取材:記事・写真/RanRanEntertainment
ミュージカル『魔女の宅急便』が3年ぶりに新キャストを迎えて3月25日から上演される。『魔女の宅急便』は、児童文学作家・角野栄子氏によって執筆された児童書。1989年にスタジオジブリが宮崎駿監督でアニメーション映画化し、大ヒットを記録した。ミュージカル版は、2017年に初上演。今回は、3度目の上演で、主人公・キキ役を井上音生、トンボ役を那須雄登(美 少年/ジャニーズJr.)が演じる。井上にキキ役に決まった時の思いや意気込み、女優を目指したきっかけなどを聞いた。
――キキ役に決まった時のお気持ちを教えてください。
小さい頃からスタジオジブリの『魔女の宅急便』を観ていて、私も魔女になりたいとか、魔法を使ってみたいと思っていたので、夢が叶ったと思いました。私も「アンちゃん」という名前の黒猫を飼っているので、「私がキキだったら、アンちゃんはジジだね」と言って、家で喜んでました。
――出演が決まったことは、どなたかに報告しましたか?
はい、両親に報告しました! 福本莉子ちゃんが主演した作品(2018年に上演された本作)を観に行った時に、すごく感動したと両親には伝えていたので、出演が決まったことをすごく喜んでくれました。両親は、普段から私の活動をすごく応援してくれています。「東宝シンデレラ」オーディションを受けたきっかけも、両親がチラシを見つけてきてくれて、私に勧めてくれたことだったんです。それが今につながっているので、本当に感謝しています。両親がいたからこそ、こういうお仕事ができているんだと思っています。両親に私のキキの姿を見せるのが楽しみです。
――福本さんが主演されたミュージカルも観劇したのですね。
はい! ジブリの映画とはまた違っていましたが、莉子ちゃんらしいキキを楽しそうに演じていて、ミュージカル版のキキも素敵だなって思いました。莉子ちゃんを観て、私もキキを演じてみたいと思うようになりました。
――先ほど、「魔法を使ってみたい」と言っていましたが、そう思ったのはどうしてですか?
魔女といったらホウキで空を飛ぶイメージがあったので、私も空を飛んでみたいと思ったんです(笑)。ミュージカルでも、キキは空を飛ぶシーンがあるので、今からワクワクしています。上から客席を見る機会はそうそうないので、楽しみです!
――今日(取材時)は、キキの衣装を着ていますが、実際にキキになってみていかがでしたか?
黒いワンピースも赤い大きなリボンも、小さい頃から見ていたキキそのものなので、私がキキになれたんだと現実味が出てきました。
――今回の脚本を読んで、どんな感想を持ちましたか?
原作も読ませていただいたんですが、小さい頃に見たジブリ映画と、16歳になってから原作を読んだのでは、キキの印象が違っていました。小さい頃は「魔法が使えて可愛い魔女」という印象を持っていたんですが、台本や原作を読むと、「13歳の普通の女の子」が描かれているんだなと気づきました。キキは同い年の女の子に嫉妬もするし、意地悪もしたくなるし、ニキビが気になっていたりして…本当に私と同じだなと思って共感できました。
――キキと似ていると思うところは?
キキは空を飛ぶ魔法が得意で、お母さんから習った薬の調合は得意じゃないんです。私も、不器用で大雑把なので、もし、私が魔法を使えたら、キキと同じように、空を飛ぶのは得意だけれども、薬の調合は苦手だと思います(笑)。
――では、今現在は、どのようにキキを演じたいと思っていますか?
ただ元気な女の子というだけじゃなく、落ち込んだり、悩んだりしている姿もしっかりと演じて、見ている人に応援してもらえるようなキキを演じたいです。私は、2020年の4月に愛媛から上京してきたのですが、その時に感じた不安や戸惑いは、キキがコリコの町で暮らし始めたときと同じだと思うので、そうやって自分との共通点を見つけていって自分らしいキキを作っていきたいなって思います。
――演出を担当される岸本功喜さんとは何かお話されましたか?
先日お会いした際に、歌を披露させていただきました。その時は、『リトルマーメイド』の「パート・オブ・ユア・ワールド」を歌ったのですが、岸本さんから「ミュージカルの歌はセリフなので、感情をこめて、セリフとして歌を歌ってほしい」と教えていただいたので、ボイストレーニングでも心がけたいなと思いました。
――トンボ役の那須さんとはお会いしましたか?
はい、ご挨拶をさせていただきました。3歳も年が離れていて、だいぶお兄さんという印象があるので、全力で頼ろうと思っています(笑)。
――2020年に上京されたということですが、井上さんが上京をしようと思ったのは、どういったきっかけがあったんですか?
