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2023年9月3日 17:55

【後編】尾上松也&廣瀬友祐インタビュー 8年ぶりの共演で濃厚な2人芝居を見せる「スリル・ミー」

――この作品を演じるにあたっては、どんなところを大切にしたいですか?

松也 本当に2人しか出てこない作品なので、“私”の目に見えているのは“彼”だけなんです。もちろん“彼”もそうなのですが、でも、“彼”に見えない“私”もあるわけです。それがすごく面白くもあると思います。それから、舞台上には2人しか出てきませんが、彼らの世界にはお父さんがいて、お母さんがいて、街の女の子たちがいて、弟がいて…と現実的な状況があるので、2人だけでその情景を生み出さなければいけません。それは大変なことではありますが、それがあることで2人だけの世界の説得力が生まれるのかなとも思います。前回はとにかく演じることに必死で、そこまで考えられていなかったのですが、今回、僕は再演なので、当時は考えられなかったことを増幅して考えられたらと思っています。

廣瀬 僕は今回、初めての出演なので、正直なところ、まだ何も分からず、最初はインプットする作業で追われてしまうだろうなとも思っています。ただ、栗山(民也)さんの演出にもとても興味があるのでお稽古はとても楽しみです。これまで何度も上演されている作品ですので、稽古場で正解を提示してもらえる瞬間が多々あると思います。ですので、最初はそれにならいながらも、勇気を持ってまずはずっと続いている形や演出に疑問を持つことから挑戦してみたいと思います。

それから、これまで上演されてきた映像を観させていただく機会が増えると思うので、そうした映像を観た時に「ここに何か付け加えよう」と僕自身も考えると思います。ですが、付け加えていった後、それをどこまで削ぎ落とせるのか。それは時間との勝負かもしれませんが、どこまで逃げずに、負けずに立ち向かえるのかが大事なのだろうとも思います。自分自身もまだ何も分からない状態ではありますが、しっかりと向き合っていきたいと思います。僕にとっては、この作品を一度経験している松也くんが味方にいるというのは、とても心強いですし、きっと救われる瞬間がたくさんあるんだろうなと思っているので、“彼”役ですが存分に甘えて(笑)、一緒に作っていけたらと思っています。

――今回は、お二人のほかに木村達成さん×前田公輝さん、松岡広大さん×山崎大輝さんという3ペアが出演されます。そこで、松也さん×廣瀬さんペアならではの見どころを教えてください。

松也 人生経験値とか(笑)? 経験していればいいというものではないですが(笑)。ただ、そうしたこのペアならではの部分というのは意図的に出すものではなく、自ずと出てしまうものだと思うので、今はまだ分からないですね。きっと開幕してから感じられるのではないかと思います。

廣瀬 身体的な俊敏さは、ほかのペアより欠けるかもしれない(笑)。

松也 キレはほかのペアの方がいい(笑)。でも、キレがないことがリアルに見える可能性もあるし…。どう見せたいとか、あります?

廣瀬 今は分からないですね。どうなるかも分からない。

松也 これまでの方たちがどうしていたのかは分からないですが、僕が前回、出演した時は、基本的に、他のペアは見ないようにしていました。交流はありましたが、意識しないようにと思って、ご飯に行くのも終わりかけの頃にやっとという感じでした。どうしても、ほかのペアの芝居を観てしまうと、その残像が残ってしまうと思って。あのペアの方たちはこうしているから、僕たちはこうしようと意図的にやってしまうと、芝居の中で本来効果的なものが効果的ではなくなってしまうと思うんです。あくまでも、この2人の「スリル・ミー」をベストな状態で表現する、ということを優先したいと僕は思っています。

――前回の公演では、栗山さんがそれぞれのペアに「キーワード」となる言葉を与えたそうですよ?

松也 それはやめてもらいたい、キーワードとかはちょっと困る(笑)。「君たちは森がキーワードです」と言われたら、「どういうことだろう?」ってなりますから(笑)。

廣瀬 そんな感じのキーワードなの?

松也 いや、僕も分からないけど、栗山さんのことだから予想もしないことを仰るかもしれないと思って。それはやめていただけるよう伝えておきます(笑)。

 

――(笑)。では、今回は松也さんが“私”、廣瀬さんが“彼”を演じますが、お二人ご自身は、どちらに近いですか?

松也 両方の要素があるとは思いますが、僕は“彼”だと思います。“彼”は自分が中心で、意外と身近な人のことを理解していないんですよ。頭が良すぎるからなんだと思うのですが、そうしたところも含めて、僕の印象では“彼”の方が人間的。隙があるというか、抜け目がある。僕はそこまで計算づくしでできないから“彼”かなと思います。

廣瀬 今の松也くんの分析を聞くと、僕も“彼”かなと思いました。計算してるつもりなのにできてないところがあるというのは、似ているところがあるかもしれません。

――ありがとうございました!!

「スリル・ミー」は以下の日程で上演。
東京公演:9月7日(木)〜10月3日(火)  東京芸術劇場 シアターウエスト
大阪公演:10月7日(土)〜9日(月・祝) サンケイホールブリーゼ
福岡公演:10月11日(水)・12日(木)  キャナルシティ劇場
名古屋公演:10月14日(土)・15日(日) ウインクあいち
群馬公演:10月21日(土)・22日(日)  高崎芸術劇場 スタジオシアター

 

取材 文:嶋田真己 撮影:早川善博

 

 

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