
映画『港のひかり』ジャパンプレミアin輪島 ~能登に元気を~ が10月18日(土)に石川県輪島市の日本航空高等学校で行われ、主演の舘ひろし、共演の眞栄田郷敦、尾上眞秀、黒島結菜、斎藤工、笹野高史、そして藤井道人監督が登壇した。
本作は藤井監督とキャメラマン・木村大作が初タッグを組ん完全オリジナル作品で、北陸の港町を舞台に、おじさん(舘)と幸太(少年期:尾上、青年期:眞栄田)との年の差を超えた、十数年の友情を描いた感動エンタメ大作となっております。
2023年11月〜12月まで長期にわたって石川県、富山県を舞台に撮影を敢行。輪島市にも何度も訪れ、多くの地元の方々の協力を経て、本作の完成に至った。舞台挨拶の会場には、本作を心待ちにする700名近い来場者が詰めかけた。
主人公の元ヤクザの“おじさん”を演じるのは7年ぶりの単独主演作となる舘ひろし。歌舞伎界の新星として注目を集める尾上眞秀が盲目の少年・幸太を、成長した青年・幸太を人気と実力を兼ね備えた眞栄田郷敦がそれぞれ演じる。

舘は「本作のプレミア上映はこの輪島でやりたかったんです。輪島での上映が実現して本当に良かったです」と今の率直な心境を打ち明け、眞栄田も「(輪島には)昨日からお邪魔させていただいていますが、接してくださる皆様から力をもらうことばかりで。皆様の声がパワーになりますし、この映画が少しでも皆さんの力になれば嬉しいなと思います」と思いを寄せた。
斎藤は自身発案の移動映画館「cinéma bird(シネマバード)」の上映会で奥能登へ訪れていたそうで、「もしかすると仮設住宅からいらした方もいるかと思いますが、震災後にあった豪雨の被害も他県には届いていないくらい厳しいものが未だにあって、実際に来てみないとわからないことが多くありました」と気づきも多かったという。「自分より大変な人に対して、“あの人がもっと大変だから、自分は大丈夫”という方たちばかりで。そんな奥にあるSOSを関わった人間としてキャッチすべきだなと思いますし、(舘演じる)三浦はまさに他者を自分以上に深く思うということを体現している人物です。この映画が輪島を中心に作られることが必然だったなと、皆さんの顔を見ながら感じています」と自身の思いを告白していた。
震災後に舘が能登で行った炊き出しに加わったという笹野は「無理やり僕も(能登へ)連れていってもらったんですが、皆さんの方から“ありがとう”という色紙をいただいたりして。逆に勇気づけられたと言いますが、たくさん元気をいただきました。あの時作った焼きそばを食べてくださった方もいたりするのかな。その節は本当にありがとうございました」とお礼を述べた。そして藤井監督は「1ヶ月以上の期間、撮影準備から街の方々にご協力いただきました。今日は朝市通りを歩きながらたくさんのエキストラの方に協力していただいたことなどいろんなことを思い出しながら、街の皆さんのおかげでできた映画だなと感じました」としみじみ振り返っていた。
今回7年振りに映画単独主演を務めた舘は、企画の立ち上げから本作に参加。「いろんな企画がありましたが、僕はやっぱりヤクザものがやりたくて。最初はなかなか思い通りにいかないこともありましたが、最終的にはこのような素晴らしい物語になって良かったです」と手応えをにじませた。

幸太の青年期を演じた眞栄田は「舘さんと出会って、男としても役者としても、本当に価値観が変わりました」と告白。「今回は舘さんが主演ということで、言葉以上に“主演はこうあるべき”というのを背中で見せていただいたなというのは感じました。気配りや優しさ、ユーモアもあって、本当に素敵な方だなと改めて思いました」と愛を垣間見せる眞栄田の言葉に、舘も思わず「ありがとうございます」と照れくさそうにはにかんでいた。

幸太の少年期を演じたのは、本作で映画初出演を果たした尾上。心に深い傷を抱えた盲目の少年という難役への挑戦となったが、撮影の思い出について「スタッフさんの皆さんと関わることができて楽しかったです」と微笑ましい思い出を振り返る一方、「監督と(キャメラマンの)木村大作さんと攻防していて…」と証言。藤井監督は「自分も来年で40代に入り、これから自分が映画業界でできることはなんだろうと考えた時に、先輩たちから教わること、この映画のテーマにもなっている“継承”ということがあって。リスペクトして尊敬して学んでいく、それを下の世代に伝えていくということをやりたいと考えていたので、この攻防は必然だった。とても実りのある時間でした」と心のうちを明かしていた。

大人になった幸太の恋人役を演じた黒島は「藤井監督の現場は何度もじっくり1つのシーンを作り上げていく。それはキャストだけではなくて、美術もそうですし、ちょっとした小道具やセットを用いて、1つ1つを大事にしているのが藤井組だなと。藤井監督の作品は毎回とても楽しいです」と語り、微笑んでいた。

三浦と対峙するヤクザ役にも豪華俳優がキャスティング。河村組組長・石崎の舎弟で三浦に敵意を見せる八代を演じたのは、斎藤工。髪型は両サイドを刈り上げ、眉毛は剃り落とすなど徹底した役作りで本作の撮影に挑んだ斎藤だが「藤井監督の作品で(木村)大作さん、そして舘さんと、とてつもない現場に立ち会えるという興奮の中で、もう喰らいつくしかないと思って」と喜びを表現。「監督から(自身が演じる)キャラクターのイメージについてアドバイスをいただいて、眉毛も剃ったりしたんですが、剃った後に生えてこない場合もあると聞いて…でもかろうじで生えてきて良かったです(笑)」とまさかのエピソードが披露した。
そして藤井監督は主演を務めた舘とは『ヤクザと家族-The Family-』以来のタッグとなったが、舘について「まるで父のよう」と表現。「本当に優しくて、たくさんのことを教えてくださるんですよね。石原プロ時代のモノづくりの話や、大変面白い映画体験を優しく教えてくださって。今回も楽しかったなという思いでしかないです」と感謝の言葉を寄せた。一方、本作で初タッグとなった眞栄田については「10代の頃から注目していて、いつかご一緒できればと思っていました」と告白し、「こんなに達観していて頭が良い20代の俳優はいないです。真面目で優しくて、でもヤンチャで。次はどんな役でオファーしようかなと日々悩んでいます」と太鼓判を押していた。

さらにイベントの終盤では、輪島市長・坂口茂から花束の贈呈が行われた。代表して舘が花束を受け取ると、坂口市長は「この映画の中では震災前の美しい北陸の情景がたくさん収められていると聞いております。昨今では珍しい35mmのフィルムカメラで収められていると聞いているので楽しみです」と映画への期待を寄せながら、「昨年の能登半島地震、そして豪雨によって撮影された場所も大きく被災し、甚大な被害を受けております」と今の被災地の現状を説明する。「メインの舞台となった大沢漁港も地震と豪雨で被災が大きく、大沢町もまだまだ復旧復興の途中ではありますが、この映画が大沢地区をはじめ輪島市、そして能登地域の復旧復興の大きな光となることを願っています」と思いを明かすと、会場からは温かい拍手で包まれた。
映画『港のひかり』 2025年11月14日(金) 全国公開
配給:東映 スターサンズ ©2025「港のひかり」製作委員会

