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2024年7月23日 18:00

鶴見辰吾インタビュー ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』「夢は強い気持ちを持っている人が叶えられるもの。ビリーのみんなはそれを持っている」

1980年代のイギリス北部の炭鉱の町を舞台に、ひとりの少年と彼を取り巻く大人たちの姿を描き、世界中を虜にした映画『リトル・ダンサー』。2005年にはミュージカル化され、世界中で大成功を収めた。日本では2017年に日本人キャストによる初演が開幕。大きな反響と再演を望む多くの声を受け、2020年に再演された。そして、4年後の今年、ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』が新たなキャストとともに帰ってくる。主人公のビリー・エリオットは、演技や歌だけでなく、バレエ、タップダンス、器械体操などさまざまな分野において高い能力が必要になる難役のため、1年以上に渡るレッスン形式のオーディションを実施。応募総数1375名の中から選ばれた個性豊かな4人が選ばれた。今回は、主人公ビリーのお父さんを益岡徹とともにWキャストで演じる鶴見辰吾に、本作の魅力や公演への意気込みなどを聞いた。

――初演を劇場でご覧になったそうですね。その時の率直なご感想を教えてください。

新鮮だなと思うシーンが多々ありました。翻訳するにあたって、おそらく九州弁に近い形で訳されていて、なるほどと。翻訳のミュージカルを日本人が演じると違和感を覚えることもありますし、我々が演じていても現実感がないなと思うこともあるのですが、この作品はそれをうまく日本人の心の中にも染み入るように落とし込んでいるという印象があって、面白い演出だと思いました。

―セリフが自然だったことが、より物語に引き込む力になっていた、と。

そうですね。演出のスティーヴン・ダルドリーさんが九州弁のセリフをどう演出していくのか。面白いことをやる作品だなと、物語の冒頭を観て期待が高まりました。それから、この話の中には階級制やコミュニティ、ジェンダー、夢を追いかける少年と家族の話と、いろいろな要素が凝縮して入っていて、本当に良質なエンターテインメントだなとも感じました。同業者ということもあって、僕は劇場で観劇していても、なかなか純粋にお客さんとして楽しめないところがあるのですが、この作品は「これはいい芝居だ」と素直に感じて、家に帰ってすぐに奥さんに「絶対に観に行った方が良い」と伝えてチケットを購入したのを覚えています。奥さんも芝居が好きでこの作品を楽しんでくれたので、今回、僕が出演することも喜んでくれています。

―今回、演じるお父さんという役柄については、どのように役作りをしていこうと考えていますか?

出演が決まってすぐに、いつも通っているトレーナーに「来年は炭鉱夫の役をやるから、そう見えるように体づくりをしたい」と伝えて、筋トレをしてきました。あまりほっそりしていると説得力がないので。それから、今回は九州弁のセリフなので、方言が課題でもあります。これまでドラマや映画でも、何度か方言はあったのですが、ハードルが上がる分、やりがいが増えて面白いんです。(方言で話すことで)別の人物になれる気がするので、楽しんで演じたいと思っています。

―益岡さんとのダブルキャストになりますが、益岡さんの印象は?

30年くらい前に大河ドラマで1年間、ご一緒したことがありますので、益岡さんとのダブルキャストで安心していますし、益岡さんでよかったなと思っています。先輩“お父さん”としていろいろと教えていただきたいと思いますし、お互いにアイデアを出し合いながら、さらに良い表現ができたらなと考えています。

―カンパニーの雰囲気はいかがですか?

いい雰囲気だと思います。初めて会う方もいますが、皆さん実力派揃いですし、作品自体も素晴らしいので、どうやってブラッシュアップしていこうかと楽しみながら、エネルギーに溢れた稽古をしています。

―特にビリーの4人は、過酷なオーディションを勝ち抜いてきただけにより熱意があるのでは?

そうですね。ただ、オーディションに受かってからの稽古、そして千穐楽まで演じきるということの方がもっともっと大変で。これから本番でお客さまの前で演じていかなくてはいけないので、そうした経験はきっと彼らの素晴らしい財産になると思います。

―今回、鶴見さんはビリーのお父さん役ですが、振り返ってみると、鶴見さんご自身も今のビリーたちくらいの年齢でデビューされていますよね。

僕も同じことを考えたんです。僕がドラマでデビューしたのが1977年で、中学1年生でしたから、まさにビリーと同じくらいの年齢です。そのときはただセリフが言えるというだけで使っていただいていましたが、今のビリーたちは歌えて踊れて、バク転までしますから。この40年の間に日本の芸能界のレベルがこれほど上がったんだなと感じました。

―鶴見さんがデビューされたときは、今のビリーたちほどの経験はなかった?

