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2023年6月28日 17:00

水田航生インタビュー「日本のミュージカル界に新たな風を吹き込んでくれる」 ポルノグラフィティ新藤晴一が手がけるa new musical『ヴァグラント』

取材:撮影/RanRanEntertainment

ポルノグラフィティのギタリスト新藤晴一が初めて手掛けるオリジナルミュージカル、a new musical『ヴァグラント』が8月19日(土)から上演される。本作は、大正時代のある炭鉱のムラを舞台に、彷徨う(=ヴァグラント)ものたちを描く物語だ。今回、ランランエンタメでは、本作で炭鉱会社の新社長・弓削政則役を演じる水田航生のビジュアル撮影に密着。さらに、本作への意気込みを聞いた。(インタビューは今年4月に実施)

全身白のスーツ、オールバックというクールにキメた姿で撮影に挑んだ水田。カメラの前に立ってポーズを決めるも、「ちょっと渋すぎる?」とカメラマンやスタッフに確認する。「新社長だからフレッシュさもほしい」という要望が上がると、瞬時に笑顔を作り、雰囲気を一変させた。爽やかさと若々しさに溢れた社長へと一瞬でイメージを変える水田の姿は、さすがの一言だ。小道具の帽子を使ったポーズもバリエーション豊かに披露してみせ、この日の撮影を終えた。

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――水田さんは、ポルノグラフィティ、そして新藤さんの大ファンだと聞いています。そんな新藤さんのプロジェクトに参加されるということで喜びも大きいと思いますが、まずは、新藤さんへの思いを熱く語っていただければと!

いや、それはダメなんです。今日は言わないと決めているんですよ。WBCの決勝で大谷翔平選手が「憧れは捨てましょう」って言ってましたよね? 今日は、その心情で来ているので、憧れを言わないことにしてますから。憧れを話してしまうと、今日、目を見て話せなくなってしまいます(笑)。さっき、お会いした時も、僕の心の中の“リトル水田”が大騒ぎしちゃってましたから(笑)。僕の小中学生時代のバイブルなんです。それくらい、ポルノさんの歌は聞いていましたし、見てました。まさか僕にとっての憧れの方が作る曲を歌って演じることができるなんて、本当に夢みたいな企画で、それに参加できることが何よりも嬉しいです。

――4月に行われた日比谷フェスティバルのイベントでは、今作の楽曲の歌唱披露も行われました。楽曲の印象はいかがでしたか?

普通の楽曲は1曲で完結させますが、ミュージカルでは作品を通して完結させるので、1曲1曲にその人たちの日々の姿が(歌詞で)描かれていて、メロディーもそれに付随しているので、とても丁寧に作られているという印象がありました。

――そこに新藤さんらしさを感じましたか?

楽曲だけでなく、歌詞の言葉選びも晴一さんが書かれたんだなと感じるところがありました。僕のイメージだと、ポルノは優しい曲調でも王道に走らない歌詞が多いんですよ。斜に構えていたり、きれいすぎない言葉が使われていると思うんです。この「ヴァグラント」の楽曲も、そうした言葉選びを要所要所で感じます。

――いかにもミュージカルという楽曲だけでなく、誰にでも聴きやすい楽曲が揃っているように感じました。

確かに。ポップスをずっと作ってこられた方だからこそ、人の心をキャッチする、耳馴染みの良い曲を作ることに長けていらっしゃると思います。まさに、スーパースターだなと思います。

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――物語についてもお聞かせください。脚本を読んで感じた最初の印象は?

骨太な話だなと。大正時代の日本の炭鉱を舞台にしているのですが、男臭い世界観の中、その時代に生きてきた人々の姿が描かれています。そこに“マレビト”と呼ばれる芸能の民が現れて、物語が始まっていきます。すごくリアリティのある物語でありながらファンタジーの要素もあるので、どなたにも楽しんでいただける作品になると思います。

――水田さんはそんな作品の中で三ツ葉炭鉱の新社長・政則を演じます。理想に燃える若い社長であるけれども、会長である父親に逆らえずに思い悩んでいるという役だそうですが、どのように演じたいと考えていますか?

僕はこれまで熱血漢の役はあまり演じたことがなかったんですよ。どちらかというと、冷静であまり声を荒げることもないスッとした印象の役が多かったので、今回はカロリーを使うなと思いました(笑)。新社長に就任して、志を高く持って仕事に向かっていると思うので、その熱量を伝えられたらと思います。

――水田さんご自身は、あまり熱血漢タイプではないんですか?

僕は全然です。学生時代は、クラスの端にいて笑っているタイプでした(笑)。なので、今回の役は僕にとってもチャレンジですし、どこまで熱量を高く持って挑めるかにかかってくると思います。

――今回、ランランエンタメではビジュアル撮影にも密着させていただきましたが、撮影時には「躍動感を出す」ということを意識されていらっしゃいましたね。

そうなんです。新社長で志が高く、ピュアである人物なので、躍動感を出そうとなったのですが、難しかったですね。もう30歳を超えて、僕にはピュアさがなくなってきちゃったのかな(笑)。

――そんなことないです(笑)。その時に撮影された新ビジュアルもカッコいいですね。白のスーツという衣裳はいかがでしたか?

この役のために作ってくれたものなんですよ。とてもありがたいなと思いつつ、汚さないようにしないとなと(笑)。でも、このビジュアルを見ると、色々な衣裳の人がいるので、イマジネーションが膨らみますよね。どんな話なんだろうと期待を持っていただけたら嬉しいです。

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――今回は、これまでに共演経験のある方が多いのではないですか?

