
映画『アフター・ザ・クエイク』の公開記念舞台挨拶が10月4日(土) に、テアトル新宿にて行われ、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市、のん、そして井上剛監督が登壇した。
原作は、2000年に刊行され、今も世界中で愛読されている村上春樹の傑作短編連作『神の子どもたちはみな踊る』(新潮文庫刊)。同著に収録されている4編をベースに一部時代設定を変更、1995年から2025年の30年にわたる物語として新たに生まれ変わった。誰もが抱く孤独を、マジックリアリズムを交え描き出し、別々の時代・場所に生きる4人の物語が時空を超えて未来へ繋がってゆく。
まず、映画化した経緯を問われた井上監督は「今年が阪神淡路大震災から30年。今年、震災を題材にしたものは何かできないだろうかといろいろな人に相談したところ、プロデューサーの山本さんから原作本を渡されたんです。それは15年前に震災をテーマにした映画を作った時に参考にしたものだったので、ご縁を感じ、撮ろうと決意しました」と映画化の経緯を語った。
4月に全4話仕立てドラマ『地震のあとで』としてNHKで放送され、本作はドラマ版を映画版に再構築したもの井上監督は「最初からドラマと映画の両方同時に考えていました」とプランを明かした。

2011年のパートに出演した鳴海は、家出をして地元から離れた地域で暮らす順子を演じる。毎日のように海辺で焚火をしている三宅(堤真一)との交流を通して自分を見つめ直していくという役柄。鳴海は「本物の焚火で撮影をしたので、風向きが変わるたびにカメラポジションを変えて撮影しました。自然には敵わないなと思わされる瞬間がたびたびありました」と苦労したシーンを振り返った。

2020年のパートに出演した渡辺は、「神のこども」として育てられた善也を演じる。渡辺は「兄貴」と慕う渋川清彦との共演を振り返った。「現代パートで対峙した時に、30年くらい時が経ったように一気に歴史を背負っている渋川さんに重みを感じて圧倒されました。まるでタイムスリップしてきたかのような……。さすが兄貴だなと思いました」と話した。

そして、2025年のパートは歌舞伎町が舞台。身長2m以上ある“かえるくん”と共演した佐藤は「最初に監督から読んで欲しいと渡された僕のパートの内容がチンプンカンプンで意味が分からなかった。でもその後に原作を読んで“なるほど”と納得しました」と映画ならではのマジックリアリズムに唸った。かえるくんの声を務めたのんについて「どんな覚悟を持って演じられるのかと思ったけれど、のんさん自身が“これではない”と気付き工夫しながらやられている気がして、かえるくん=のんになっていた。頑張ったなと思って、凄く良かった」と絶賛。

そんなかえるくんの声を務めたのんは「かえる役は初めてだったので、どんな声になるのだろうかとビックリした。原作も読んで、かえるくんが救いになる役だと思って、意外と責任重大だけど頑張ってやってみようと思いました」とニッコリ。井上監督とは連続テレビ小説「あまちゃん」で関係性は築かれており「朝ドラでとてもお世話になったので、そういう繋がりもあってこれは安心して飛び込もうと思いました。変わらずの井上ワールドだったので軽快に明るく演出してくれたので、楽しくアフレコ出来ました」と伸び伸び声を当てる事が出来たと報告していた。
終盤には995年パートの出演者・岡田将生からVTRが流れた。「観た人の数だけ解釈が分かれる作品だと思いますので、皆さんの感想が本当に楽しみです。村上春樹さんの唯一無二の世界観を最後まで楽しんでください」と呼び掛けていた。

最後に佐藤は「なぜ4本の連作なのか、そしてなぜかえるくんが続編なのか。観る人によって解釈は変わると思います。再生の話なのか、蘇生の話なのか。そのニュアンスを自分の心の中で感じていただければ幸いです」、また井上監督も「日本の30年の節目を4つの章で描きました。観た方の中でもそれぞれの節目があると思います。本作はたまたま4つの物語ですが、それの間なのか後の話なのか、ご自分の中にある物語を想像して感じていただければ嬉しいです」と呼びかけた。
映画『アフター・ザ・クエイク』 テアトル新宿、シネスイッチ銀座ほかにて絶賛上映中!
配給:ビターズ・エンド ©2025 Chiaroscuro / NHK / NHKエンタープライズ

