トップ > PICK UP > 松下優也、宮野真守らが数奇な運命を熱く描き出す ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』観劇レポ―ト

2024年3月19日 12:00

松下優也、宮野真守らが数奇な運命を熱く描き出す ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』観劇レポ―ト

荒木飛呂彦による大人気コミックシリーズ『ジョジョの奇妙な冒険』。“人間讃歌”をテーマにした熱いストーリー、美麗な絵と独特の台詞回しや擬音による唯一無二の世界が多くのファンを魅了し、シリーズ累計発行部数1億2000万部を誇っている。

アニメや映画、ドラマ、ゲーム、小説といったメディアミックスが行われているほか、原画展やハイブランドとのコラボなども展開し、熱狂的な支持を得ている本作の第1部「ファントムブラッド」の舞台が帝国劇場にて2月28日に千穐楽を迎えた。3月26日からは北海道公演、4月9日からは兵庫公演が控えるが、ジョナサン・ジョースターを松下優也、ウィル・A・ツェペリを廣瀬友祐が演じた帝劇公演の様子をレポートする。

客席に足を踏み入れると、傾斜のついた大掛かりなセットが目を引く。細やかに作り込まれたセットや小道具、衣裳により、“ジョジョ”のダークでハイセンスな世界を表現していた。キャストの身体表現に映像効果などを組み合わせることで、荒木飛呂彦が描き出すダイナミックな構図が舞台上にも現れる。

今回は第1部の舞台化だが、のちに財団を設立し、“ジョジョ”シリーズにおいて大きな役割を担っているスピードワゴン(YOUNG DAIS)がストーリーテラーとして登場。冒頭では第2部を思わせる老人の姿で、ジョースター家にまつわる数奇な運命について語る。

松下は、勉強や作法が不得手でやんちゃなジョナサン少年が本物の紳士に成長していく様子をまっすぐに演じる。エリナ(清水美依紗)やダニー、父との和やかな日常が温かく描かれるぶん、ディオに日常を脅かされる恐怖や苦悩が鮮やかに見えてきた。苦しい経験をいくつもしながらも誠実で優しく、お人好しに育った“ジョジョ”の人間性に胸を打たれる。伸びやかなハイトーンの美しさが印象的で、バトル中の力強い歌声もグッとくる。

宮野が演じるのは、過去の出来事からジョースター家の養子となるディオ・ブランドー。作中で“生まれついての悪”と形容されるディオだが、母親への愛情や父への憎悪が丁寧に描かれ、人間らしさや弱さも伝わってくる。“ジョジョ”への嫌がらせをする時など、セリフが原作と違う部分もあるが、それによって狡猾さが強調されていると感じた。人間の時と人間をやめてからの声のトーンや歌い方の違いも明確で、強敵であることがひしひしと伝わってくる。

息子たちに愛情を注いだ“ジョジョ”の父・ジョースター卿(別所哲也)、ディオを苦しめ続ける実の父・ダリオ・ブランドー氏(コング桑田)という、父親の対比も面白い。家族の関係性が深く描かれ、ここから始まるジョースター家とディオの何世代にも渡る因縁も感じさせる。 ジョースター卿が語る“二人の騎士の物語”、「死の間際に二人が見ていたのは泥か星か」という問いも印象的だ。“ジョジョ”とディオの考え方や価値観の違いを浮き彫りにすると同時に、本作の大きなテーマとなっている。

1幕は家族の物語が中心だったが、2幕では人間をやめたディオと波紋法を習得した“ジョジョ”のバトルが中心。1幕では苦悩やコンプレックスが強調されていたディオだが、2幕では完全に吹っ切れた悪として“ジョジョ”の前に立ち塞がる。対する“ジョジョ”も、様々な人の思いを背負い、覚悟を持って大きく成長していく。二人のデュエットは冒頭から度々披露されるが、ラストに向けてさらに熱を帯び、バンドの生演奏とともに盛り上がっていく。対照的でありながら似ている二人の運命がドラマティックに描き出された。

“ジョジョ”に波紋法を教えたウィル・A・ツェペリは、登場時のジャジーな音楽やエレガントな立ち姿が印象的。重い過去を持ち、覚悟を持って生きてきた人間の深みや師匠としての温かさなど、キャラクターの魅力を廣瀬はイキイキと見せてくれた。

ディオの配下となるワンチェン(島田惇平)、切り裂きジャック(河内大和)の不気味な存在感、強敵として立ちはだかるタルカスとブラフォードなど、敵サイドも魅力たっぷり。少年漫画らしい熱いバトルにワクワクし、「あのバトルをこう表現するんだ」という驚きも楽しめる。フライングやアクロバット、大掛かりな機構によって繰り広げられる迫力あるバトルから目が離せない。Wキャストでジョナサンを演じる有澤樟太郎とツェペリ役の東山義久がどう作ってくるのかも非常に気になるところだ。

そして、ダークな世界の中でエリナの存在がほっと心を和ませてくれる。清水は包み込むような愛情を歌声や表情でしっかりと見せ、気丈で優しいエリナという女性を魅力的に描き出した。

石仮面を作り出した部族、切り裂きジャックに怯える街の人々、“ジョジョ”やディオの周りにいる友人たち、屍生人などを演じるアンサンブルの活躍も見事だ。力強い歌唱や身体表現から、“人間”のパワーがひしひしと伝わってくる。

カーテンコールでは松下が“ジョジョ”の独特のポージングを披露し、客席が沸く一場面も。脚本・演出・音楽・美術や衣裳、すべてで 『ジョジョの奇妙な冒険』の魅力を表現している舞台を満喫し、第2部以降もぜひ見てみたいと感じた。

3月26日からの北海道公演は札幌文化劇場芸術劇場hitaruにて、4月9日からの兵庫公演は兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホールにて上演の予定。
なお、4月13日(土)17:00兵庫公演、14日(日)12:00兵庫大千穐楽公演のLIVE配信を予定。

https://www.tohostage.com/jojo/stream.html

トップ > PICK UP > 松下優也、宮野真守らが数奇な運命を熱く描き出す ミュージカル『ジョジョの奇妙な冒険 ファントムブラッド』観劇レポ―ト

Pick Up(特集)

error: コンテンツのコピーは禁止されています