
映画『早⼄⼥カナコの場合は』の公開記念舞台挨拶が3月15日(土) 新宿ピカデリーで行われ、主演の橋本愛、共演の中川⼤志、⼭⽥杏奈、⾅⽥あさ美、そして⽮崎仁司監督が登壇した。
本作は、柚⽊⿇⼦の⼩説『早稲⼥、⼥、男』を映画化したもの。男勝りで過剰な自意識ゆえに素直に甘えることができず、本当は誰よりも純粋で不器用な主人公・早⼄⼥カナコ(橋本)の10年に渡る恋愛模様を中心に、彼女たちと周囲の人々が右往左往しながら各々が自分を見つめ直していく姿が描かれる。
まず、橋本は客席を見回しながら「皆さんのどことなく明るい表情を見て少し安心するような気持ちです」と前置きしつつ「私が演じたカナコは男性恐怖症で、本来の自分らしく生きていないようなすごく不器用な人。何周も何周も遠回りして生きる姿がすごく愛おしく、私自身もすごく重なるところがあって、共感しながら演じた役でした。なので、カナコの生き様が魅力的に映ったり、心に残るものであるなら、私自身救われるような気持ちです」と訴えていた。
長津田を演じた中川は「僕自身がたくさん入っているキャラクターになっていると思います。彼はすごく不器用で、人間くさいというか、弱い部分を軸に、彼のことを作っていった感じです。僕もどんどん彼を好きになって、一心同体になっていきました」とコメント。
前日には、第48回日本アカデミー賞の授賞式が行われ、新人俳優賞と優秀助演女優賞を受賞した山田は「あのきらびやかな場所で緊張しました。やはり映画に出るのっていいなということをすごく感じた一日で。幸せでした」と感慨深い様子で語ると、会場からは祝福の拍手が送られた。
山田は「(自身が演じた)麻衣子は爽快な女性。最初、自分の価値は男性にモテるとか、可愛いというところに置いていた麻衣子が、自分自身の中に自分の魅力を見いだせるようになってくるところがすごく素敵な成長と思いながら演じました」と話し、役作りについて「前半は、麻衣子自身可愛く見せようと、服装もすごく動きにくい丈の短いのを着たり、それがだんだんテロンテロンのTシャツとかになって、自由にふるまえるというのがすごく良かったです」と振り返った。
橋本は山田について「ずっと(山田の)ファンだったので、一緒に共演できてうれしかった。だから私が山田杏奈さんを可愛いと思う気持ちと、カナコが麻衣子に対して思う気持ちと重なるような気がしました。ただ難しかったのは、お互いに同じ相手を好きな同士なんですけど、お互いがお互いをエンパワーメントしあう関係。カナコを演じていて、麻衣子にとって、ちゃんと魅力的な人に見えているのだろうかという不安があって、麻衣子からどう見られているんだろうと考えながら演じていました」と語った。
慶野亜依子を演じた臼田は「亜依子という役は、いつも準備をしていて、未来をちゃんと描き、一つひとつの目標を持って着実に歩いてきた人なんだろうと思って現場に入ったら、カナコの力がすご過ぎて、私が思ったよりちゃんと立てなくなって、足元がグラグラするみたいな気持ちにさせられた」と橋本との共演を振り返った。
3月は卒業シーズン。4月になったら入学、入社を迎え、新しいことにチャレンジする人も。そこで、イベント後半は、これからチャレンジしようと思っていることを発表。
はじめに「けんちん汁」と回答した中川は「ご存知のとおり、けんちん汁って美味しいですよね。最近、自分の通っているジムの食堂で食べたけんちん汁をすごい美味しくて、豚汁を作ったことはあるんですけど、けんちん汁って意外と作ったことないので、研究して、あれを超えるけんちん汁を作りたい」と、その意味を説明した。
続く山田は「日記」と答え、「(本作の)登場人物が日記をつけているし、私は何度もトライして、何度も断念している。忘れちゃうし、途中で終わりにしちゃうんです。もう1回書き始めようというのを、毎年この時期ぐらいに・・・。これが遺品として残って見られるのが恥ずかしくなるんです」と話し、笑いを誘っていた。
さらに、臼田は「百名山」と回答。「山はたまに登るんですけど、登っているというほどの山に登っていなくて、ハイキングと登山の間ぐらいの軽めなもの。百名山は筑波山だけ登りまして、岩山を頑張って登って、ちょうどいい疲労感と、山頂では素晴らしい景色が見れたので、これからいっぱいチャレンジしていきたいなと思います。私は体力が全然ないんですけど、それでも景色と自然に囲まれて気持ちよく登れる」と登山の魅力を語ると、中川が「気持ちよさそうですね。ポットにけんちん汁を入れて飲めたら最高ですね」と羨ましがった。
最後の橋本は「ヒップホップダンス」。「元々、踊ることをすごい好きで、コンテンポラリーという分野はやっていました。今は、ヒップホップと日本舞踊。いろんな踊りの習いごとを始めていて、すごく楽しんでいます」とチャレンジ半ばであることを明かした。「創作はするんですか?」の問いかけには「基礎練が大好きな人間なので、ずっとリズムトレーニングをやっています」と答えた。
イベント最後は、お客様へのメッセージ。山田は「カナコたちの人生を通して、自分自身はどうやって生きていこうかと顧みることができるような映画で、すごくハートフルな作品。素敵だと思ったらぜひ周りの方にも広めてください」、臼田は「この映画を観たときに、誰のことも嫌いになれなくて、みんなダメなところがあって、でもたまらなく魅力的なところもあって、『全員抱き締めてやりてえ』気持ちになったんですけど、そんな風にこの映画を愛してくれたら嬉しいです」とアピール。
中川は「観てくださるお客様と、この映画の中の世界が地続きであってほしいなと思いながら(この作品を)作っていったんですけど、完成した作品を観て、やはり映画って特別な、魔法というか映画の中にしか流れない時間というものがあるなと感じました。皆さん も日々めまぐるしく、追われることもあると思うけど、映画館は誰にも邪魔されずに、2時間暗いところで座れますので、また観たくなったら観てもらえたら嬉しいですし、忘れないでいただけたらと思います」、そして橋本は「自分では欠点だな、人間的に未熟だな、ダメだなと思っているところも、それ自体が美しかったり、愛おしかったりと描かれている映画って、私は好きです。キャラクターみんなが可視化されていて、矢崎監督の目線を含め、すごく好きな映画になったので、辛口でもいいのでぜひ投稿してください」 とメッセージを送った。
さらに、矢崎監督が「ラストシーンを未完のように思う人もいるかもしれませんが、ラストシーンの続きは皆さんにバトンタッチをしたいと思います。ここにいる新しくできた友だちを、周りの人に紹介するような形で、この映画を薦めていただけたら。元気がなくなったら、この人たちに会いに来てほしいと思いますし、そんな映画にしたつもりです」と呼びかけ、イベントを締めくくった。
映画『早乙女カナコの場合は』 全国公開中
配給:日活/KDDI ©2015 柚木麻子/祥伝社 ©2025「早乙女カナコの場合は」製作委員会