ある冤罪事件をきっかけに、娘と引き裂かれた男が、愛するものを守るために、武士としての誇りを賭けて仇討ちに挑む姿が描かれる映画『碁盤斬り』(5月17日（金）より全国公開中)で、初めて時代劇のメガホンを取った白石和彌監督に撮影時のエピソードや主演の草彅剛など豪華なキャスティングにまつわる話などについて話を聞いた。
――時代劇に初めてチャレンジすることを決意された理由、いきさつについて教えていただけますか？
監督を初めてから十数年が経ちましたが、最初から時代劇をやりたいと思っていたんです。あちこちで『時代劇がやりたい』とアピールしていたんです（笑）。ようやくチャレンジすることが出来ました。今までに撮られた多くの時代劇を観たり、こつこつ資料を集めたりして、たくさんの準備をして臨みました。
――自分ならでは時代劇を撮るために、こだわった部分はどんなところでしょうか？
『碁盤斬り』に関しては、｢美しく撮りたい｣という思いがすごくありました。（特に作品の背景になっている）江戸時代の暗さはどうだったのかなという思いで、リアルで美しく、江戸時代の人々がほんとに見ている世界にすごくこだわりました。
――キャスティングはすべての皆さんが役にはまっていて素晴らしかったのですが、どのように決まっていったのでしょうか？
まず、主演の柳田格之進役を草彅さんが演じてくれることが決って、萬屋源兵衛役を國村隼さんにお願いして、その後は若い２人（中川大志、清原果耶）、お庚さん（小泉今日子）と決まっていきました。親分役の長兵衛役がなかなか決まらなかったのですが、幸運にも市村正親さんが引き受けて下さいました。
――草彅さんについて聞かせてください。
現場での切り替えが出来る方。普段はYouTubeの感じでフランクな草彅さんなんですが（笑）、現場に『さぁ、入ってください』となると、一瞬でタイムスリップして江戸時代の武士になってくれるんです。撮影中に、「台本も一回くらいしか読まない―」とかって言ってたりするのですが、話はもちろん理解していて……。草彅さんはいつも飄々としてるんですが、実は、ちゃんと本を読んで作り込んでいるんじゃないかなって（笑）。
――他に現場での草彅さんってどんな様子なんでしょうか？
撮影が終わって古着屋に行った話をよくしてくれたんですが、ちょっとしたエピソードを本当に面白くウィットに飛んで話てくれるんですよ。ヴィンテージの古着の話でマニアック過ぎてよくわからないんですが、楽しそうな草彅さん見てるだけで多幸感に溢れます（笑）
――格之進の娘のお絹を演じた清原さんの印象を聞かせてください。現場でアドハイスされたことはありますか？
父親の借金ために遊郭に身を売るという精神性は現在の人では分からないと思います。父親への愛情や尊敬、そういう部分を起点に演じて欲しいと伝えました。”武士の娘”であるということ、背筋が伸びた凛とした感じや品格は僕の想像以上でした。その凛とした感じは演じている草彅さんを見て、｢私もちゃんとしなきゃいけない｣と思っていたようでした。
――草彅さんから清原さんにアドバイスはあったのでしょうか？
草彅さんは同じ俳優として｢こうしたほうがいい｣というアドバイスではなく、｢僕はこうしていくよ｣とかフランクに話してたと思います。
――完成披露舞台挨拶でもキャスト陣が和気あいあいとしていて、共演者同士の仲の良さを感じましたが、現場はどんな感じでしたか?
草彅さんがいると、悪い雰囲気にならないんです。「俺が引っ張るぞ－」という座長感ではなく、潤滑油みたいに皆を気持ち良くすることが自然にできる人で、そこがスゴイと思います。実は僕、草彅さんと同じ歳なんですよ。最近腰が痛いので相談したのですが、「半身浴を長くして、股関節を回すといいよ」ってアドバイスをくれました(笑)。
――斎藤工さんとのアクションシーンは見応えありました。工夫された点を教えてください。
アクション担当の方とセットの図面を見て、動きや流れをいろいろと工夫して3日ほどかかって撮りました。草彅さんは覚えが早くて器用ですね。いろんなことの経験が生きていて、動きがダンスに近くて、工くんが嫉妬していました。
――遊郭のおかみ・お庚役を演じた小泉今日子さんについてきかせてください。
吉原のおかみは、いい人だけではなくて怖いところのある人なんですね。小泉さんはアイドルとして天下を取ったことがある人。普段からいろんな側面を持っている人で頭もいい。難しい役ですが、演じられると思いました。お庚の懐の深さが最後のセリフにあります。「このセリフで小泉さんに全部持って行って欲しい」とお願いしました。
――最後にメッセージをお願いします。
人情噺がベースで親子の愛情、若者の恋愛、友情、復讐と色んな要素が入ったエンターテインメント作品です。『碁盤斬り』は時代劇ですが、現代的なテーマが含まれています。若い人たちにもぜひ観ていただきたい。
草彅にとって2009年の主演映画「ＢＡＬＬＡＤ 名もなき恋のうた」以来15ぶり、単独主演では初の時代劇映画となる。白石監督は、京都撮影所での撮影で見事に江戸時代の光を再現した。草彅は「僕の代表作になりました」ときっぱり。若い人にこそ観て欲しい時代劇が誕生した。
『碁盤斬り』
5月17日（金）より全国公開中。
出演：草彅剛
清原果耶 中川大志 奥野瑛太 音尾琢真 / 市村正親
斎藤工 小泉今日子 / 國村隼
監督：白石和彌
脚本：加藤正人
音楽：阿部海太郎
公式HP：https://gobangiri-movie.com
コピーライト：©2024「碁盤斬り」製作委員会
配給：キノフィルムズ
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取材 文：福住佐知子 撮影：ランランエンタメ！編集部
