7月19日(土)から幕張メッセで開催され、注目を集めている「宇宙博2014-NASA・JAXAの挑戦」。8月19日(火)、「『宇宙博2014』夏休み特別イベント」と題して、JAXA宇宙飛行士である若田光一さんのトークショーが同所で開催された。
若田さんは1996年1月に初めて宇宙飛行をしてから、計4回の宇宙飛行ミッションを行っている。直近では、2013年11月7日から2014年5月14日まで、宇宙で長期滞在を行った。通算の宇宙滞在期間はのべ347日にもおよび、日本人最長記録となっている。この日は夏休みということもあり、若田さんのトークショーに参加しようと、立ち見も含め多くの家族連れであふれかえるほどの盛況ぶりだった。
若田さんは、スライドショーや動画を使いながら、国際宇宙ステーションでどのような活動、研究をしているかを説明した。
宇宙での活動については、
「私はロボットアームを使って細かい作業をする、ミッションスペシャリスト(搭乗運用技術者)なので、宇宙ステーションが故障してしまったら冷却装置をロボットアームで操作するということもしました。また、筋力が衰えないように、1日2時間の運動は欠かせません。運動器具は無重力でも体に負荷がかかるように考えられた、特殊な器具を使用します。」
宇宙での研究に関しては、
「無重力でしか作れないタンパク質の変容を利用して、新薬の研究をしています。インフルエンザの特効薬や、難病である筋ジストロフィーの進行を抑える薬を作る研究などをしています」。
宇宙食に関しては、
「日本食もたくさんありました。現在の宇宙食は、とてもおいしいです。地球で食べているふだんの食事と変わりません。私が好きな宇宙食は、鯖の味噌煮とカレーライスですね。ぼくはスポーツ、とくに野球が好きなんですけど、宇宙ステーションでは残念ながらできません。でも、食べたい物を食べたい時に食べられる。そうすると(スポーツができなくても)、少しだけストレスがなくなるし、元気になれます」。
後半は質問タイムがもうけられ、子供たちの質問・疑問に答えた。
中学生の男の子に「宇宙に関わる仕事に将来就きたいが、今、何をしたらいいですか?」と聞かれると、
「宇宙でどんなことをしたいか、具体的に考えることが大切です。ぼくが子供の頃は日本人宇宙飛行士がまだいなくて、宇宙飛行士になろうというイメージがわかなかったんです。だから、昔は飛行機の設計士になりたかったんですけど、そのためには数学や理科ができなきゃいけないし、外国の専門誌を読むためには英語も勉強しなきゃな、と思うわけです。ですから、努力するために何か具体的な目標をもってください」と答えた。
目を輝かせて次々と質問を投げかける子供たちに、若田さんはていねいに答えた後、「みなさん一人一人が輝く力を持っているので、自分を発見して、自分が輝ける、がんばれることを見つけてください」と締めくくり、トークショーは終了した。
トークショー後の記者に対するインタビューでは、
―(実物ソックリの)「きぼう」日本実験棟を見た感想は?―
若田:実機そのままに再現され、それをみなさんに体験していただけるのはすばらしいなと思いました。
―宇宙で長期滞在する場合、日本食を食べられるというのはどんな意味がありますか?―
若田:栄養バランスに優れた日本食は、健康を維持していくという意味で重要です。それから、日本人にとっては、(宇宙船や宇宙ステーションという)閉鎖的な環境のなかで、昔から慣れ親しんだ食べ物を食べられるというのは、精神的・心理的にサポートしてもらえてありがたいです。
―長期滞在を終えた、この5月以降に行われているミッション報告会と、それ以前のミッション報告会と比べて違いを感じますか?―
※ミッション報告会……宇宙滞在に関して、イベントやトークショーなどを通して報告すること。
若田:日本の宇宙開発に関する期待というものを感じます。今日、子供たちからすばらしい質問をたくさんいただいて、頼もしく思いました。それに、宇宙に関わる職業に就きたいという子供さんも多くて、次の世代がちゃんと育っているな、と感じました。
最後に、「きぼう」日本実験棟内の、自らのサインをバックにフォトセッションを終えた後、イベントは終了した。
「宇宙博2014」はここがスゴイ!!
宇宙開発において最先端技術を持っているNASA(アメリカ航空宇宙局)とJAXA(宇宙航空研究開発機構)の協力を元に開催されたイベント「宇宙博2014」。実物の資料や、本物ソックリに作られた実物大モデルなど約500点が、約9000㎡の大ホールに展示されており、国内最大級の宇宙イベントとなっている。8月11日(月)には、開催から1か月足らずで早くも来場者数10万人を突破したほどの人気ぶりだ。
「宇宙博2014」が、これだけの人気を博しているのはなぜか。それは宇宙開発において最先端技術を持つNASAとJAXAが作った、リアリティのある展示品にある。なかでも、見どころである3つの展示品をご紹介。
(実際の展示はパラシュートは開いた状態で迫力満点だ)
アポロ計画(月への有人宇宙飛行計画)最後のミッションで使われた、アポロ17号の司令船。上のパラシュートは、なんと実際に使われたホンモノを展示している。
国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟。後述するような、驚きの実験もしている。実物大スケールだけあって、外観もスゴイが、中はもっとスゴイ!
「火星探査車」キュリオシティ。現在も火星で活躍しているアメリカ火星探査機の実物大モデルで、細部までこだわって再現されている。米国外で初めての展示。
「宇宙博2014」は宇宙開発の歴史から最先端の宇宙開発技術、さらには未来の宇宙開発までを知ることができる、これまでにない大規模な展示となっている。リアルで心躍る展示の数々を見に、ぜひ足を運びたい!
「宇宙博2014-NASA・JAXAの挑戦」
会場:幕張メッセ 国際展示場10・11ホール
千葉県千葉市美浜区中瀬2-1
会期:2014年7月19日(土)~9月23日(火・祝)※無休
午前9時30分~午後5時(入場は閉場の30分前まで)
入場料:
【当日】一般2500円、高校・大学生1500円、小・中学生900円、未就学児無料
【前売・団体】一般2200円、高校・大学生1200円、小・中学生800円
公式サイト:http://www.space-expo2014.jp/