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2020年10月3日 07:00

お笑い芸人“まんじゅう大帝国”竹内一希&田中永真インタビュー 映画『実りゆく』で芸人たちが魅せる1人の芸人の人生

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

未だ存在しない映画の予告編だけを制作し、グランプリ受賞者には映画化の権利が与えられるという「MICAN 未完成映画予告編映画大賞」の第3回大会に出品され、“堤幸彦賞”と“MICAN男優賞”を受賞した作品が『実りゆく』と題して映画化され、109日(金)より公開される。

本作は、芸能事務所タイタンのマネージャーである八木順一朗が企画・監督し、若手漫才コンビ“まんじゅう大帝国”の竹内一希が主演を務める異色作。長野県で農業を営む傍ら、芸人として活躍する松尾アトム前派出所をモデルに、りんご農家と芸人という夢の間で苦悩する主人公・実と彼を取り巻く人間模様を描く。

主人公・実を演じたまんじゅう大帝国の竹内と、実と同郷で同じくお笑い芸人を目指すエーマ役を務める、まんじゅう大帝国の田中永真に撮影時の思い出や本作の見どころを聞いた。

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竹内一希    田中永真

――最初は予告編を撮影するということでご出演されたんですよね? お話を聞いた時、どんなお気持ちでしたか?

竹内:「コンテストに出す作品を撮ろうと思ってるんです」というのを八木マネージャーから聞いたのが一番最初だと思います。八木さんは実は映画監督になりたかったそうなんですよ。それで、コンテストに応募することにしたらしいのですが、「予算もないんで、今回は自分のところのタレントで撮ってみます」という意図で応募作品を作るというので、じゃあ、やりましょう、と。いつもお世話になっていますので。

田中:素直に、すごい面白い企画だなとも思ったんです。物語のモデルの松尾さんは、僕たちにとって大好きな先輩芸人ですし、よく考えてみたら「長野でりんご農家やりながら仕事がある時だけ東京に出てきて芸人してる」っていう経歴が変じゃないですか(笑)。そんな方を題材にしてるんだから、面白くなりそうって。

竹内:作品になり得る人なんですよね。

田中:そうそう、ああ、面白いこと考えるなぁって感じで参加したんです、予告編は。

竹内:予告編の段階では、芸人を売ろうとしているのを感じたんですけど、その後、だんだんと監督として売れようとしてるな、とはね()

田中:どうやら自分を出してきたぞっていう()

竹内:あれ、もしかして、僕らは踏み台なのかなっていうのが、にじみ出てくるのがその後にあって(笑)、それで賞をいただいて…。

田中:でも、本当にきちんとした映画を作るとなった時には、きちんとした俳優さんを使って撮影すると思っていたので、僕らが出ると聞いて、「いいの、僕らで?」ってこっちが驚いたよね。大勝負をするなって(笑)。

竹内:予告編まではお手伝いしますと思っていましたが、映画となると、僕らはもう邪魔なんじゃないかって気持ちはありましたね(笑)。

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――とはいえ、悩みながらも夢に向かって進んでいく芸人という役柄は、芸人だからこそ共感できたのではないですか?

竹内:いや、共感できる部分はないですね(苦笑)。そもそも、僕は東京生まれ、東京育ちですし。

竹内:真逆の人間を演じているような感じに近いと思います。親にも反対されずに芸人やってるんで。「頑張っておいで!」って言われてお笑いライブ行ってるような環境なので、(劇中の実のように)「どこいくんだ!」って怒られることなんてないんですよ(笑)。

竹内:僕も朝ご飯作ってもらって、呑気に食べてから家を出てきます(笑)。それに、映画では(竹内と田中が)殴り合いのケンカをするシーンもありましたが、僕ら、ケンカなんかしたことない(笑)。まあ、ただ、あのシーンは相手が相方で良かったとは思いました。初めてご一緒する方だったらきっとできなかったと思います。でも、相方なので、最悪、どこか痛めちゃっても面白いんじゃないかと振り切れた部分があったんで。

田中:そうだね。それはそう。でも、そのシーンくらいで、もうあとは全部のシーンが難しかったですね。

――そうだったんですね。芸人さんのリアルな姿が描かれている作品だと感じたので、てっきり、共感の嵐かと思いました。

竹内:確かに、僕らに当てはまらなかっただけで、当てはまる芸人にとっては「分かる分かる」と感じるシーンがたくさんあるとは思います。それは、八木さんがマネージャーとしてたくさんの芸人を見てきたからこそ描けた部分だったと思います。

――竹内さんが演じた実は松尾さんをモデルにした役柄ですが、松尾さんご自身から何かアドバイスはありましたか?

