西田大輔がプロデュースするエンターテインメントレストラン「DisGOONieS」にて、11月9日(木)から11月19日(日)まで鈴木勝吾・安西慎太郎による作・演出の饗宴『世濁声』が開催されている。
――どういった経緯でこの企画がスタートしたんでしょうか。
安西:僕が2人芝居をやりたいというのがありました。好きな人と好きなものを作るのが当たり前じゃない世界で実現させたいという強い気持ちがあり、パッと出てきたのが鈴木勝吾さんだったんです。彼の思想、役者・人間として魅力をすごく感じて敬愛していたので、今回の企画は彼としかできないと思ってオファーしました。
鈴木:初めて会ったのは西田さん演出の『PHANTOM WORDS』という作品。対となる役をやらせていただき、がっつり組んでお芝居をしました。前々から松田凌や宮崎秋人に「慎太郎ってすごい奴がいる」という話を聞いていたし、お芝居も見ていたけど、一緒にやってすごさを目の当たりにしたというか。自分の中で渦巻いていることをあまり言葉にしないけど、お芝居の中で全て凝縮してぶつけてくる。そんな姿を尊敬していたので、出会って何度かの共演を経て2人芝居をしたいという声をいただいたのが、すごく誉れというか嬉しいことでした。
――今回は作・演出もお二人で手がけているということです。実際にやってみて、いかがでしょう。
鈴木:誰かにお願いする案もありましたが、それが自分たちのやりたいこととズレていたら違うんじゃないかということになり、色々話し合ってそれぞれが脚本を書くことにしました。お互い中々書き終わらず、ほかの仕事の兼ね合いもあって、今回は僕の書いた脚本をやることになり、演出も僕がやっています。慎太郎は僕が書いた脚本に真摯に取り組んでくれていますし、さっきも言ったように慎太郎を俳優として尊敬しているので、相談しながら作っている感じです。
――今回この会場を選んだ理由、ここに感じる魅力というのは。
鈴木:良くも悪くも紆余曲折あってここに辿り着き、ここでやると決めてから脚本を書きました。なので、この空間でどうやるか想像しながら書いています。基本的にはレストランで、その中にショーをやるための設備がある。最初はお客さんとのあまりの距離の近さにビビりました。
安西:そうなんですよね(笑)。
鈴木:慎太郎とやった『Führer』は、僕は2回目だったので慣れてはいましたが、初めてここに立ったのは北村諒など一緒にやった『エイリアンハンドシンドローム』。どういうふうに立っていたらいいかもわからないみたいな感情があって。お客さんと同じ目線で作っていくハードルの高さがありますが、ここでしかできない修行があると感じましたね。今となっては魅力がすごく目につきますが最初はドギマギしました。
安西:端的に言うと、劇場じゃないというのが魅力です。あくまで飲食店なのが逆に良いなと思っていて。勝吾も言っていたけど、本当に目と鼻の先ぐらいの距離で芝居をするので、お客さんの呼吸や視線、椅子をずらした音にも気づくんです。本当に些細なことまで聞こえる、感じられる空間。役者として鍛えられるし、ある種芝居の監獄に入れられたような気持ちになるというか。もちろん普段から生半可な気持ちではやっていませんが、強い気持ちと覚悟がないと立てない場所だと感じます。
――ここで上演すると決めてから脚本を書いたということですが、その上でこだわった点、完成した本を読んで感じたことを教えてください。
鈴木:2人芝居であることも加味していますが、ワンシチュエーションから始まり、色々な情景を重ねて最後に帰結するような物語にしようと考えました。また、カウンターなどの風情がある空間なので、それを活かして何かできないか考えましたね。
安西:そもそも「鈴木勝吾が本を書く」という段階の話になってしまいますが、照明や音、景色のイメージがかなり見えているんだなと思いました。僕が書いているときはそこまでしっかりと決まっていなかったので驚きましたね。読んでいても色々なイメージが湧いてきましたし、この空間だからできることが考えられていると思いました。
鈴木:とあるカフェやバーで出会う2人の話にしようかと考えていたけど、練っていくうちに慎太郎が演じる小木がこもっている古びた図書館に僕が現れるようなものになりました。コーヒーとかの消え物も、必然性はないけど使ったらオシャレだし面白いんじゃないかと。書き始める前に「なんでもない話でも良いよね」みたいな話をしていたんです。起承転結がしっかりしていなくても、大きなコンセプトの中で伝えたいものを汲み上げながら、ここでやる風情みたいなものを感じながら書きましたね。あと、音楽は信頼を置いているただすけさんにお願いしているんですが、普通の劇場とは照明が違う。演出はつけ終わっていますが、どう具現化するかドキドキワクワクしていますね。
――今回はただすけさんが音楽を手掛けられます。
鈴木:『憂国のモリアーティ』でご一緒し、すごく仲良くさせていただいている中で、何かできたら良いねと話していました。ここでの公演も何回も見てくれていて、今回の話をしたら「面白いね、やりたい」と言ってくれて。彼もまた人としての魅力があって、生き方が音楽に出ている。お芝居より前に出たくないとか、逆にお芝居が引いている時は音楽をこうしたいとか、自分の考えと理解もしっかり伝えるけど、作品に一番寄り添える音楽をすっと提供してくれるんです。その繊細さと大胆さに助けられていますね。
安西:なんて言ったらいいかわからないんですが、とてもエッチな人だと思っていて。
鈴木:(笑)。
安西:勝吾が言ったように作品に寄り添ってくれる人で、音楽の存在の意味をすごくわかっている。今回も勝吾と話しながら、作品にフィットしたり、逆に物語を引っ張ってくれたりするような音楽を作ってくれています。そのコントロールをすごくしてくださっている感じがとてもエロいなって。すごい方とお会いしたし、「世濁声の人だな」って思いました。
饗宴『世濁声』は、エンターテインメントレストラン「DisGOONieS」にて、11月19日(日)まで開催。
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