2016.03 取材:記事・写真/RanRan Entertainment
『猟奇的な彼女』(01・韓国)、『僕の彼女はサイボーグ』(08・日本)で知られるクァク・ジェヨン監督の新作『更年奇的な彼女』(中国)が公開! “アジアの彼女三部作”の完結編となる今回のヒロインは、恋人にフラれたことが原因で若くして更年期になったのに、それでも忘れられずに元恋人の略奪を試みる破天荒なキャラクター。中国で大ヒットを記録した本作を引っさげて来日したクァク監督に、作品について聞いてみました。
――監督にとって初の中国映画ですが、中国でメガホンを取ることになった経緯を教えてください。
じつは以前、中国で2作ほど進めていたのですが、どちらもうまくいきませんでした。映画を作るのは簡単ではないな、と改めて実感したんです(笑)。そんなとき、中断した1作目に出演していた俳優がこのシナリオを持ってきてくれました。そこには、若年性の更年期障害になる風変わりなヒロインと、彼女に尽くす男性の愛が描かれていたんです。それを見て、私の作風をうまく見せることができそうだと思い、私の中国デビュー作にすることにしました。
――“若年性更年期障害”が出てきますが、そういう症状のことをご存知でしたか?
更年期障害は知っていましたが、若年性というのはこのシナリオで知りました。中国でも、更年期障害は知られていましたが、若年性更年期障害、中国では「早更」というのですが、この言葉はこの映画がきっかけで知られるようになったんですよ。
――監督の奥さまも更年期障害を経験されたと資料にありましたが?
そうなんです。妻の様子を見ていたのでヒロインの症状を描写するうえで助けになりました。じつは『猟奇的な彼女』の頃から、妻からいろいろなアイディアをもらっているんです。例えば、『猟奇的な彼女』で、男性主人公(チャ・テヒョン)が、泥酔したヒロイン(チョン・ジヒョン)をおぶったり、安宿であれこれ持ってこいと言われて奔走したり、ハイヒールとスニーカーを取り換えて履かされたりするシーンがあるのですが、妻と私の実際のエピソードがもとになっているんですよ(笑)。
『猟奇的な彼女』も『僕の彼女はサイボーグ』も男性主人公には僕の姿がかなり投影されていますね。私の母や知人たちからも「あなたの姿にそっくり」と言われます(笑)。もちろん、今回の『更年奇的な彼女』のユアン(トン・ダーウェイ)にも僕の姿が入っています。
――“彼女三部作”のヒロインはみんな強いですが、そういう女性が好きなんですか?(笑)
そういうわけではないのですが(笑)。強い女性でありながら、その心の中に痛みを持っている女性を描くのが好きなんです。実際のところ、あまり気の強い女性は好きではないです(笑)。
――強い女性と、それを支える男性が出てくるのが“彼女三部作”ですが、3作を通して監督がもっとも描きたかったことはどんなことですか?
“自分の近くにいる人こそ自分が本当に愛すべき人だ”ということを伝えたいと思いました。普段とてもそばにいて優しくしてくれるのに、一緒にいて楽なので気づかなかったりする。ところが、その人が自分から去ってしまったときに、やっとその人の愛を知るということもあるんだよ、と。
――今回の『更年奇的な彼女』では強いヒロイン役をジョウ・シュンが好演していますが、実際の彼女も役のキャラクターのように強い女性ですか?
いえいえ、彼女はとても気さくな人で、スタッフ1人1人を気遣ってくれました。周りで誰かがぶしつけに写真を撮っているのを見つけて、自ら「撮らないで!」と注意したりしていましたね(笑)。トン・ダーウェイさんも、見た目はちょっとクールですが、すごく優しくて気配り上手な人なんですよ。
――役作りや演技への取り組み方で、中国と韓国の俳優で違い感じることはありましたか?
ジョウ・シュンさんもトン・ダーウェイさんも中国の人気俳優ですが、素晴らしい俳優というのは国を問わず同じだなと思いました。いい俳優は、作品に臨む姿勢がとても真摯ですし、監督にもきちんと確認しながら撮影します。また、何か一つ設定するにしても周りの環境まで考慮してくれたりしますね。
――監督は日本映画も手がけられていますが、日本映画についてはどう思いますか?
日本映画は、オリジナル脚本の作品があまりないなと感じます。韓国も中国も、原作に頼らずに、いいストーリーがあればそれをオリジナル脚本にすることが多いのですが、日本は人気の高い小説やドラマ、漫画などがありきで、その次に映画という感じになっているのでちょっと残念に思います。やはり、オリジナル脚本もとても大切なものだと思うので
――今夏、日本で公開が予定されている監督の新作は日本映画『風の色』で、オリジナル脚本ですね。この作品はエキセントリックな登場人物ではなく、静かな作品のようですが、どんな内容ですか?
北海道を舞台にしたラブストーリーです。世の中には自分に似た人が3人はいて、その人と出会ったらどちらかが消えなければいけないというドッペルゲンガーをテーマにしています。ドッペルゲンガーというと恐怖や暗いイメージがあるかもしれませんが、今回はプラスにとらえて描いたので、今までとは違うドッペルゲンガーの物語になっていると思います。そして、主演の古川雄輝さんが本当に魅力的なんです。たぶん、彼はこの作品でまたブレイクするのではないかと思います(笑)。
Story
チー・ジア(ジョウ・シュン)は、大学の卒業式の式場で、恋人リウ・チョン(ウォレス・チョン)にサプライズでプロポーズ。ところが断られてしまい、これがトラウマとなり、若年性更年期障害と診断されてしまう。そんなとき、大学同級生ユアン・シャオオウ(トン・ダーウェイ)が現れ、同居人として暮らすことに。リウ・チョンを忘れられないチー・ジアをユアンは優しく支えるが、チー・ジアはユアンのことを男性としては見ていなかった。やがて仕事で上海へ転勤することになったユアンを冷たく送り出したチー・ジアだが、ようやくユアンへの自分の気持ちに気づき…。
チー・ジア役は『小さな中国のお針子』のジョウ・シュン、ユアン役は『レッドクリフ』シリーズのトン・ダーウェイ。日本語吹替版ではチー・ジア役を藤原紀香が担当。
『更年奇的な彼女』
4月8日(金)より、TOHOシネマズ日本橋、新宿ほか全国公開
■監督:クァク・ジェヨン
■出演:ジョウ・シュン、トン・ダーウェイ、ジャン・ズーリン、ウォレス・チョンほか
■2015年/中国/100分
■配給:アジアピクチャーズエンタテインメント/エレファントハウス/カルチャヴィル
(C) New Classic Media Corporation CJ Entertainment Japan
公式HP:kounenki-girl.jp
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