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2021年8月18日 12:00

山崎一インタビュー! 舞台『友達』「不条理とナンセンスコメディは紙一重。どっちにも転ばずに、綱渡りのように歩いていくのがこの作品の醍醐味」

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

安部公房の戯曲「友達」に、新世代をリードする劇作家で演出家の加藤拓也が大胆に切り込んだ舞台『友達』が9月3日(金)から、新国立劇場 小劇場で上演される。本作は、あるひとりの男の日常に忍び寄った、見知らぬ「9人家族」とのやりとりを描いた作品。不条理な状況に追い込まれる男を鈴木浩介が演じるほか、浅野和之、キムラ緑子、山崎一といった実力派や、有村架純や林遣都ら映像作品でも活躍する若手キャストが集結し、加藤の作り出す濃密な世界観を紡ぎ出す。「男」の部屋を占拠する家族の「父親」を演じる山崎に、公演への意気込みやコロナ禍での舞台公演への思いを聞いた。

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――本作に出演が決まった時のお気持ちを聞かせてください。

実は僕、安部公房の「友達」を読んだことがなかったんですよ。安部公房といえば、名作として知られる「砂の女」の印象が強かったんです。それで、早速、戯曲を読んだんですが、これがなかなか分かりづらい作品で…(苦笑)。(安部公房の戯曲は)難しいなと感じていたのですが、加藤さんの上演台本をいただいたら、実に分かりやすかった。現代的な用語に直してあって、すごく面白く読めました。僕は、今回、加藤さんとは初めてなのですが、そのような台本を書く加藤さんがどのような作品を作り上げるのか、今から楽しみです。

――加藤さんとはお会いになりましたか?

(取材当時は)まだ会えてないんですよ。だからそういう意味でも、僕の中ではミステリアスな方という印象です。まだ27歳とお若いのに、経歴も素晴らしいですし、面白くなりそうだなと思っています。

――加藤さんのほかの作品はご覧になりましたか?

『たむらさん』を観させていただきました。すごく不思議な芝居でしたね。(『たむらさん』に出演していた)橋本淳くんとは知り合いですが、彼に誇張させた芝居をさせず、普段話をするようにセリフを言わせているのがすごく印象的で、彼の演出の基本はそこにあるのかなと思いました。稽古はこれからなので、まだ分からないことだらけですが…。

――加藤さんの演出が分からないからこそ、お稽古が楽しみでもありますね。

そうですね。台本を読むと、これは不条理を狙っているんだと思ったのですが、僕は不条理劇はやっぱり面白いと思うので、どう演出をつけてくれるのか楽しみです。

――「不条理劇が面白い」というのは、演じるのが面白いということですか?

そうです。僕は元々、別役実さん(注:日本の不条理演劇を確立したともいわれる劇作家)が大好きですし、不条理劇は面白いですよ。

――演じるのがすごく難しそうなイメージがあります。

考え方の違う人たちが同じことについて話し合っていると、どこまでいっても噛み合いませんよね? お互いに「なんで分かってくれないんだ」と訴える会話が延々と続く。でも、そういうことって日常の中にはよくあることです。不条理劇もこれと一緒で、実は日常でもあることを描いていて、それをお客さまが感じとってくれれば、すごく面白く見ていただけると思います。

――なるほど。今回は「父親」役を演じますが、どのように役作りをしていきたいと考えていますか?

まだ稽古が始まっていないので、始まったら全然違う方向性になったということがあると思いますが…僕のイメージでは、シティボーイズのコントのような面白さが、この台本にはあると思っているんです。

――不気味というよりは、ユーモアが強いんですね?

すごく強いと思います。不条理とナンセンスコメディは紙一重だとよく言われますが、そこをどっちにも転ばずに、綱渡りのように歩いて(演じて)いくのがこの作品の醍醐味だと思います。神経をすごく使う作品だと思います。微妙なさじ加減で、みんなで綱を渡っていく。それがこの作品の見どころになると思います。

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――豪華な顔ぶれの共演者がそろっています。「男」役の鈴木浩介さんとは長いお付き合いですよね?

よく知っているという意味では、浅野和之さんの方が知っているかな。鈴木さんは、意外にも共演したのは2作品だけなんですよ。ですが、鈴木さんは、すごく間(ま)がいいので、一緒に演じるのが楽しいですね。

――今回は、映像で活躍する若手も出演します。

そうですね、その中で、有村さんは白井晃さんの舞台に出演されて、その演技が素晴らしかったことが印象に残っています。実際にお会いするのは初めてなので、それも楽しみです。

――現在、緊急事態宣言も発出され、本作も引き続き、コロナ禍での上演になるかと思います。この1年、コロナ対策をしながらのお稽古は苦労も多いかったのではないですか?

最初はマスクをしながらの芝居は大変でしたが、今はもう慣れました(笑)。ゲネプロで初めてマスクを取ったみんなの顔を見ると、逆にその方が怖いです(笑)。人間って慣れるんだなと思います。なので、今回もマスクだったり感染対策をしながらの稽古というのは特に心配していません。「ここはこういうふうにやりたいんだ」という方向性が明確に見えていれば、大丈夫だと思っています。

――そのようなコロナ禍の大変な1年でしたが、その中で、今年、第28回読売演劇大賞の最優秀男優賞を受賞されました。おめでとうございます!

ありがとうございます。

――コロナ禍で無事に舞台が上演できるということ自体、大変なことだったと思いますが、さらにそれが受賞につながったことに対して特別な思いがあるのでは?

ラッキーだったんだと思います。(2020年4月に上演予定だった)舞台『桜の園』は中止になってしまいましたが、その後、自粛明けに出演した『十二人の怒れる男』は客席は50パーセントでしたが、全公演上演できました。さらに、その後、三谷幸喜さんの『23階の笑い』もありがたいことに全公演上演できました。中止にせざるを得ない団体や作品がたくさんある中で、それがなく完走できたことはラッキーでしかない。それがなかったら賞もいただけなかったと思います。

――とはいえ、その上演にこぎつけるまでが大変だったでしょうし、いろいろなご苦労があったんだと思います。

最初はもちろん大変でした。『十二人の怒れる男』は、リンゼイ・ポズナーさんの演出だったのですが、彼はイギリスに住んでいるのでリモートで演出をなさったんです。僕たちもリモートで演出を受けるという経験はしたことがなかったですし、なおかつマスクもつけていて顔も分からない。アクリルの衝立が机の上に並べられていて、透明だから相手の顔は見えるけれども孤立感を感じましたし…。大変ではありましたけど、人間は慣れるので(笑)。

――コロナ禍で演劇に対する思いに変化はありましたか?

きちんと全ステージ公演できて、千秋楽を迎えられることのありがたさを改めて感じました。当たり前だと思っていたことが、こんなに大変なんだと実感できる1年だったと思います。

――ありがとうございました。最後に、本作の公演を楽しみにされている方々にメッセージをお願いします。

舞台の生の面白さをできるだけ多くの方に感じてほしいので、なるべく多くの方に劇場に足を運んでいただきたいと思っています。そのために、僕たちは出来る限りのことをします。面白い芝居になりますので、ぜひ生で見ていただきたい。感染対策は万全に行いますので、安心して劇場でお楽しみください。

舞台『友達』は、9月3日(金)~26日(日)に東京・新国立劇場 小劇場、10月2日(土)~10日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼで上演。

 企画・制作 シス・カンパニー
http://www.siscompany.com/tomodachi/

 

 

 

 

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