竹内:撮影前に、松尾さんの農園を訪れて2、3日研修させてもらったり、話をさせてもらう機会があったのですが、松尾さんは「これはもう俺じゃない」ってずっと言ってました(笑)。なので、具体的なアドバイスということは特になかったですが、「任せた!」「好きなようにやってくれ!」とは言われていました。

田中:確かに、(農園で研修してても)りんご農家としての指導だったもんね(笑)。

竹内:そう、どうやったらきれいに梨が取れるかとか、りんごの葉っぱをよけないと赤くならないというような実践的な農家としての話はみっちり教えてもらいました。だけど、そういった話を聞いて、本当に農家の方は大変だというのは感じましたし、松尾さんの「農家としての本音」を聞かせてもらえたので、役を作る上での参考になりました。

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――本作のストーリーには、松尾さんのリアルなエピソードも盛り込まれているのでしょうか?

竹内:作中で実がネタをやるシーンがあるんですが、そこは松尾さんの漫談のネタが入っています。でも、こんな形で先輩のネタをやるとは思ってなかったです(笑)。

――先輩のネタをやるのは、なかなか難しそうですね。

田中:(竹内は)ノリノリでやってたけどね。

竹内:好きなネタだったから、嬉しくて(笑)。

――劇中には、お二人でネタをするシーンもありましたが、そのネタは?

田中:あれは、松尾さんのネタを僕が編集して作ったんです。映画内ではカットしていて短くはなっていますが、きちんと形になっているので、やりやすかったですよ、そりゃもちろん(笑)。

竹内:僕たちの普段の感じでという指示が(監督から)あったので、普段通りにやりました。そこだけ、唯一自然にできたような気がします。

――そこだけということは、他のシーンでの演技は緊張していたということですか?

田中:やったことないことばっかりでしたしね。

竹内:ずっと構えていました。

田中:僕は(エーマのように)怒ったこともないし、嫉妬もあんまりしないタイプなんで。

――エーマはひねくれた人物でしたもんね。

田中:嫌なやつですよね、あいつ。試写を見た芸人の先輩からも「嫌なやつだったね、お前」って言われますもん(笑)。

竹内:実はよく友達でいるなと思うよ()

――でも、みんながそう思うということは、田中さんの演技が良かったということでは?

田中:良かったんですかね? やり過ぎな気もしてますが…。

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――本作には、爆笑問題をはじめとしたたくさんの芸人さんが出演されていました。芸人さんとの共演はいかがでしたか?

田中:気心が知れた人がいたので、(撮影現場の)空気は良かったと思います。

竹内:お芝居をするということに対して、ずっと緊張があったので、知っている芸人さんがいて、その顔を見れるだけで緊張が解れるような感覚はありました。ホッとするというか。

田中:爆笑(問題)さんはどうだった?

竹内:爆笑さんのシーンはもう、本当に緊張しましたね。場所も、普段、爆笑さんが実際にやられているラジオの放送局で…。ただ、実が初めてそこを訪れて緊張しているという、そのままのシーンだったので(笑)。そのままやりました。爆笑さんと話せて、嬉しくて、楽しい!って(笑)。2人と話してるよ、すげー!ってミーハーな気分でした。

――八木監督の演出で印象に残っていることは?

竹内:実は吃音という特徴があったので、八木さんと一緒に吃音の方の集まりに行ったり、そこで悩みやどういう辛さがあるのかということを教えてもらいました。そういう準備の時間をもらえて、八木さんともたくさんやりとりできたので、実の悩みは割と理解しやすかったです。

田中:僕は演技も全くやったことがないのに、感情の起伏が大きい役だったのでどうしたらいいのかなという不安はありました。自分では感情を出したつもりでも、映像で見ると全然感情が出てないんですよ。それで、「もっとやっていい。やり過ぎなくらいやっていいです」と八木さんから教えてもらって…。やっぱりもともと、芸人とマネージャーという関係があったので、フランクに説明してもらえて、そういう意味ではすごくやりやすかったです。八木さんは、僕らを知ってくれているからこそ、どう動かせばいいのかも分かっていると思うので。なので、初めて出る映画が八木監督の作品で良かったと思います。

竹内:「もし、失敗してしまっても笑えばいいや」という感覚を共有できているということが、すごく助かりました。

――竹内さんはすでに本作以外でも俳優としてのお仕事をされていますが、永田さんは本作が初めての演技でした。お二人としては今後も俳優のお仕事は視野に入れていますか?

