ベルリン国際映画祭が開幕!シネフィルは知っておきたい
世界3大映画祭を制覇した ナンニ・モレッティ監督の功績
カンヌ、ヴェネチアと並び、世界3大映画祭と呼ばれる第66回ベルリン国際映画祭が遂に開幕!国際的に権威のある映画祭で85年『ジュリオの当惑(とまどい)』で審査員グランプリ賞を受賞したのがイタリア人監督のナンニ・モレッティ。世界でも数少ない、三大映画祭を制覇した巨匠のひとりだ。監督作品では脚本も書き、主演を務めることもある。癖のあるユーモラスな作風で世界中のファンを魅了し、ナンニ・モレッティの功績をこの機会に振り返ってみたい。
北イタリア出身のナンニ・モレッティは1976年に最初の長編映画『Io sono un autarchico』を映画監督デビュー。翌年俳優として出演した映画『父/パードレ・パドローネ』(77)がカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、世界3大映画祭に愛される男の快進撃はここから始まる。81年に公開された『監督ミケーレの黄金の夢』は監督作品3本目にも関わらず、ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞。そして先述のとおり、85年に『ジュリオの当惑(とまどい)』でベルリン国際映画祭にて審査員グランプリ賞を受賞する。その後しばらく、映画祭では見かけなくなるが、8年後に『親愛なる日記』(93)でカンヌ国際映画祭監督賞を受賞した。この時、ナンニ・モレッティは若干40歳、さらに監督作品10本未満で世界3大映画祭を制覇。名実ともにイタリアを代表する巨匠に躍り出た。
そしてナンニ・モレッティ監督作品の中で一番多くの人の心に記憶される事になるのがカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『息子の部屋』だろう。カンヌ国際映画祭で上映された際には、割れんばかりの拍手が長時間にわたって鳴り響き、アカデミー賞作品賞も授賞した。同作品はイタリアで大ヒットを記録し、日本でもナンニ・モレッティの代表作として映画ファンの中で、その名を刻むことになった。
そしてカンヌ国際映画祭のパルム・ドールにノミネートされた『ローマ法王の休日』(12)を経て、4年ぶりとなる満を持しての公開となる最新作が、仕事に生きてきた娘と余命僅かの母親の交流を中心に家族の絆を描いた感動作『母よ、』だ。本作でも2015年カンヌ映画祭コンペディション部門エキュメニカル審査員賞受賞、さらに仏カイエ・デュ・シネマ誌が選ぶ2015年映画第1位に選出された。ナンニ・モレッティのその独特のユーモアも健在の本作だが、一番の特徴は本作が監督自身の自叙伝的映画となったことだろう。主人公の女性映画監督に自身の監督としての姿を重ね、さらに『ローマ法王の休日』撮影中に自身の母親を亡くした経験が反映された本作は、そのリアルな描写に心が締め付けられながら、静かな感動が広がる傑作となった。
映画『母よ、』は3月12日(土)、Bunkamuraル・シネマ、新宿シネマカリテほかにて全国公開。
<STORY>映画監督のマルゲリータは恋人ヴィツトリオと別れ、娘のリヴィアも進路問題を抱えている。さらに兄と共に入院中の母親・アダの世話をしながら、新作映画の撮影に取り組んでいるが、アメリカ人俳優バリー・バギンズが撮影に参加した途端、思うように撮影が進まず、大きなストレスを抱えるように。そんな中マルゲリータは病院から母親の余命宣告を受けてしまう。何の助けにもなれない自分を嘆き、母が研究や仕事に捧げた年月が死によって無になると悲しむマルゲリータ。しかし、母はある“贈りもの”を遺してくれていたー。
監督:ナンニ・モレッティ 『息子の部屋』『ローマ法王の休日』
出演:マルゲリータ・ブイ 『はじまりは五つ星ホテルから』 『夫婦の危機』ジョン・タトゥーロ 『ジゴロ・イン・ニューヨーク』 『ビッグ・リボウスキ』ナンニ・モレッティ 『息子の部屋』 上映時間: 107分 字幕:岡本 太郎
コピーライト:© Sacher Film . Fandango . Le Pacte . ARTE France Cinéma 2015 配給:キノフィルムズ