取材:記事・写真/RanRanEntertainment
誰もが知っているゴシックロマンの名著「フランケンシュタイン」を大胆なストーリー解釈と流麗なメロディーに乗せてミュージカル化し、2017年の日本初演時には熱狂的な支持を集めたミュージカル『フランケンシュタイン』。メインキャスト全員が一人二役を演じるというトリッキーな演劇的作劇も相まって、高い評価を得た。そんな本作の待望の再演が、2020年1月8日(水)よりスタートする。初演に続き、アンリ・デュプレ/怪物を演じる加藤和樹に、本作への思い、見どころを聞いた。
――まずは、再演が決まった時の率直な気持ちをお聞かせください。
『フランケンシュタイン』は僕にとって思い入れの深い作品ですので、単純にうれしかったです。再演が決定したのも早かったんですよ。なので、再演までにいろいろと経験を積んで、よりパワーアップした作品をお観せしたいと思っていました。
――日本初演となった2017年の公演で、印象に残っていることは?
この作品は、肉体的にも精神的にも大変な役です。それだけやりがいがあるということでもあるのですが…なので、いろいろ印象に残っていることはあります(笑)。劇中、かなりハードにいじめられるシーンがあるのですが、そこはやはり印象に残っていますね。前回の公演は冬にやったので、鎖が冷たいんですよ。本物の鎖を使っていたので。今回もまた、寒い時期に公演があるので、冷たいだろうなと、今から覚悟しています(苦笑)。
――加藤さんは、初演前に韓国版もご覧になったと聞きました。改めて、本作の魅力はどこにあると思いますか?
物語でいえば、友情と復讐を描いた、すごく分かりやすい作品であることです。僕は韓国語は分かりませんが、それでもストーリーは理解できたし、作品の世界観に非常に感銘も受けました。ビクターとアンリの描かれ方は、男にとってはグッとくるものがあります。それから、楽曲が素晴らしい。一回観ただけで覚えた楽曲もあったほど、耳に残る楽曲が多かったんです。
――主要キャストが皆、一人二役で演じるという公演も非常に珍しい試みですね。それについては、実際に2017年に公演をしてみていかがでしたか?
僕が演じるアンリと怪物は、二役のようで、実は一つにつながっている部分があるので、ほかのキャストに比べると苦労は少ないと思います。ほかのキャストは皆、全く違う役を演じていたので、切り替えは本当に難しかったと思います。でも、二役やるには意味があるんです。ビクターという、アンリをとても大切にしていた役をやったキャストが、ジャックという怪物を虐げる役を演じる。それは、意味があることだと実際に演じてみて感じました。
――今回、再演にあたって、再び同じ役を演じることになりますが、現時点では、どのように演じようと考えていますか?
今回、また新たな作品を作るという意識で臨もうと思っています。ここ数年で、僕自身、この作品以外でも再演ものをたくさんやらせていただきました。その中で、自分ではなぞる気はなくても、体が勝手になぞってしまうことがわかったので、まずは意識的に役を払拭して、新しい気持ちで臨みたいです。演出の板垣(恭一)さんもまた新たに考えていることがあるでしょうし、新たなキャストもいますので、皆で1から作り上げていければいいなと思っています。
――なるほど。ブラッシュアップするというよりも、新たに作っていくという感覚で臨むのですね。
そうですね。個人的には再構築するつもりで臨みます。
――今回、主要キャストも皆、続投されています。ビクター・フランケンシュタイン/ジャック役の中川晃教さんと柿澤勇人さんの印象を教えてください。
カッキー(柿澤)とは『ロミオ&ジュリエット』でも共演したので2度目、アッキーさん(中川)とはこの作品が初めてでした。ずっと共演したいと思っていた人だったので、まずは、共演できることがうれしかったです。アッキーさんには、改めて力強さや、芝居と歌の素晴らしさを見せつけられたなと思いました。でもそう思ったことが、役の感情や関係性とマッチしていたので、演技にもつながったかなと思います。アッキーさんはアンリが追い続けるビクター、カッキーは一緒に歩んでいきたいビクターとそれぞれのカラーが出ていたと思います。
――Wキャストの小西遼生さんはいかがですか?
(小西)遼生さんはミュージカル『テニスの王子様』の先輩でもありますし、映画でも共演したことがありました。この作品では、Wキャストという形でやらせていただきましたが、僕とは全く違う役の捉え方をされていたので、参考にもなりました。また今回も一緒の役を作り上げることができるのは、僕としてもすごくうれしいし、頼りにもしています。
――加藤さんが演じるアンリ、そして怪物という役のどこに魅力を感じていますか?
アンリは、すごく真っ直ぐな青年であるということが魅力だと思います。ビクターと出会うまでは歪んだ考え方を持っていましたが、ビクターという光と出会ったことで、自分がサポートするんだという思いを持つ。とても誠実な青年で、その心の優しさが彼の魅力の一つだと思います。
怪物は、残虐性のある、復讐に燃える人物で、一見するとダークヒーローに見える。でも、かわいい部分もあって、カトリーヌと話して初めて言葉を覚えるシーンなんかはまさにそれ。人間の醜い部分を見なければ、心優しい怪物として生まれ変わって、アンリの記憶も徐々に取り戻したのではなかろうかと思われるのですが、そうはいかず…彼が落ちていく姿もまた、見どころなのかなと思います。
後編に続く~
ミュージカル『フランケンシュタイン』
東京公演:2020年1月8日(水)~1月30日(木) 日生劇場
愛知公演:2020年2月14日(金)~2月16日(日) 愛知県藝術劇場 大ホール
大阪公演:2020年2月20日(木)~2月24日(月) 梅田芸術劇場 メインホール