取材・撮影/RanRanEntertainment
映画『せかいのおきく』の公開記念舞台挨拶が4月29日(土)にTOHOシネマズ 日本橋にて行われ、主演の黒木華、共演の寛一郎、池松壮亮、眞木蔵人、そして阪本順治監督が登壇した。
本作は、声を失った武家の娘おきく(黒木)と雨宿りで出会った若者・中次(寛一郎)と矢亮(池松)が過酷な青春を共に駆け抜ける…。舞台は江戸末期。二人は江戸で糞尿を買い肥料として農村に持ち帰る下肥買いを生業としている。おきくは侍に切りつけられ父と自分の声を失ってしまう。これら厳しい現実にくじけそうになりながらも、心を通わせることを諦めない若者たちの姿を描き出す恋と青春の物語。
ロッテルダム国際映画祭での上映を皮切りに、ベルギー・ゲントのジャパンスクエア、韓国・全州国際映画祭、中国・上海国際映画祭など既に6カ国での映画祭での上映も決定した。
阪本監督は「3年前に一部を撮って、2年前に一部を撮って、去年京都で最後の60分を撮って、撮影日数が12日間。3年がかりで12時間撮った。エンドマークを作るところまでが目標だったんですが、こうやって日本でも公開されて、世界の人に見てもらえるってことは、制作当初は全く予想もしてなかったので、この展開は本当に嬉しく思うし、この映画の中にある人間の営みは、世界共通のものですから、ロッテルダムの反響を持っても、日本の皆さんと同じような受け止め方をしていただけるんじゃないかなと信じています」と感無量の面持ちだった。
また、黒木は「(海外の映画祭では)『ラブとホープが詰まった作品』という素敵な表現をしてくださったと聞いています」と喜んだ。阪本監督とともにロッテルダム映画祭に出席した寛一郎は「嗚咽している人がいたり、(画面がモノクロから)カラーに切り替わった瞬間が一番盛り上がっていたし・・・。直接的じゃなく婉曲的な恋愛がどう海外の人に見て伝わるのかが気になっていて、オランダの方にいろいろ聞いたら、文化は違えど恋愛の形として伝わっていたのがすごく嬉しかったです」と海外での反響を報告した。
本作がモノクロ映画であることについて、黒木は「完成した作品を見て、より色だったり、音だったり匂いが際立ってくるという感じがしました。モノクロだからこそ伝わるものがあるのかな、だから一瞬カラーになるところがより鮮明に残る」と表現した。
寛一郎は「普段見ている景色に色という情報が無くなるので、その分、多くを感じ取れる」との感想。
そして、池松は「(モノクロ映画出演という)願望は夢でしたね。モノクロ映画というと昔のものとされがちですけど、世界では技法も随分と見直されていて、日本ももっともっとモノクロ映画にトライすべきなんじゃないかと思っていました。なぜモノクロ映画にするかということが一番重要なことだと思うんですけど、こういう題材でモノクロ映画をやれたのはすごい嬉しかったです」と笑顔を見せた。
『モノクロの時代劇映画ではあるものの、青春モノの映画として胸がキュンキュンするシーンも多い』との感想も寄せられているという。その中に、おきくが『忠義』という字を書こうとして『(恋している)中次』と書いて、照れてジタバタするシーンがある。そのシーンについて黒木は「監督からジタバタしてくれって(笑)。恥ずかしくなっちゃうみたいのをやったんですけど・・・。ねっ」と監督に問いかけ、阪本監督は「『中次』と書いて、『ヤダぁ』とコケてって指示。コケ方は激しく!激しい方が僕は良かったので、僕は『もっと』って言いましたけど」と撮影時を振り返っていた。
イベント最後には、阪本監督が「繰り返し観てください。気に入った方は知り合いに勧めていただいて、知り合いの方には、『ハンカチを用意してください』とおっしゃってください。涙を拭くためではなくて(糞尿の匂いをこらえるため)鼻を抑えるというハンカチを」と笑わせた。また、寛一郎は「何年後もこの映画は残っていく映画だと思うのでよろしくお願いします」とアピール。そして黒木も「色々な方に観ていただける作品になったと思います。映画を愛している人たちが3年前から大事に大事にに作った映画です。皆さんの心に残る映画になったら嬉しいです」と呼び掛け、イベントを締めくくった。
映画『せかいのおきく』全国公開中
©2023 FANTASIA
配給:東京テアトル/U-NEXT/リトルモア
脚本・監督:阪本順治 企画・プロデューサー:原田満生
出演:黒木華、寛一郎、池松壮亮、眞木蔵人、佐藤浩市、石橋蓮司
公式サイト: http://sekainookiku.jp/