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2023年8月10日 12:00

ミュージカル『スクールオブロック』梶裕貴&太田基裕インタビュー 「ロックの魂を生で体感してほしい」

西川貴教と柿澤勇人がダブルキャストで主演する、ミュージカル『スクールオブロック』が、8月17日から上演される。本作は、ジャック・ブラック主演のコメディ映画『スクール・オブ・ロック』を原作としたミュージカル。売れないロックミュージシャンのデューイが、名門進学校の臨時教師になりすまし、生徒たちにバンドを組ませる。本作で、主人公デューイの親友ネッド・シュニーブリーをダブルキャストで演じる梶裕貴と太田基裕に、公演への意気込みやロックへの思いを聞いた。

――2020年に上演予定だった本作ですが、新型コロナの影響で全公演中止になりました。それだけに、今回、待望の上演となります。梶さんは、2020年の公演にご出演する予定でしたが、その際には、どんな思いからご出演を決めたのですか?

梶 僕はそれまで本格的な舞台には出演したことがなかったのですが、いつか挑戦してみたいという憧れの気持ちはあって。なので、この作品のお声がけをいただいたときは本当に嬉しかったですね。でも、蓋を開けてみてびっくり。タイトル的にも共演者の皆さんのお名前をうかがっても、まさに一流作品で。大きな責任感やプレッシャーを感じたのも事実でした。

――中止を経ての今回の公演は、感慨深いものがありますね。

梶 はい。上演が決まって、すごく嬉しかったです。この作品をようやく形にできるんだという喜びが大きかったですね。ただ…この作品は、ある意味において子どもたちが主役。なので、 2020年の時のメンバーと一緒にやれなくなってしまったのは、やはりとても残念でしたね。彼らの思いも僕たちが背負って、今回にぶつけられたらと思っています。

――太田さんは、今回、新たにご出演が決まりました。改めて、ご出演が決まった時のお気持ちを聞かせてください。

太田 原作の映画は、思春期の頃に観て思い入れも強かったので、2020年に上演するという情報を知って、羨ましいなと思っていました。なので、今回、お話をいただいて、とても嬉しかったです。しかも、以前共演させていただいたこともある梶くんとダブルキャストということで、心強いなと思いました。

――(取材当時)今、鋭意お稽古中かと思いますが、脚本や原作の映画から感じている、この作品の魅力を教えてください。

梶 誰もが楽しめるエンタメに仕上がっていて、シンプルに面白いですよね。個性豊かなキャラクターたちがたくさん登場しますが、どのキャラクターにも欠点があって、それがとても人間らしくていいんですよね。本ミュージカルでは、原作の良さももちろんキープしつつ、さらに生だからこその魅力を感じていただけるものになっているのではないかなと思います。

太田 自由奔放なデューイと子どもたちとの絆が、いつの間にか積み上がって、強い絆となって、みんなで一丸となってロックするという、人と人との出会いの中で成長していく物語は多くの人の心に響くと思います。でも、この物語の中で成長しているのは、デューイや子どもたちだけではなく、ネッドはネッドなりに成長していく姿が描かれていますし、それぞれのキャラクターにも成長や変化が見られると思います。希望が描かれた明るい作品だと感じました。それに、やっぱり楽曲がキャッチーなんですよ。

――そのキャッチーな楽曲についても詳しく教えてください!

太田 今は、僕たちはピアノで稽古をしているので、いまいちロックっぽさは感じていないですが、頭の中ではバンドが鳴っています(笑)。

梶 そうそう(笑)。その中にバラード曲もあれば、キャラクターの心情を描写したしっとりしたアレンジ曲もあったりしますが、基本的にはタイトル通り、ハイな楽曲で構成されています。

――お二人がお気に入りの楽曲はどの楽曲ですか?

梶 自分が歌う楽曲には、やはり特別な思いがありますね。

太田 僕は、生徒たちが先生に立ち向かおうと歌う楽曲が力強くて耳に残っています。

梶 このミュージカルだけのオリジナルナンバーが盛りだくさんですが、原作映画で馴染みのある楽曲も用意されいるので、映画ファンの方にも満足いただけるのではないかと。

――なるほど。では、お二人が演じるネッドという役柄については、どんな印象がありますか?

