左から)鳥越裕貴 松田凌 濱田龍臣 宮崎秋人 新納慎也
『おかしな二人』、『サンシャイン・ボーイズ』など、数々の戯曲や映画を手がけたブロードウェイを代表する喜劇作家、ニール・サイモン。『ビロクシー・ブルース』は彼の自伝的戯曲で、青春グラフィティの傑作でもある。ブロードウェイで1985年に初演が行われて以来、トニー賞最優秀賞作品賞をはじめとする数々の賞を受賞してきた本作に、2018年に読売演劇大賞を受賞し、活躍の馬をますます広げている小山ゆうなが挑む。また、濱田龍臣、宮崎秋人、松田凌、鳥越裕貴、木戸邑弥、大山真志、岡本夏美、小島聖、新納慎也と、若手を中心とする実力派が顔を揃えている。
囲み取材に登壇したのは、濱田龍臣、宮崎秋人、松田凌、鳥越裕貴 、新納慎也の5名。まずは役柄についての質問が寄せられ、主人公・ユージンを演じる濱田が「ユージンが記した回顧録のノートを開いて振り返るところから物語が始まります。知的だけど可愛らしいところもあるキャラです」と語る。宮崎は「エプスタインはみんなの輪から外れているような青年。周囲からどう見られているかよくわからない。つかみどころのない男の子だと思います」と分析する。
続く松田は「皆さんの周りにも、なんでそこまで悩むんだということで悩む人がいると思います。カーニーは作中でも恋や将来に悩み、戦時中の時代においてビビッドに生きている。優柔不断な彼ですが、成長過程が見られるんじゃないかと思います」と話して終了かと思いきや「こんなところで終わらせていただこうかと思うんですが……」と続けて鳥越から「はよ終われや!」とツッコミを受ける。「優柔不断さを出そうと思って」と話して笑いを誘っていた。
鳥越が「セルリッジはこの年らしい素直なアホの子。クラスに1人おるといいなと思います」と話すと、今度は松田から「まんまやん」というコメントが。鳥越も「まんまやろ。いいキャスティングですよね!」と笑顔を見せていた。新納は「トゥーミー軍曹はいわゆる鬼軍曹。コンプライアンスに厳しい今の時代だと考えられませんが、僕としては礼儀と作法を持ってパワハラをしている。お楽しみに」と意気込んだ。
また、本作はニール・サイモンの戯曲。長台詞についての質問が出ると、「ニーロ・サイモンとしてはですね……」と新納が話しだし、キャスト陣が笑い声を上げる。新納は「意外と出番は少ないけど、登場するととにかく喋る。これは役者のエゴですが、見に来てくれた知り合いから「台詞よく覚えたね」と言われるのが一番恥ずかしい。でも稽古で「そんなにいっぱい喋ってるようには見えないよ!」と言われて、「え、こんなに一生懸命覚えたのに?」というジレンマに陥りました」と複雑な心境を語った。
濱田の「読み合わせから考えると会話のテンポがすごく上がった。この作品の言葉が持つパワーがあるからこそ、このテンポ感になったんだとすごく感じます」という言葉に、上官役の新納も「若い訓練兵の役だけど、実際はみんなそんなに若くない(笑)。スタートはそんなに若くないなという感じでしたが、稽古を進めるうちに会話のテンポで若さが出てきた」と太鼓判を押していた。
松田は「役割ははっきりしているかもしれないですよね。各々が魅力を出すことで時代やニール・サイモンが生んでくれた作品が立体化していくのを感じました。稽古を通して初日が楽しみになりましたね」と手応えを語る。
宮崎は「新納さんが出てきて長台詞を喋るシーンがあるけど、「トゥーミーが喋っている最中の僕らリアクションをお客さんは見ているから」と言われたのが印象的でした。(トゥーミーは)なんてコスパが悪い役なんだろうと思いました(笑)」と同情を寄せ、新納も「お客さんもそっちを見る方が面白いからね。僕はBGMでしょ?」といじける。だが、「でも全部かっさらってやる!」と力強く宣言していた。
鳥越は「僕はほんまにアホやから、稽古をやりながらわかってくる感じでした」と振り返る。「でも、お客さんの中にも僕みたいな人は絶対いると思う。何回見ても、どこにでも伏線があるから、いまだに探りながら頑張っています。本番でもまだ見つけられると思うので、お客さんと同じ状態。もしかしたらお客さんが僕より先に色々見つけるかも」と明るく語っていた。
最後に、演出を務める小山の印象を尋ねられると、同い年だという新納が「演劇少女がそのまま大人になったような方。とても台本の読み込みが深く、演劇を愛しています。時々「ここってこういう意味よねぇ」と言われるんですが、演出として取り入れたほうがいいのか演劇少女の感想なのかわからない(笑)。そんなチャーミングな一面がありますね」と親しみを込めて語る。濱田は「遠い昔のような気がするんですが、1ヶ月ほど稽古があったんですよね。それだけの期間やった気もするし、全然やっていないような気もします。小山さんとは劇場入りしてからもたくさんお話ししました。その時々で吸収していますが、今までになく必死にもがいている感覚。今日もアドバイスをもらって、ありがたいなと思っています」と締め括った。
本作は2023年11月3日(金・祝)にシアタークリエで開幕。11月19日(日)まで上演される。