田中:オファーをいただけるのであれば、そんなありがたいことはないと思います。

竹内:もちろん、最初はただお笑いがやりたくて事務所に入っただけなんですよ。そうしたら、八木さんが「お芝居の仕事が入りました!」って持ってきてくれて…。芸能事務所に入ると、こういうこともあるんだな、楽しそうだなという感じでやらせていただいたのが始めなので、正直、自分が俳優として何ができるかというところまで突き詰められていないんです。でも、こうして演技をさせていただいて、面白さももちろん感じているので、オファーをいただけるのであればやりたいと思っています。

田中:「僕らは芸人なんだから、演技なんかやんねえよ!」なんてことは全くない。

竹内:せっかく「(やっても)いいですよ」って言ってくれてるんだったら、ぜひやらせてもらいたいですよね。全部が貴重な経験になりますし、今後にも生きてくると思います。

――今回、かなり真剣に演技に向き合って、撮影に臨まれたと思いますが、どんなところに演技をする楽しさを感じましたか?

田中:月並みですが、自分じゃない別の人間になるという面白さがありました。人前で声を荒げたり、暴力的な八つ当たりをするということは普段は絶対にできないし、やらないことなので、それができるというのは、楽しくもあり、難しくもありましたね。

竹内:確かに。自分にない思考回路の人間を演じるのは楽しいよね。僕も、だんだんとりんご農家の気持ちになってきちゃったよ(笑)。

――最後に作品を楽しみに待っているファンの方へメッセージを。

竹内:実という男が、芸人と自分の立場に悩む姿は見ものだと思います。これほど真っすぐな男はなかなか見れないと思うので、そういう意味でもぜひ見てらもいたいです。

田中:芸能事務所のマネージャーが監督をして、芸人が俳優をしているということにスポットが当たりがちですし、僕たちもそれをネタにしてしまいますが、映画自体は本当に良いものに仕上がっていると思います。たいして演技もしたことない人間がやっているとは思えないほどの出来になっていると思うので、ファンの方はもちろん、ファンじゃない方にも映画として楽しんでもらえたらうれしいです。

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映画『実りゆく』は109日(金)より、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。

<公式サイト>  https://minoriyuku-movie.jp/
<公式Twitter  @minoriyuku
<公式Facebook 
https://www.facebook.com/minoriyuku/

 <あらすじ>
長野県のりんご農家の後取りとして生まれた実(みのる)。母親の死後、父親と2人で農園を切り盛りする実は、週末になると東京へ通い、お笑いライブに出演していた。
父親の願いとりんごに背き、夢に突き進む実には、「母親の死後、笑わなくなった父親を笑顔にしたい」
という内に秘めた想いがあった。
やがて訪れる運命の日。
人生をかけたステージで、実は夢を実らせることができるのか?

竹内一希(まんじゅう大帝国) 田中要次
田中永真(まんじゅう大帝国) 橋本小雪(日本エレキテル連合) 鉢嶺杏奈
島田秀平 小野真弓 三浦貴大
爆笑問題(特別出演)
山本學

監督・脚本 八木順一朗
エグゼクティブプロデューサー:太田光代
プロデューサー:佐藤満 ラインプロデューサー:今関直哉 音楽:榊原大 監督補:山口義高
撮影:伊丸岡創 照明:藤井聡史 録音:齋藤泰陽
助監督:山下久義 美術:遠藤雄一郎 へアメイク:中田愛美 スタイリスト:高田彰久
松川町コーディネーター:松尾寿司
制作プロダクション:株式会社geek sight
協賛:長野県下伊那郡松川町、JA長野県、株式会社モデスト
後援:長野県、長野市、豊丘村、信濃毎日新聞社、SBC信越放送、abn長野朝日放送
配給:彩プロ 宣伝:とこしえ 2020
「実りゆく」製作委員会

 

 

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