梶 自分を曲げずに夢を追いかけ続けている主人公のデューイと、そんな彼とは真反対のキャリアウーマン、ガールフレンドのパティとの間に挟まれているのがネッドです。立ち位置的にも精神的にも板挟み状態の、揺れ動く人。常にアタフタしていますね(笑)。でもそれは、どちらの気持ちも理解できるからで。それぞれの長所をきちんと見てあげられている人なんですよね。そんな心優しいネッドが、これからの未来を見据えてどのように現実に立ち向かっていくかが、本作においての彼のドラマになると思うので、決して多くはない登場シーンの中で、彼の人となりを、どう表現していくかが大事なポイントなのかなと考えています。

太田 まさにその通りです(笑)。その出番の中で、どのくらい、そうした役を立体化できるかはやはり大事だと思います。いろいろな表情を見せたいですし、ネッドの深みをどれくらい出せるかは課題ではあるなと思います。

――このネッドという役を梶さんと太田さんという印象の違うお二人が演じるというのも面白いなと思いましたが。

太田 そうですか? 僕たちとしては、似たものが流れているのを感じていますが(笑)。

梶 うん(笑)。もちろん違うところもたくさんあると思いますが、自分たちとしてはかなりしっくりきています。芯にあるものが近いのかなという感覚がありますね。とはいえアウトプットの仕方としては、舞台経験豊富な太田くんと声の芝居をしている僕とではアプローチの方法が全然違うと思うので、そこがダブルキャストの面白さに繋がっていくんじゃないのかなと。せっかくなので、そんな違いをあえて楽しみつつ、一緒にひとつの役を作っていけたらなと思いますね。

――お二人は、2019年に『イノサン musicale』でも共演されていました。その際には、お互いにどのような印象を持っていましたか?

太田 今と同じです。近いものが流れているなと。楽屋が隣だったので、よく話していたんですよ。

梶 稽古中はあまり時間がなかったのですが、本番が始まってからは結構、色々と話しましたね。もっくん(太田)は、すごく物腰が柔らかいけど、ちゃんと自分を持っているのがわかるので、「この人は信頼できるな」とすぐに感じました。僕はピリピリするのが好きじゃないので、穏やかに一緒にいられる感じが居心地が良くて。

太田 まさしく同じことを思っていました(笑)。肩肘を張らずに、同じ空間を過ごせる。別に話さなくてもずっと同じ空間にいられるというのがいいなと。変に気を遣うこともないし。

梶 そうだね。普通は時間をかけて仲良くならないと、なかなかそうはなれないものだと思うけど、もっくんとは最初からこんな空気だったように思います。

――2019年の共演時に何か印象に残っている出来事はありましたか?

梶 当時は、そもそも舞台に出演すること自体が初めての経験だったので、全てにおいていっぱいいっぱいで。だからこそ、もっくんがいてくれたことですごく救われていました。でも、公演後はすぐにコロナ禍になってしまったので、食事に行くのもなかなか難しくて。そんな中で、またこうしてご縁があるのも何かの意味があると思うので、この作品が落ち着いたらぜひ、ご飯に行きたいなと思っています。

太田 (梶は)見たままのすごく真面目な方なんだと思いました。敬語で話してくださいますし、セリフもしっかりと覚えてきていて、歌にも真っ直ぐに取り組んでいる姿が印象的で、お忙しいのにすごいなと。挑戦する姿から刺激をもらえますし、今回も、そういう意味で、すごい刺激をいただいています。一緒に作品を作れることが、すごくありがたいなって思います。

――今回はダブルキャストなので、ステージ上での共演はないんですよね。

梶 残念ですが、そうなんです。それは寂しいですが…稽古場で、もっくんのお芝居を見て勉強させてもらえるのがダブルキャストの良さだなと。これから色々なことを教えていただきたいです。

太田 お互いに、「ここはこうした方がいい」という細かいところが出てくると思うので、そういう時は共有していけたらと思います。

――主演の西川さんと柿澤さんの印象はいかがですか?

