取材:記事・写真/RanRanEntertainment
映画『楽園』が初日を迎え、10月18日(金)東京・TOHOシネマズ日比谷にて行われた舞台挨拶に主演の綾野剛、共演の杉咲花、佐藤浩市、村上虹郎と瀬々敬久監督が出席した。また、当日は、劇中曲を手掛けた作曲家ユップ・ベビンがオランダからこの日のために駆けつけ、舞台挨拶前に劇中曲「愛華」をピアノで生演奏して満員の観客を魅了した。
本作は、『悪人』(10)『怒り』(16)などの原作者、吉田修一の「犯罪小説集」が原作。ある地方都市で12年前に起きた未解決の少女失踪事件をめぐって、容疑者とされる青年・中村豪士(綾野)らが真相に迫る様が描かれる。
赤のスーツで登場した綾野に共演の村上が「今日、ライブですか?」と突っ込みを入れ、綾野は「いろいろ思うことあったよ。大人だしオレも」と言い訳しながら、苦笑い。
主人公の中村豪士役を務めた綾野は「ようやく皆さんにお披露目できて、託すことが出来ます。皆さんの中で、何が生まれるかということが重要だと思っていたので、もうここからこの映画は皆さんのものです」と客席に向かって、初日を迎えた喜びを伝えた。劇中、綾野は、事件の容疑者として追い詰められていく青年役を渾身の演技で魅せた。
被害者の親友・湯川紡(つむぎ)役を務めた杉咲は「撮影中は本当に日々苦しかった」と胸中を吐露。トラウマのような時間を過ごしたことも明かしたが、「この映画をみて、自分自身が救われたので、多くの方に観て欲しいです」と映画をアピールした。
また、杉咲はラストシーンについて「あのシーンは追加になったシーンで、瀬々監督から設定が真逆なことを聞かされ、パニック状態になったんです。後でまた聞いたら、違っていて。私をパニックに陥れるための瀬々さんの作戦だったのかな……。ラストシーンのゆくえは、観客に委ねているようです」と、しみじみと振り返った。綾野は、瀬々監督が現場で非常に不安定だったことを明かしていた。
養蜂家・田中善次郎役を務めた佐藤は「『楽園』というのは、人それぞれに違うものです。そんなことをこの映画を観て考えて欲しい」とコメント。佐藤は、村八分にされ、孤立し、正気を失い、どんどん壊れていく善次郎役を好演している。
ロックバンド「RADWIMPS」の野田洋次郎が書き下ろし、女優の上白石萌音が歌唱した主題歌「一縷(いちる)」に話が及ぶと、綾野は「僕は試写を観終わった後に『一縷』を聞いて、助かりました。包みこんで、全てをすくい取ってくれるような曲なんです。いま、真実なんて何の役にも立たないと思える時代に、真実を照らしてくれる声ってあるんだなと思いました……」と感慨深げに語っていた。
演奏のためにオランダから駆けつけたユップ氏は「大好きな日本でここにいることが嬉く思い、名誉なことだと思っています。日本に来て音楽を演奏することで、映画を通じて観客の皆さんと絆が持てた。音楽を作るということは、そもそもそんなことがしたくてやっているんです。すばらしい経験をさせてもらっています」と笑顔で感謝の言葉を述べていた。