2012年5月10日(木)、横浜の関内にあるmass×mass関内フューチャーセンターで「台北カフェ・ストーリー」の横浜特別試写会が開かれた。すでに六本木シネマートで公開されている本作品であるが、なぜいま試写会かと言うと、カフェが舞台のこの映画を実際にカフェで上映しようという企画のもと、カフェ経営者たちが集まり、今回の試写会が催された。配給会社の関根健次氏からは「昨年の東日本大震災を機に改めて本当に大切なものは何なのかを考えさせられました。いまだからこそ、この映画を皆さんに観ていただきたい。そして、舞台であるカフェで上映したい。」と本作品に対する熱い思いが語られた。合わせて“物々交換”の一つ、本と名刺の交換会「ブクブク交換」も開かれた。なお、この「ブクブク交換」は4月に六本木シネマートでも開催されている。
“優雅なカフェ”。ドゥアル(グイ・ルンメイ)はOLを辞めて念願のそんなカフェを妹のチャンアル(リン・チェンシー)と共に開くため奮闘。それは夢のカフェ。カウンターや椅子、内装の細部までにこだわり、コーヒーの香り、お手製のデザートまであらゆるものに思いを込めるドゥアル。いよいよ開店の日、多くの友人がプレゼントを持って祝いに来る。しかし、その後、客足が鈍り、「こんなはずじゃ…」と落ち込むドゥアル。せっかくの開店祝いのプレゼントもドゥアルの目にはただの“ガラクタ”にしか映らない。そんなとき、奔放なチャンアルがあることを思いつく。“物々交換”だ。日本の民話の「わらしべ長者」で有名な“物々交換”。チャンアルは最終的には車が欲しいという思いで。
やがて、いろいろな“もの”がカフェに集まってくる。そして、それらの“もの”たちは“物々交換”を通して、別の人に引き取られていく。“思い”とともに。このアイデアが話題となり、カフェには“もの”だけではなく、多くの“人々”も集まり、心を通わせていく。
ある日、1人の男性が世界の35都市で集めたという35個の石鹸を持って、カフェに現れた。そして、一つ一つその石鹸が持つ物語を語っていく。そして、このミステリアスな物語と男性にドゥアルは心惹かれていく。石鹸がそれぞれ物語を持っているように、カフェに集まった“もの”にもそれぞれ物語がある。その物語はつまりは“もの”の“価値”そのもの。そして、その“価値”は“人の心が決めるもの”だと分かり始める。つまり、この“物々交換”により、ドゥアルとチャンアル姉妹自身の“価値観”も変わっていく。「本当に大切なものは何?」と。そして、ドゥアルはある思いにたどり着く。“私自身の物語りが欲しい…。”
皆さんも部屋の中を見回してみたら、多くの“もの”があるだろう。一つ一つにきっと“物語”があるはず。中には“大切な人にもらった一番大切なもの!”“小さいときからずっと持っているもの”たとえ、衝動買いした“もの”でも、買ったときは“かわいい!”“これいい!”って思ったはず。それも“思い”だ。
人は皆、誰もがいろいろな“思い”が詰まった“もの”たちに囲まれて生きているのだ。そのなかでも、“本当に大切なもの”が過去のあなたを、今のあなたを支え、そして未来のあなたを支えていくのかもしれない。台北にある一つのカフェを舞台にし、全編を通して、流れるピアノの調べが本作品に“オシャレ感”と“優雅さ”をくわえ、まるで、コーヒーの香りが漂ってくるようだ。「あなたにとって、一番大切なものは何ですか?」そんな問いかけに真剣に思いを馳せる映画だ。そして、“私だけの物語を紡ぎだそう”と思いになる映画だ。
本今作品の監督シアオ・ヤーチュアンはトリノ映画祭で新人監督賞に輝き、『ミラー・イメージ』(2001)に続く、長編2作目だ。そして、『悲情城市』(1989)でヴェネツィア国際映画祭でグランプリを受賞したホウ・シャオシェンが彼を全面的にバックアップする。主演のグイ・ルンメイ、リン・チェンシーの若々しい演技や中孝介の歌声もこの映画の魅力の一つだ。
5月18日(土)まで六本木シネマートで絶賛上映中。
5月12日(土)より横浜のブリリア ショートショートシアターで公開。
監督・脚本:シアオ・ヤーチュアン
製作総指揮:ホウ・シャオシェン
キャスト:グイ・ルンメイ、リン・チェンシー、チャン・ハン、中孝介(特別出演)
製作:BITプロダクション
配給・宣伝:ユナイテッドピープル