なかったです。周りにもそんな人いませんでした。真田広之くんぐらいかな、バク転ができたのは(笑)。なので、本当にすごいと思います。初演、再演でビリーを演じた人たちも、今はそれぞれの道でさらに突き進んで頑張っているそうで、今回の4人の将来も楽しみですよね。(取材当時は)稽古ではこれから関係性を構築していこうというところですが、お互いに尊敬し合って、学んでいけたらと思っています。

―鶴見さんが中1でデビューされた頃というのは、どんな夢を描いていらっしゃったんですか?

その頃は夢というよりも、ただ舞い上がっていましたね。テレビに出ている人たちと一緒にドラマに出て、テレビ局の中に入って。浮かれていました。とはいえ、実際には学校との両立がすごく大変でした。学校にも行かなければいけないし、大勢の人に楽しんでもらうためにはやらなければいけないこともたくさんありました。両立することに精一杯で、当時は全然努力は足りていなかったと思います。今、ビリーの4人は学校に行きながら稽古に来て、本当に大変だと思います。でも、彼らは夢に向かってオーディションを突破して、稽古に参加し、本番に向けて着々と歩みを進めている。夢を実現するというのは本当に大変なことだと思いますが、彼らは強い想いを持って向かっていっています。夢というものは、それを実現したいと強い気持ちを持っている人が叶えられるものなんだと思いますし、ビリーのみんなはそれを持っています。

―夢を叶えるためには「強い想い」が必要ということですね。

そう思います。でも、その夢は途中で変わってもいいんです。例えば、俳優になりたかったが、それを目指している過程で監督になりたいと思うようになるというように、夢を目指している途中でまた違う夢を発見することもできると思います。でもそれは、夢や目標に向かう努力をしっかりしたからこそ見つかる夢。諦めないでやり続けるということが大事だと思いますし、それもまた1つの才能だと僕は思います。そして、夢を追いかけ続けるためには、周りのサポートも必要です。今回のビリーたちも、親御さんのサポートがあったり、学校の理解があったり、周りのサポートがあるからこそできています。我々は1人では生きていけないので、家族であったり友達を大切にするということから、夢が見つかったり、夢が叶ったりするのではないかなと思います。

――なるほど。ただ、「続ける」ということが1番難しいような気もします。

そうなんです。でも、続けていればなんとかなるんですよね。仮に、90歳までバレエダンサーを目指していてなれなかったとしても、「90歳までバレエダンサーを目指した」という勲章がつくんですよね。それもまた違う形での夢の実現だと思うので、好きなことは続けることだと思います。例えば、途中で少し離れて、他の仕事に没頭し、「そうだ、実は僕はこれが好きだったんだ」と思い出して、また追いかけてもいいと思います。夢は幾つになっても追い続けていいんです。

―ありがとうございました! 最後に、改めて公演への意気込みや読者へのメッセージをお願いします。

この作品は、家族の話でもあり、少年の話でもあり、社会の話でもあるので、老若男女どなたが観に来ても楽しめるミュージカルになっています。夏に旅行に行くのもいいですが、今年の夏はご家族で『ビリー・エリオット』の世界に旅をしに来てくださったら嬉しいです。絶対にガッカリさせませんので、ぜひビリーの住んでいるこの町に遊びに来ていただけたらと思います。

公演名:Daiwa House presents ミュージカル『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』

出演:
ビリー・エリオット(クワトロキャスト) 浅田良舞 石黒瑛土 井上宇一郎 春山嘉夢一
お父さん(ダブルキャスト) 益岡徹 鶴見辰吾
ウィルキンソン先生(ダブルキャスト) 安蘭けい 濱田めぐみ
おばあちゃん(ダブルキャスト) 根岸季衣 阿知波悟美
トニー(兄)(ダブルキャスト) 西川大貴 吉田広大
ジョージ 芋洗坂係長
オールダー・ビリー(トリプルキャスト) 永野亮比己 厚地康雄 山科諒馬

東京公演
オープニング公演 2024 年 7 月 27 日(土)~8 月 1 日(木)
本公演 2024 年 8 月 2 日(金)~10 月 26 日(土)
会場 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
大阪公演
2024 年 11 月 9 日(土)~24 日(日)
会場:SkyシアターMBS

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