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2020年10月19日 07:00

【前編】加藤雅也インタビュー 映画『彼女は夢で踊る』「ボディーブローのように効いてくる作品になる」

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

広島に実在するストリップ劇場「広島第一劇場」を舞台に、秘められた美しい恋を描いた映画『彼女は夢で踊る』が1023日(金)より、新宿武蔵野館ほかで全国順次公開される。本作は、ファンに愛されながら何度も閉館の危機を乗り越えてきた劇場で、ストリップ劇場の店員(のちのオーナー)となった主人公が、踊り子たちと交流する中で男として成長していく姿と淡い恋心を描く。劇場の社長・木下を圧倒的な存在感で演じた加藤雅也に、本作の見どころ、そして撮影を通して感じた広島や「広島第一劇場」への思いを聞いた。

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――本作は、企画の横山雄二さん、時川英之監督、そして加藤さんがお食事を共にした席で出たお話から始まった企画だと聞いています。実際に、どんな経緯で製作が決まったのでしょうか?

たまたま、僕が映画館に行った時に、時川監督の『ラジオの恋』という映画のチラシを見つけて気になったのが、最初でした。当時、僕はDJを始めた頃だったので、「ラジオ」という文字に惹かれて、すぐに私の番組のディレクターにその作品の話をしたら、連絡をとってくださったんですよ。時川監督は、その時ちょうど東京にいらして、それでラジオにゲストで来てくださったんです。それで、初めて時川監督とお会いして、その1年後くらいに僕が広島にある作品のキャンペーンで行った時に、再会しました。そのキャンペーンには監督が尽力してくださり、そして横山さんも宣伝のために来てくださったので、3人でご飯を一緒に食べたんです。そこで、横山さんから38年続いた「第一劇場」が閉館する話を聞き、それは映画にするべきだとなったんです。

僕は、映画というのは、ストーリーや文学を伝えるという役目ももちろんありますが、建物を映像として残すということも役割のひとつだと思うんです。みんなの思い出の場所を映像の中に残すことは、とても意義があることだと思うんですよ。それで、今回の作品も、ドキュメンタリーであっても、短編映画であっても、建物を残すためにやりましょうというところからスタートしました。

僕はどのような形でも良いと思っていたのですが、監督が脚本を書き始めたら長編の映画としてしっかりとしたものを撮りたいという希望が上がってきたので、今回はこういう形になりました。実は、「広島第一劇場」は2017年1月末に閉館して、2月の半ばに壊すことが決まっていたんですよ。なので、閉館してからの2週間で撮影したんです。まあ、結局、今でも建物は残っているんですが(笑)。

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――今回、ストリップ劇場の社長という、これまでの加藤さんのイメージとは全く違った役柄でした。広島を舞台にしているのに、関西弁というのも興味深かったです。

実在する、本当の館長がそうなんです。大阪から広島に出てきて、それでストリップ劇場で働いていた。なので、そこは事実の通り演じたんです。

――そうだったんですか。外見も実際の館長に似せて、パーマ頭にヒゲという姿になったんですか?

それは違います。僕がこういう人だったらストリップ劇場の館長に見えるかなと思って作っていったものです。実際の館長は、ヒゲも生やしていませんし、劇中で僕が着ていたようなジャージ姿でもありません。僕が演じた信太郎の若い時を犬飼(貴丈)が演じているんですが、その犬飼が演じる信太郎がストリップ劇場で働きだした時の館長(高尾六平)がヒゲを生やしていたので、信太郎はその前館長を真似していたんじゃないかなと自分なりに解釈して、あの姿に行き着きました。

それから、こういった低予算で製作する映画に出演する場合、僕は役者としてこれまで自分がやったことがないキャラクターを演じたいという思いがあるんです。普段、メジャーな映画のオファーをいただく時には今回のような役柄はこないので、インディーズだからこそできる役柄をやりたいんですよ。そうすることで、観てくれた人に僕の新たな表現を提示することができますし、僕の幅が広がることにもつながるんだと思います。

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――なるほど。今回、楽しみながら演じられたんですね。

そうですね。そういう意味では、今回のような役作りができるのは楽しいですね。2週間という短期間の撮影だったからこそ、外見も作り込むことができました。ほかの撮影が入っていると、なかなかこの姿をキープしておくことは難しいので(笑)。

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――信太郎の若い頃を演じた犬飼さんの印象は?

数日、撮影が被った日はあったのですが一緒の撮影はほとんどなかったので、入れ違いばかりでしたが、撮影現場でも少し話しはできました。僕、たまたま彼が出演していたドラマ(『碧の海~LONG SUMMER~』)を観ていたんですよ。それで、透明感がある、今の日本には少ないタイプの俳優だと思っていたんです。そのドラマは、昔のフランス映画のような雰囲気があって、彼の存在はその空気にぴったりでした。

今回、撮影を海外のクリエイターに頼んだのですが、だからこそ犬飼の空気感はこの作品にも合うんじゃないかと思って、僕が監督に推薦したんです。彼は事務所の後輩ですが、そういうことは一切関係なく、純粋に彼が持っているものに魅力を感じてのことでした。

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――実際に、彼の演技をご覧になっていかがでしたか?

彼の純粋さがよく出ていて素晴らしかったと思います。彼が純粋だから、信太郎が純粋にストリップを愛し、踊り子を愛していたということを表現できたんだと思います。僕と犬飼は同じ信太郎を演じながらも、全く違う表現をしていますが、それも「歴史」という意味で必要なことでした。純粋な人間がこう(加藤が演じた信太郎のような姿に)なるまでの紆余曲折の人生がそこにはあったんです。同じ表現で、同じ人物だったらそこには人生がないんですよ。そういう変化こそが人生なわけだから、彼の純粋さがなければダメだったと思います。

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後編~https://ranran-entame.com/wp-ranranentame/movie/70043.html

映画『彼女は夢で踊る』
監督・脚本・編集:時川英之
企画:横山雄二
プロデューサー:時川英之、田辺裕美子
出演:加藤雅也、犬飼貴丈、岡村いずみ、横山雄二、矢沢ようこ ほか
挿入歌:Creep」作詞・作曲 Radiohead/「恋」作詞・作曲 松山千春
配給:アークエンタテインメント
(c)2019 映画「彼女は夢で踊る」製作委員会/95 /PG-12/
公式サイト:dancingdreams.jp <http://dancingdreams.jp>

 公開直前舞台挨拶 10/20(火) 浅草ロック座
10月23日(金)より新宿武蔵野館にて公開 全国順次公開

 

 

 

 

 

 

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