取材・写真/RanRanEntertainment
2001年の日本初演から上演を重ねてきたミュージカル『ジキル&ハイド』が、3月11日(土)から、東京国際フォーラム ホールCで待望の再演を果たした。今回の公演では、10年以上に渡って主演を務めてきた石丸幹二と、今作からそのバトンを引き継ぐ柿澤勇人がダブルキャストでジキルとハイドを演じる。石井一孝と上川一哉は、そのジキルの親友でストーリーテラーでもある弁護士アターソン役をダブルキャストで務める。石井と上川に本作への意気込みやお互いの印象などを聞いた。
――本作にアターソン役として出演が決まった時の心境を教えてください。
石井:僕は元々、『ジキル&ハイド』というミュージカルが大好きで、(初代のジキルとハイド役の)鹿賀丈史さんが演じていらした公演も観劇させていただいていますし、石丸さんの公演も観劇させていただいていました。実は、日本初演よりも前からブロードウェイ版のCDを取り寄せて聞いていたんですよ。僕は洋楽コレクターなんです。この『ジキル&ハイド』の楽曲を作曲しているフランク・ワイルドホーンさんは、元々はポップスの作家で、ホイットニー・ヒューストンの全米No.1シングルを作曲してる人なんですよ。それで、僕は以前から彼のことを知っていて、そうした認識でCDを取り寄せて聴いたのですが、これが素晴らしい楽曲ばかりだった。それで、「この作品に出演したい。実験室にあるフラスコの役でもいいから出たい」と思っていたのですが、なかなかご縁がなく、あれから20年経って、今回、お話をいただけました。ジキルの親友役で、ドラマティックなシーンもある役ということで、本当に嬉しく思っています。また、僕は石丸さんともカッキー(柿澤)とも仲が良いので、その二人と共演できるというのも何かの巡り合わせだなと感謝しています。
上川:僕はシンプルに、驚きました。もちろん、歴史のある、そして皆さまに愛されている作品に参加できることはすごく嬉しかったのですが、まさか僕にお声掛けいただけるとはと。それから、僕は一昨年まで劇団四季に所属していたのですが、その最後の本番の日、劇場に向かっているときに音楽を聞いていたら、石丸さんが歌う(本作のナンバーである)「時が来た」が流れたんです。劇団を退団した後の自分を考えたその朝に、石丸さんの優しい歌声を聞いたので、余計に心にグッときて…。なので、本当に今回の出演は、偶然が重なった奇跡の様で僕も嬉しく思っています。カッキーとは劇団以来13年ぶりに共演できるということで、それもまた嬉しいです。楽しみながら、そして石丸さんの背中を追わせていただきながら、頑張っていきたいと思います。
――今、現在は、アターソンという人物についてどのような印象を持っていますか?
石井:台本には、「弁護士で親友」ということしか書かれていないので、彼がジキルといつ、どうやって友達になったのかといったバックボーンを、演出の山田和也さんとも相談して考えていきたいと思います。でも、役者としては、彼らは学生時代からの友達だったのか、つい最近、仕事か何かを通して知り合ったのか、そういうことを考えるのは楽しいよね?
上川:そうですね。
石井:それに「善と悪を分離させる薬を作った」という、なかなか人には言えないことまで相談するというのはよっぽど深い仲にある友達だと思うんです。ジキルが理事会から反対されても、アターソンは「君の考えも本当に素晴らしいと思うけれども、やっぱり認可を取るというのは並大抵のことじゃない」と励まします。アターソンは科学的なことはよく分からないけど、それでも友達として「君がやろうとしている信念は素晴らしい」「君の心意気やお父さんを救いたいという思いは素晴らしい」と歩み寄って、ジキルの想いを尊重する。まだ漠然とではありますが、そんな友達でいたいと思っています。
上川:まさに石井さんがおっしゃる通りだと思うので、僕は付け加えることはありません。以下同文です(笑)。でも、そうしたアターソンの想いが、この物語の結末につながると思うので、キーとなる役どころをしっかりと演じたいと思います。
――石井さんと上川さんは、取材日の今日、初めてお会いしたと聞いていますが、お互いの印象はいかがですか?
上川:僕はディズニーアニメ『アラジン』で育ってきたので、お会いできて嬉しいです!(※石井は『アラジン』でアラジンの歌を担当している)何度聴いたか分からないほど、聴いてきたので、本当に光栄です。
石井:♪(※1フレーズを歌ってくれる)
上川:おおー! 今、今日一番、大きい声が出ました(笑)。嬉しいです。実は、今日はアラジンに会えるとファンのように楽しみにしていたんです。今回、いろいろ勉強させていただきたいと思っています。
石井:そう言ってもらえると嬉しいです。僕も、上川くんのことをWikipediaで調べてきたんですよ(笑)。『春のめざめ』をカッキーがやっていたことは知っていたんだけど、カッキーと同じ役をやっていたんだね。それ以外にも、『ユタと不思議な仲間たち』だったり、素敵な二枚目の主役をたくさんやっていらっしゃったので、きっとすごく爽やかで、僕がすっかり失ってしまっている何かを持っている人なんだろうなと思っていました。彼が稽古をしている姿を見て、「なるほど、こんなアプローチもあるんだ」というところもたくさん出てくると思います。お互いにいい意味でインスパイアし合って、新生『ジキル&ハイド』を作っていきたいです。
――今作は、石丸さんと柿澤さんのダブルキャストも見どころの一つだと思いますが、お二人から見た石丸さん、柿澤さんはどんな俳優ですか?