女優のお仕事をするために愛媛から東京に通うとなると、毎回、飛行機に乗らないといけないので大変でしたし、時間も無駄にしたくないと思って、東京に来ることを決めました。特に、舞台のお仕事は、長い期間、携わることになりますが、もっとたくさんの舞台やミュージカルに出たいという思いがあったので、それならば東京に来た方がいいと思ったんです。
――お芝居をすることは、このお仕事を始める前から好きだったんですか?
実は、「東宝シンデレラ」オーディションの時には、女優よりもモデルをやりたいと思っていました。でも、オーディションの中で、演技の先生に本格的に演技を教わって、審査員の方に演技を披露するという機会をいただいて、緊張したけどすごくやり切った感があったんです。その時に私は女優になりたいのかもしれないと、初めて思いました。
――ミュージカルには興味がありましたか?
はい! 小さい頃から劇団四季のミュージカルをよく観に行っていました。「レ・ミゼラブル」や「オペラ座の怪人」といった作品もたくさん観て、触れてきたので、私も観ている側じゃなくて、演じる側にいきたいなとは思っていました。それから、朝夏まなとさんが主演された『ローマの休日』を観た時に、朝夏さんがアン王女としてドレスで歌っている姿がキラキラしていてとてもきれいで、私も朝夏さんのようになりたいと強く思うようになりました。
――舞台作品としては、舞台『魍魎の匣』にもご出演されていましたが、そこで舞台に出ることの面白さや難しさは感じましたか?
舞台は稽古期間があるので、稽古を重ねるたびに自分がレベルアップしていることを感じることができて面白かったです。それから、共演者の方とコミュニケーションをたくさん取れたのも印象に残っています。稽古を終えて、自宅に戻ってからも、ここを直そうとか、役のことについて考えられるのも面白いなと思いました。もちろん、本番の舞台に上がった時も、お客さんに力をもらえたように感じて、舞台の魅力を改めて感じられました。ステージに上がる前はすごく緊張していたんですが、実際にステージに出てお客さんが見えたら、緊張もなくなって頑張ろうって思えました。
――その時に学んだことや得たことで、今回に活かそうと思っていることは?
稽古の時にわからないことはわからないって言うことです。稽古の時に自分で背負いすぎて、本番になってから焦っても遅いと思うので、わからないところは岸本さんにちゃんと相談しに行こうと思っています。
――女優としての目標や憧れは?
吉田羊さんが主演されていたドラマを観てから、吉田さんに憧れています。表向きは強い女性なのに、本当は心に傷を抱えていたり、悩んでいることがあったりという役を演じる時に、自分の弱さをさらけ出すお芝居が印象的ですごいなと思いました。演技をされていない時の、大人なのに可愛くて魅力的な姿も素敵だなと思います。
――今後、どんなお仕事をしていきたいですか?
舞台と映画とドラマを経験させていただきましたが、まだ経験したことのない役など未知の領域に踏み出していきたいです。新しいことに挑戦していければと思っています。
――ところで、お休みの日にはどんなことをして過ごしていますか?
私は、アニメや漫画を読むのが好きで、今は、『銀魂』が一番好きです。お休みの日は、漫画を1巻から改めて読んだりしています。それだけでお休みの日が潰れてしまいます(笑)。それから、2020年は自粛などもあって自宅にいることも多かったので、料理を勉強しています。母に「あなたは家庭科が苦手なんだから、料理をしないと」と言われて、カレーを作りました(笑)。お母さんの味には敵わないですが、自分ではうまくできたと思います。
――では、本作にちなんで、もし、魔法が使えるとしたら?
私は、動物と話ができるようになりたいです。黒猫のアンちゃんと話したいです。動物が大好きなので、喜ばせてあげたいんですが、どうしたらいいのかわからなくて…なので、どんなことを考えているのかとか、どうやったら喜ぶのかとか、話してみたいです。
――改めて公演楽しみにされているファンの方にメッセージを。
「魔女の宅急便」は、魔女だけど普通の13歳の女の子が成長していく物語です。私もキキと一緒に成長していけたらいいなと思っています。そして私が演じるキキを皆さんに好きになってもらえるように、お稽古を頑張っていきます。
【公演概要】
ミュージカル「魔女の宅急便」
出演:井上音生 那須雄登(美 少年/ジャニーズJr.)
生田智子 横山だいすけ 藤原一裕(ライセンス)/白羽ゆり 他
原作・監修:角野栄子( 『魔女の宅急便』福音館書店刊)
脚本・演出・振付:岸本功喜 作曲・音楽監督:小島良太
【東京公演】2021年3月25日(木)~28日(日) 新国立劇場 中劇場
【名古屋公演】2021年4月10日(土)~11日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
【大阪公演】2021年4月15日(木)~18(日) メルパルクホール大阪