(山口)乃々華ちゃんと(廣野)凌大くん、美弥さん以外はみんな共演しています。なので、和気あいあいとした稽古場になるのかなと思います。

――『FACTORY GIRULS~私が描く物語~』に続き本作と、ミュージカル出演が続いていますが、ミュージカルに出演する楽しさ、魅力はどこに感じていますか?

ミュージカルにはエンターテインメントの要素が詰め込まれていると思います。よく感情が振り切れて、それを表すために歌ったり踊ったりすると言いますが、それほどの熱い感情が溢れている作品だということなので、観ている方もきっと楽しめるのではないでしょうか。ただ同時に、心の中の葛藤や不安を丁寧に表すことも大事だと思うので、そうしたお芝居の部分はミュージカルだから、ストレートプレイだからとくくらずに、しっかりと表現していきたいと思います。

――水田さんが初めてミュージカルって面白いと心の底から思ったのはいつ頃だったんですか?

出演していてそう思ったことはあまりないですね。難しいという思いの方が強いので。やらなければいけないこともたくさんありますし、繊細に、意識を注いで演じているので、面白いよりも、大変さの方が大きい気がします。ただ、こうして出演し続けているというのは、もちろん、楽しい、好きだという思いがあってのことですが。

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――なるほど。では、観劇する側としてはいかがでしょうか? ミュージカルを観るのは昔から好きなんですか?

はい、大好きです。ディズニーやジブリ作品もそうですが、エンターテインメント全般好きでした。中高生の頃には、学校の行事で舞台やミュージカルを観に行く機会があるじゃないですか。興味がないクラスメートが多かったと思いますが、僕だけ前のめりで観ていた思い出があります。能楽などの普段は観られない作品も観ることができて、すごく楽しかったです。

――そんな水田少年が俳優を志したきっかけは?

自薦ではなく、他薦でこの業界に入ったので、気がついたらやっていたというのが正直なところです。流れにそのまま乗っていたら、気づいたら東京に出てきて、気づいたらお芝居をやって、ミュージカルに出演させていただいて、それがもはや日常になっていて…。

――日常としてやってる中で、俳優としての自覚が芽生え始めたのはいつ頃だったのですか?

ミュージカルでは、(2013年に上演された)ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』に出演して、改めて「ミュージカルってこんなにも難しいんだ」ということを実感してからだと思います。自分は何もできないんだという悔しさを味合わせてもらったのが、この作品でした。そこからはミュージカルに対しての考え方も変わって、日々役者として自分をアップグレードできるようにと取り組んでいます。

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――ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』では、どんなところにミュージカルの難しさを感じたのですか?

1番は歌えなかったということです。当時の僕は、セリフを話しているのに、歌うシーンになると固まってしまって、突然歌い出してしまっていました。本当にうまい方は、セリフが自然と歌になるんですよ。その持っていき方が全く分からなかったんです。技術を身につけなくてはいけないと思いました。

――なるほど。

演劇では、(2015年上演の)白井晃さんが演出した『マーキュリー・ファー』というストレートプレイが大きな転機となった作品です。白井さんに、演じるということを根底から叩き直していただきました。そこからは、はっきりと自覚を持って芝居に臨めるようになったと思いますし、このままじゃ何者でもなくなってしまう、上を目指さなくてはいけないという強い思いも持つようになりましたね。

――当時の白井さんからの演出で印象に残っていることは?

1番覚えているのは、「外枠しかない」と言われたことです。何かを演じるにしても、外側だけで取り繕おうとしていたんですよね。お芝居は、人の感情を表すものなのに、表だけを見せていても何も伝わらない。悲しんでいる演技をしても、本当に悲しいと思っていなければ、観ている人にはその感情は届かないんです。お芝居に大切なのは「心」だと白井さんに教えていただきました。稽古が始まった頃は、「ねえ」というセリフ一言を2時間も稽古したんですよ。その「ねえ」を言うまでに、僕はその役についてどう考えて言ったのかが当時は、何もなかった。考えるのが当たり前ですし、台本を深く読まなければいけなかったのですが、それが全くできなかったんです。そうしたことを本当に事細かに教えていただきました。本番が始まってからもロビーで僕だけ稽古をしていただいたんです。それで、本当に役者とはこういうことを考えなきゃいけないんだというお芝居を教えていただきました。その後、(白井が芸術監督を務める世田谷パブリックシアター内にある)シアタートラムに出演したことがあったのですが、その時に白井さんがこっそり観に来られていて、終わってから楽屋にいらっしゃったことがありました。その時、お褒めの言葉をいただけて、やっていて良かったと報われた気持ちになったのを覚えています。

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――ありがとうございました!! 最後に、改めて本作の見どころを教えてください。

僕は「a new musical」という言葉は、すごく素敵だなと思っています。今、日本では、ブロードウェイや韓国ミュージカルなど、世界各国で作られたミュージカルが上演されるのが主流ではありますし、僕もそれらは大好きですが、やはり日本で作った素敵なミュージカルを上演したいという思いもあります。そんな中、日本の音楽を長年牽引してきた晴一さんが手掛けるこの作品は、きっと日本のミュージカル界に新たな風を吹き込んでくれると僕たちは信じています。その思いを持って、身を削って演じるので、ぜひ劇場でご覧いただけたら嬉しいです。

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a new musical「ヴァグラント」

【東京公演】2023年8月19日(土)~8月31日(木) 会場/明治座
【大阪公演】2023年9月15日(金)~9月18日(月・祝) 会場/新歌舞伎座

プロデュース・原案・作詞・作曲/新藤晴一(ポルノグラフィティ)
脚本・演出/板垣恭一
出演/平間壮一・廣野凌大(W キャスト)、小南満佑子・山口乃々華(W キャスト)、水田航生、上口耕平、玉置成実 /平岡祐太、美弥るりか他

HP/ https://vagrant.jp/

 

 

 

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