上川:僕は一ファンとしてお二人をずっと拝見してきました。僕はカッキーより年は少し上ですが、ほぼ同時期に入所しています。そうしたこともあり、カッキーが退団された後も、劇団の色々な作品でこの役をもしカッキーが演じたらきっとこうやるんだろうと思うことが何度もありましたし、様々な場で活躍されているのを見てきました。今回、カッキーがジキルとハイドを演じることで、新しいものが見られると思うので、一緒に作ることができるのはすごく嬉しいです。石丸さんは、大先輩なので、おんぶに抱っこで、色々とお世話になろうと思っています(笑)。
石井:僕は、二人ともとても仲が良いんですよ。石丸さんと初めてご一緒したのは、『スカーレット・ピンパーネル』(2016・2017年)で敵役でした。その時から、僕を弟のように可愛がってくださっていて、仲良くさせていただいています。僕は、元々俳優志望ではなく、ロック出身なんですよ。バンドでデビューしたいと思っていて、ただ歌うことが好きでひたすら歌っていたんです。石丸さんは芸大の声楽科を卒業されていて、クラシックメソッドをしっかり持っていらっしゃる。なので、僕にはない歌い方ができる。ボイスコントロールが抜群で、素晴らしい歌声を持っていて、すごく刺激になります。それに、絶対に人の悪口を言わない優しい方なんです。座長とはこういう人のことを言うんだという、まさにそんな方です。愛があって、技術があって…。本当に尊敬しております。
カッキーとは、『デスノート THE MUSICAL』で一緒でした。カッキーは夜神月、僕はリューク役で出演していたのですが、それはもう見事な夜神月でした。夜神月は、頭の切れる青年ですが、最後には悪魔のような人物に変わっていくので、まさにジキルとハイドのような二面性を表現しなければいけない役どころです。カッキーのヤンチャなところと、見た目が麗しい美青年なところ、悪魔っぽさがうまく出ていたので、きっとジキルとハイドもぴったりだと思います。石丸さんとカッキーがどんな化学反応を見せるのか、楽しみです。
――では、二面性を描いた本作にちなんで、自分の中の二面性や、実は自分にはこんな一面があるというところを教えてください!
石井:僕は、初対面の方とお話するのが得意で、全く緊張しないんですよ。自分で言うのも何ですが、すごく朗らかでポカポカしている“ラテン系”と言われることが多いんです。ですが、実はインドア派です。きっと皆さんが抱いているアクティブでアウトドアをしているというイメージとは違うと思います。家でじっとしてます、僕(笑)。
――お休みの日もご自宅で過ごすことが多いんですか?
石井:そうですね。最近は料理にハマっているので料理をしたり、音楽を聴いたり…。僕は、CDを4万枚持っているんですが、内容を知らないものも多いので、それをインポートするのが今の趣味です。なので、家から一歩も出ない日も多い。海にも山にも行かないし、散歩にも行かないです。
上川:僕は石井さんと真逆です。すぐに緊張してしまいます。初対面の方とはお話ししたくても色々と考えてしまって、なかなか自分から話しかけられない。なので、(石井のように)フランクに話しかけてくださるのはすごく嬉しいです。性格的にも、あまり前に出ていくタイプではないんです。ただ、変なところで頑固だったり、こだわりの強さが出てしまうところがあって…。例えば、1週間に3日間、何も食べないっていうやり方でファスティングをした時も、梅干しとナッツ系は食べていいと教わっていたんです。3日目はかなりきつかったのですが、ここまできたら何も口に入れないと変な意地を張ってしまって、結局、何も食べずに過ごしました(笑)。ほかにも、一駅だけ歩こうと思って歩き始めたけど、もう一駅いける、もう一駅いけると結局、全部歩いてしまったり。変なところで頑固なんだと思います。ランニングが好きなので、アクティブではあるのですが。
石井:すごい、本当に真逆だね。
――お休みの日は、どのように過ごしていらっしゃるのですか?
上川:外に出ています。とはいっても、街に出かけるということではなく、1人でランニングしたり、散歩したり…。体調によって走れる距離は違うと思うのですが、昨日は10キロ走ったのに、なんで今日は走れないんだろうと自分に腹が立って、無理して走ってケガをするタイプです(笑)。集中してしまうと、すごく視野が狭くなってしまうんですよ。これが二面性かは分かりませんが、石井さんのお話を聞いて、真逆なので面白いなと思いました。
――そんな真逆なお二人がダブルキャストで同じ役を演じるというのもすごく楽しみです。では、改めて本作の見どころと意気込みをお願いします!
上川:『ジキル&ハイド』に初めて参加させていただきます。全力でぶつかって、新しい風を吹かせることが出来るように、皆さんとたくさんコミュニケーションを取りながら、石井さんともたくさんお話させてもらって、作品を、そしてアターソンを作っていけたらと思います。
石井:愛してやまない『ジキル&ハイド』に、念願かなって出演させていただけるということにまず、感無量です。実力のある方ばかりのカンパニーです。お互いに信頼しあって、絆を深めていけると思います。自分たちの『ジキル&ハイド』を作り上げて、「楽しかった」「よかった」「手応えがあった」と思えるような作品にしたいと思います。そして、実は2人のアターソンは「表裏一体で真反対」(笑)という個性を出していきたいです。