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2012年4月10日 03:33

『道 ‐白磁の人‐』 マスコミ試写会にて

2002年の日韓共同開催サッカーワールドカップ以降、『冬のソナタ』、『シュリ』を代表する韓国ドラマや韓国映画、K-POPなどを中心にした韓国大衆文化、そして、ジャニーズに代表されるアイドルのドラマや日本映画、J-POPなどの日本大衆文化を通して、双方の文化交流が盛んに行われるようなってきた。当初、日本では「この韓流ブームはいつまで続くのか?すぐ下火になるのでは?」と懸念されていたが、そんな猜疑心はどこへやら、その韓国大衆文化は今も衰えることなく、その地位を日本の文化のなかで確立し、維持し続けている。

飛行機に乗ってしまえば、2時間ちょっとで、韓国に到着する。それぞれの国を訪れる観光客も年間200から300万人に達しようとしている2012年の現在では、本当に近い国になった韓国と日本。

いまや、何の抵抗感もなく、韓国語を学ぶ日本人、日本語を学ぶ韓国人が多い。そして、韓国人、日本人、それぞれが国籍の違う日本人、韓国人の友達関係を築いている。

(C)2012「道〜白磁の人〜」フィルムパートナーズ

しかし、この映画『道 ‐白磁の人‐』の主人公である「浅川巧」、そして彼と国籍を越えた友情を育んだ「イ・チョンリム」が生きた時代はいまとはまったく逆の時代だった。浅川巧が京城(現ソウル)に降り立った1914年は、日清日露戦争に勝利した日本はアジアの大国と自国を評価し、当時の“朝鮮”を無理やり日本統治下にした。そして、“朝鮮人”と蔑み、彼らに日本文化を無理強いした時代だった。

そのような時代でも、浅川巧は言葉や白磁を代表とする“朝鮮”の民族文化を高く評価し、同僚であるイ・チョンリムと深い友情を築き上げようと努力し、周囲の“朝鮮人”にも温かい心で接していた。けれども、時代は浅川巧のその思いを簡単には許さない。「日本人と朝鮮人がお互い分かり合えるなんて、見果てぬ夢なのだろうか…。」と気落ちする浅川巧に、イ・チョンリムは「たとえ、夢でもそれに向かって行動することが意味あることでしょ。」と励ます。

お互いを理解し合おうと努力する二人に時代は試練を与え、二人の関係に数々の壁が立ちはだかる。それでもなお、イ・チョンリムを思い、周囲の“朝鮮人”を思い続けた浅川巧。そして、その思いに応えるようになるチョンリムたち。その浅川巧の思いは、いまや韓国の土に眠る彼を韓国人の手で守られているという現実で明らかに引き継がれている。

この『道 ‐白磁の人‐』を観ながら、今、韓国や日本にいる韓国人の友達を思った。

私が生きるこの時代は浅川巧が生きた時代より、お互いを認め合い易い環境にある。確かにこれまで生まれ育った環境が違う分、時には意見が対立することもある。しかし、どちらかの意見を押し付けあうのではなく、お互いを尊重し合えば、どこかに“道”は開けるのではないか。この絆を大切にしていきたいとも改めて思った。そして、このような韓国人と日本人の真からの友情がさらに深く、広く浸透することを願った。

また、ぜひ、韓国に行った際には、白磁などの韓国工芸文化にふれてみる機会を得てほしいとも思う。それら陶磁器が持つ凛とした姿と同時に温かみがある姿も良いものだ。

『道 ‐白磁の人‐』は決して派手な作品ではない。でも、浅川巧、イ・チョンリムや白磁を代表とする“朝鮮”工芸文化を通して、友を思い起させられる映画だった。それは、2時間、時には心痛く、時には心温まる作品だ。

なお、プレミア試写会が4月23日(月)駐日韓国大使館 韓国文化院 ハンマダンホールにて、主演吉沢悠、ペ・スビン、高橋伴明監督、エンディングテーマを担当したハクエイ・キムが登壇予定のプレミア試写会が開かれる。韓国ロケでは苦労があったようだ。そこで披露される撮影秘話なども期待される。

6月9日(土)新宿バルト9、スバル座、ほか全国ロードショー 公式HP http://hakujinohito.com

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