【前編】金子大地×片山友希インタビュー 危うく儚い青春を描いた、映画『君が世界のはじまり』で魅せる繊細な演技

2020/7/24 18:00

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

2016年に短編小説「えん」で第40回すばる文学賞佳作を受賞し、映画や舞台、ドラマの演出も手掛けるなど、マルチな才能を見せるふくだももこ監督の最新作『君が世界のはじまり』が731日より公開される。

大阪の端っこのとある町で、高校生による父親の殺人事件が起きる。退屈に満ちたこの町では、高校生たちがまだ何者でもない自分を持て余していた。幼なじみの琴子に特別な感情を抱くえん、旧講堂の片隅で泣いていた業平に一目惚れした琴子、母親に出ていかれた純、そして東京からの転校生の伊尾らが、孤独に押しつぶされていたその夜に、事件が起きたのだった…。
父親の再婚相手と関係を持ちながら、それを知っている純とも関係を続ける伊尾役の金子大地と、母親が出て行って以来、父親を無視し続けている純役の片山友希にそれぞれの役柄についてや撮影の裏話、青春時代の思い出を聞いた。

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金子大地  片山友希

――まずは、本作へのご出演が決まった時のお気持ちから教えてください!

 金子:最初に台本を読ませていただいた時から、面白い作品になるなと思いました。僕が演じる伊尾は、すごく繊細で、物事を客観視しているように見えるけれど、実は意外と視野が狭くて、いろいろなことを諦めている人物です。自分の学生の頃と比べてみると全く違うタイプなのですが、どこか共感できる部分がある。僕はオーディションだったのですが、とても演じがいのある役だと思ったので、ぜひやらせていただきたいと思いました。

片山:私もオーディションでした。初めて監督にお会いしたオーディションで、純と琴子とえんという3人の女性を演じて見ていただいたのですが、その時に監督から「誰が一番、自分の中でしっくりきましたか?」と聞かれたんです。私、友達はいますが、「親友」と呼べるような特別な相手はいないんですよ。だから、正直いうと、えんと琴子の関係ってよく理解できないんです。なので、純だなと思っていました。純に決まったと聞いたときは、すごく嬉しかったです。

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――純にはしっくりくるところがあったんですか?

片山:そうですね。純には芦谷という友達がいますが、芦谷には山本という恋人がいる。原作では、純は芦谷と山本のことを微笑ましく見ていますが、私は全然微笑ましく見れないんです。山本に対して、めちゃくちゃ嫉妬しちゃうんです(笑)。その嫉妬はある意味、寂しさでもあるように思うので、純が抱えている寂しさには共感できるものがあったし、しっくりくると思いました。

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――映像として写っている以上に、それぞれのキャラクターのバックグラウンドや感情を考えながら演じていたように思いますが、どのように役を作り込んでいったのですか?

金子:僕と伊尾は似たタイプではないのですが、共通点はあります。それは、環境が変わったということ。僕は、芸能の仕事をするために、北海道から東京に出てきて、それまでと全く違う環境になりました。なので、環境が変わった時の気持ちは分かりますし、視野が狭くなってしまうのも理解できます。そういった、似ている部分から役を深めていきました。

片山:純は、お母さんがいなくなって、お父さんを無視するようになりましたが、それは単なるきっかけであって、原因ではないというところから考えました。お母さんがいてもいなくても、純はきっとお父さんを無視することはあったと思うし、伊尾と関係することはあったと思うんです。じゃあ、純の原因ってなんだろう、と。

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――その原因はどういうことだと思ったのですか?

片山:やっぱり寂しさだと思います。純にとって芦谷の存在は大きいものだと思うのですが、そんな芦谷にもお母さんがいなくなったと言えないんです。それはすごく大きなことだと思います。それを突き詰めて考えていくと、純は寂しさを抱えていたからなんじゃないかなと思います。

――なるほど。撮影ではどのシーンが印象に残っていますか?

金子:やはり非常階段のシーンは、どれも印象深いです。実は、最初の撮影も非常階段のシーンでした。なので、余計に印象的でした。それから、ショッピングモールに5人が集まって、楽しさや怒りを爆発させて歌うシーンは緊張感がありました。僕は片山さんと2人のシーンがほとんどだったので、だからこそみんなで集まった時は新鮮でした。

片山:私は、伊尾に「ミナミさんってどんな人?」と聞くシーンです。逆に伊尾から「そっちはどうなんだ?」って聞かれるのですが、その時に、純は初めてずっと追いかけていた伊尾を置いて出ていくんです。台本を読んで、それは「聞かれたくないことを聞かれてしまったから出ていく」のだと感じて、そう演技しようと思って現場に入ったら、金子さんの目がすごく怖くて…(笑)。それで、そのシーンを撮影している時に、思わず涙が出そうになってしまって、その涙を見られたくなくて出て行ったという演技に変わったんです。

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――金子さんは意識して怖い目で演技していたんですか?

金子:意識しました…というのは冗談です(笑)。僕としては別のシーンでもっと怖い目を意識して演技したところがあったんだけど…そこだったんだね!(笑)。

片山:金子さんが意識しないでそれをやったから良かったんだと思います。私しかそれに気づいていないから、伊尾はなんで純が泣きそうになっているのかわからない。その全然噛み合っていないところが純と伊尾の関係性なんだと思います。きっと、伊尾が怖い目をしているという素振りだったら、泣きそうにはならなかったし、逃げなかったと思います。

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『君が世界のはじまり』

2020年7月31日よりテアトル新宿ほか全国ロードショー

©2020『君が世界のはじまり』製作委員会
配給: バンダイナムコアーツ


【あらすじ】
大阪の端っこのとある町。深夜の住宅地で、中年の男が殺害される。犯人は高校生だった。
この町の高校2年生のえん(松本穂香)は、彼氏をころころ変える親友の琴子(中田青渚)と退屈な日々を送っていたが、琴子がサッカー部のナリヒラ君(小室ぺい)に一目惚れしたことで、二人は徐々にすれ違うようになっていく。同じ高校に通う純(片山友希)は、母が家を出ていったことを無視し続ける父親に何も言えぬまま、放課後ショッピングモールで時間をつぶす。ブルーハーツを聴きながらふと通りかかった屋上で、東京から転校してきた伊尾(金子大地)と会い、求めるものもわからぬまま体を重ねるようになる。偶然ナリヒラ君の秘密を知るえん。急接近した二人を見て見ぬふりをする琴子。琴子に思いを寄せる、サッカー部キャプテンの岡田(甲斐翔真)。思いの捌け口を見つけられない純。田舎に閉じ込められた自分と義母を重ねる伊尾。変わらない町―。そんなある朝、父親殺しの犯人が逮捕され……。郊外の気怠い空気とそれぞれの感情が混じり合い、物語は疾走していく。


松本穂香
中田青渚 片山友希 金子大地 甲斐翔真 小室ぺい
板橋駿谷 山中 崇 正木佐和 森下能幸
江口のりこ 古舘寛治


原作・監督:ふくだももこ 『えん』『ブルーハーツを聴いた夜、君とキスしてさようなら』
脚本:向井康介
音楽:池永正二 撮影:渡邊雅紀 照明:林 大智 録音:西 正義 整音:原川慎平 編集:宮島竜治
美術監修:小坂健太郎 衣裳:宮本茉莉 ヘアメイク:有路涼子 スチール:木村和平 助監督:伊藤希紗
企画制作:オフィス・シロウズ
製作:『君が世界のはじまり』製作委員会 バンダイナムコアーツ アミューズ オフィス・シロウズ
配給:バンダイナムコアーツ 


後編~

 

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