太田 エネルギッシュですね。子どもたちと一緒になってすごいエネルギーがあると思います。

梶 本当に。セリフ量も多いし、ステージにいる間はずっと話して動いて歌ってという感じなので、ものすごいエネルギーが必要だろうなと。感情表現も豊かな役なので、シンプルに「すごいな、大変だな」と頭が下がります。あの姿を見ていると、僕らは絶対に弱音なんか吐けません(笑)。西川さんとは、これまでにもイベント等でご一緒する機会が何度もあったのですが、お芝居を交わしたり、ここまで色々なお話をさせていただくのは初めてでした。僕は声優として活動する中でこうしてミュージカルに参加させていただいていますが、西川さんも普段は歌手・アーティストをされている方なので、お互いに、違うことにトライするという部分でも、その姿にすごく励まされますし、刺激をいただいています。柿澤さんとはこの作品で初めてお会いしたのですが、お芝居の組み立て方だったり、役の作り方、動き一つとってもアイディアがたくさんあるお方で。人一倍練習熱心なところも、とても尊敬しています。これからのお稽古を通して、もっとじっくりコミュニケーションをとっていくことになると思うので、今からそれが楽しみですね。

太田 僕から見たお二人は、先ほども言いましたが、とにかくエネルギッシュ。それから、高いスキルを持った方々です。音楽の話になると、西川さんも入ってくださって「ここはこうした方がいい」と色々な案を出してくださるので、すごく頼りになります。柿澤さんは、本当にお芝居が大好きなんだなというのが、役作りを見ていると伝わってくるんですよ。こういう刺激を与えたら相手がこう動くんじゃないかというようなことまで想定して演じていると感じます。お芝居に対する熱量がすごく高いんですよ。お二人とも全くタイプは違いますが、それぞれのエネルギーと強い意思を感じられて、僕たちも刺激を受けながら、唯一無二のお芝居ができればいいなと思います。

梶 本当に、全く違うデューイだから面白いよね。僕たちのネッドも、きっと引き出されるものがそれぞれ違うんだろうなと感じています。

――そうした違いもダブルキャストの楽しみですね。

太田 この作品は、本当にやることが多いんですよ。その上で、色々な組み合わせがあるので。

梶 同じ組み合わせは何回あるんだろうと不安になるくらい、毎回違うもんね(笑)。

――それだけキャストの方が違うと、演じる皆さんとしても新鮮なんじゃないですか?

梶 良い緊張感を持って毎日の公演に臨めそうですよね(笑)。観に来てくださる方も、きっと毎回、何か新しい発見があるんじゃないかなと思います。

太田 普段は、今日は誰が演じるのか、毎回、チェックするのですが、今回は逆にチェックしない方が楽しいんじゃないかなと思っています(笑)。本番の舞台の上で相手役が誰かを知るという(笑)。それくらいの方がもしかしたら楽しめるのかなと。

梶 確かに、その方が楽しめるのかもしれない(笑)。

――では、お二人のロックにまつわるエピソードをお聞かせください。ロックへの想いでもいいですし、どんな音楽を聴いていたでもいいのですが…。

太田 僕は、思春期の頃からロックが大好きだったので、今もこの作品に携わっているとその頃の気持ちを思い出しますよね。

――梶さんもロックは聴いていたんですか?

梶 僕はあまり特定のジャンルを聴いていたというのはなかったですかね。色々と聴く選択肢のなかに、ロックというジャンルも入っていたといいますか。

太田 海外のアーティストもあまり聴いてなかったですか? BON JOVIとかエアロスミスとか?

梶 もちろん知ってるけど、有名な曲しか聴いたことないかも。

太田 B’zとかは?

梶 B’zは大のB’z好きの友達がいたから、アルバムを借りて、それこそ多分、全ての楽曲を聴いていたはずだけど…ジャンルとして「ロック聴いてるぜ!」みたいな意識はあまりなかったからな(笑)。ジャンルを考えたことがなかったかもしれないですね。なので、この「スクールオブロック」というタイトルの作品に自分が出演するというのが不思議でありつつ、どういう感じになるんだろうと楽しみでもあります。わかっていないだけで、自分の中にも、そういう“ロック”なマインドは必ずあると思うので、それをこの舞台で見つけられたらいいなと。日常生活では、僕はあまり解放するとか、激しくノルみたいなことはないタイプなので…今、稽古で普段の自分では絶対にやらないことをやっているのが面白くて(笑)。僕自身も観客の皆さんも、この作品に触れている間は解放されたら素敵ですよね。

太田 「解放」に憧れる気持ちがあるんですか?

梶 むしろ、ないの?(笑)。普段の自分じゃ難しいけど、役を通せばできるというか免罪符を得たというような感覚で。それって、役者の楽しさのひとつでもあると思うんですよね。

――太田さんとしては、ロックを聴くのは懐かしいというような感覚ですか?

