで相手がどうリアクションするかということを自然とやっていたので、レベルの高い演技をしているなと感じていました。能動的に質問をしてきてくれたり、自分はこうしたいと提案してくれたりしましたし、3人とも瞬発力があると感じました。

――ありがとうございました! 最後に公開を楽しみにされている読者にメッセージをお願いします。

藤田:この作品は大衆演劇を扱いながらも、10代の子どもたちが成長していく姿を描いた作品でもあります。子どもの時に感じていた不満や違和感を映画に反映させて、皆さんがどう感じてもらえるかを多角的に考えました。この作品を通して、大衆演劇にも興味を持っていただきたいですし、映画を観て何か新しい発見があったり、自分がどうしていきたいかを考えるきっかけになったら嬉しいです。

松藤:大衆演劇の一座の元に生まれた裕貴の1か月を描いた物語です。1カ月はすごく短い期間ですが、その中に色々な大切なものがぎゅっと詰まっています。それから、この作品を観て大衆演劇の良さを知って、興味を持ってもらえたらいいなと思います。

映画『瞼の転校生』は3月2日から全国順次公開

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取材 文・写真:嶋田真己 
場面写真:オフィシャル提供 © 2023 埼玉県/SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ 川口市

 

 

 

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