太田  昔、聞いていたとはいえ、僕は目立ちたくない人なので。でも、矛盾しているからこその憧れがあるんですよね。要は自由自在に、めっちゃかっこよくギターを弾いているロックスターを見て憧れるっていう。手の届かない存在なんですよね。夢が詰まっているという感じでした。

――ライブに行って、ノルことはあるんですか?

太田 学生の頃、初めてB’zのライブを観に行った時に、記憶が飛んだことがあるんですよ。本当にすっぽり抜けてるんです。最高のセットリストで、途中から記憶が飛んでいて…自分がどんな行動を取ったのかも覚えてないんです(笑)。

梶 すごいね、それ。なかなか経験できないよ。

太田 自分でもびっくりしました。

梶 それ以降はB’zのライブは行ってないの?

太田 行けてないんですよ。

梶 ぜひ行ってみて欲しいですよね。大人になった今、どう感じるのか。

太田 楽しいのは間違いないと思いますが、記憶がなくなるというのは、やっぱりあの時しかできない経験だったかもしれない。最高でしたね。

梶 その間、何してたんだろうね(笑)。相当ハイになっていたのは間違いないんだろうけど。

太田 ねえ(笑)。失神するとかいうけど、それと同じようなことだろうね。

梶 いやー、すごい。じゃあ、ぜひもっくんのお芝居を見て、この作品のお客さんも…。

太田 いやいや(笑)。失神するお客さんがいたら、心配になっちゃうから(笑)。公演中止になるよ(笑)。

梶 あはは。でも、それくらいのロックを見せたいですね。

――では、ロックに出会って、子どもたちが変わっていくというこの物語にちなんで、お二人の人生を変えた出会いは?

梶 最近で言ったら、子どもの誕生です。価値観が大きく変わりました。基本的に仕事で、お芝居で結果を残せたらなっていう思いを強く抱いて生きてきたこの20年くらいがある中で、それと同じか…それ以上に、何かを犠牲にしてもって言うとあれですけど、一緒に過ごす時間が大事だなとか、一緒にいたいなと思うようになったのが、子どもの存在なんですよね。は今までに感じたことのなかった気持ちばかりなので、自分にとって、ものすごく大きい出会いでした。

太田 僕は、初舞台のオーディションで舞台の世界に引っ張り上げてくれた人との出会いです。

梶 そうなんだ(笑)。何年くらい前?

太田 ミュージカル『テニスの王子様』という舞台で、15年くらい前かな。それまで舞台も全く観たことがなかったから、どんなものかもわかっていなかったんですよ。でも、縁があったのか、受かって。それがなかったら今の自分はなかったなと思います。

ボソボソと喋るような役だったから、僕のやる気のない姿とイメージがぴったりだったのかもしれないです。

梶 なるほど。なんでもやる気があればいいというわけじゃないのが難しいよね。ご縁ですよね、本当に。

――お稽古始まってから、やる気に火がついたんですか?

太田 つけざるを得なかったんですよ。30人くらいいるキャストの中で、新キャストは僕だけだったんです。みんな、ガツガツ鏡の前で練習していて、ほぼ完成しているし、関係性も出来上がっている。その中に放り込まれたから、もうやるしかなかった。

梶 よかったね。もし全員同じスタートラインだったら、また違っていたかもしれないから。

太田 そうそう。その環境も良かったんだと思います。

――ありがとうございました。最後に、改めて読者の方に一言、メッセージをお願いします。

梶 間違いなく、どなたにも楽しんでいただける作品になっていると思います。暑い夏です。劇場で涼みつつ、ハートはより熱くしていただけたら。元々ロックが好きだという方も、僕みたいにあまり触れてこなかったという方も、必ずご自身の中にある“ロックの魂”を感じていただけるはず。ぜひ生で体感してほしいなと思います。よろしくお願いします!

太田 僕的には本当にロック好きの親父に見てほしいと思っています。劇中にはいろいろなアーティストの名前が出てきてネタにされてるので、そうしたちょっとした小ネタもロック好きな人は楽しめます。もちろん、ロックを知らなくても、誰にでも楽しんでいただける作品です。音楽もキャッチーで楽しめますし、子どもたちが一生懸命頑張っている姿を見るだけでもエネルギーをもらえると思います。たくさんの方に楽しんでいただける最高のミュージカルだと思うので、ぜひ劇場でお待ちしております。

ミュージカル「スクールオブロック」

8月17日~9月18日
東京建物 Brillia HALL
公式ホームページ https://horipro-stage.jp/stage/sor2023/

 

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