『スクール・オブ・ロック』は、2003年に公開された売れないロッカーが教師になりすまし、名門進学校の生徒たちとロックバンドを結成するコメディ映画。2015年にアンドリュー・ロイド＝ウェバーのプロデュース・音楽でミュージカル化され、日本では2020年に初演が予定されていたが新型コロナウイルスの影響で全公演が中止に。2023年8月17日より、ついに公演がスタートする。
翻訳と演出を手がけるのは鴻上尚史。破天荒な熱血バンドマンのデューイ・フィン役を西川貴教と柿澤勇人がWキャストで演じる。また、名門校の校長ロザリー・マリンズ役に濱田めぐみ、デューイの親友ネッド・シュニーブリー役を梶裕貴と太田基裕（Wキャスト）、ネッドの恋人パティ・ディ・マルコ役にはいだしょうこと宮澤佐江（Wキャスト）と、豪華キャストが集結。生徒役は大規模オーディションを経て、ビートチームとコードチーム各12名が選ばれた。作中では生徒たちによる生演奏も行われる。
初日を前に行われた会見には、鴻上尚史、西川貴教、柿澤勇人、濱田めぐみ、梶裕貴、太田基裕、はいだしょうこ、宮澤佐江が登壇した。
開幕に向けての意気込みと日本公演ならではの見どころを聞かれた鴻上は「ようやくここまで来たという感じです。日本でやる以上、ブロードウェイ版よりも僕ら日本人に響くものにしたいと思って作りました。僕らは簡単にハグやキスはしませんし、例えばデューイが生徒たちをスカウトするシーン、元はギターをスカウトした時点でみんなノリノリになっているけど、僕らはそんなに陽気じゃない。ギター、ベース、キーボード、ドラムときてようやく信じるみたいな」と、より物語に入り込めるように工夫したと語る。
続いて、印象的なキャストを聞かれた西川が「僕はWキャストって初めてなんです。同じ役を演じてくれる柿澤くんがいるのが新鮮で不思議な感じでした。アプローチも違うのでそれぞれの魅力があって。なので、印象的なのは柿澤くん」と答え、柿澤は「子供たちがふとした瞬間に見せるピュアさがグッときます。そこでふと西川さんを見ると号泣している時があって（笑）」と振り返る。厳格な校長を演じる濱田は「子供たちは何をするにも楽しんでいて、好奇心旺盛で猪突猛進。生の彼らと一緒にいると、芝居をする感覚を一旦取り外して自然と校長として接することができます。彼らのエネルギーに癒され、人生こうじゃなきゃいけないなと改めて思えました」と笑顔を見せた。
ちょっとマニアックなおすすめポイントを聞かれた梶は「2人のデューイがそれぞれ違うアクションを仕掛けてくるところがあるのと、音楽もアドリブがある。中でも僕はフレディのドラムソロに痺れますね。毎回違うしすごくテクニカルな演奏をしているので、何度観ても楽しめると思います」とアピール。太田は「アンサンブルのメンバーが小学校で働く先生たちを演じているんですが、みんな個性的。すごく細かいお芝居をしていて、こんな先生たちがいたら楽しそうだなって思います」と語る。はいだは「デューイが自分で作詞作曲して歌う場面があるんですが、けっこう長い時間シーンとしたところで歌い出すのでいつも笑ってしまいます」と話し、宮澤は「デューイとネッドがある約束をするシーンで、すごく真面目に真剣な顔で「彼女（パティ）は俺たち2人より強い。ティラノサウルスよりも隕石よりも強い」ってすごい悪口を言うんです。ユーモアの溢れるセリフで、なんだか嫌な気がしないなっていつも思います」と笑いながら語った。
また、子供たちが２チームあり、大人キャストも一部がWキャストの本作。それぞれの魅力を聞かれた鴻上は「西川デューイは売れているロックシンガーが売れていないロックシンガーを演じる。柿澤くんはミュージカル界を背負って立つ人ですから、ロックシンガーとミュージカルスターという毛色の違うWキャストが魅力ですね。また、原作にはない濱田さんが歌う「ロックはどこへ消えたの？」という鎮魂歌は本作の肝。善良な梶くんとちょっと悪いもっくん（太田）のネッドも面白いし、しょうこさんパティはどこに飛んでいくかわからない。佐江ちゃんパティは若くてしっかり者で強い。子供達については一言では言えません。元気でうるさくてうるさくてうるさい（笑）。天才子役と、演技指導は受けているけど初舞台、天才音楽家だけど「演技？ は？」って言う3タイプがいるので」と、個性豊かなキャストたちをユーモアを交えて紹介する。
最後にお客様へのメッセージを求められると、プレスコールで立て続けに3曲披露した柿澤が「3曲披露しただけで汗がすごいです。あのテンションがずっと続くパワフルな作品で、夏にぴったりだと思いますね。3年前、中止になってしまった時に出演する予定だった子達が観て「やりたかった」と思えるように、「なんだ、自分たちの方がいいじゃん」と思われないようにしっかりやりたいと思います」と意気込み、西川も「大人も4年ほど待ちました。残念ながら出演できなかった子達もいます。その分の思いや、今回のチームとして新たなパワーをくれた人たちの思いを乗せて頑張りたいと思います」と力強く宣言する。鴻上は「今、日本でやる意味のある最高にご機嫌なミュージカルです。夏休みですから、ぜひお子さんと一緒に見に来てほしいですね。現実と繋がっていながら最高のエンターテインメント。本当にいい作品だと思います」と締め括った。
開幕に先駆けて行われたプレスコールでは、デューイ役を柿澤勇人、ネッド役を梶裕貴、パティを宮澤佐江が演じ、生徒役はコードチームが登場した。最初に披露されたのは、バンドメンバーからクビを言い渡され、家賃を払えずに家を追い出されそうなったデューイが夢への想いを叫ぶ「マウント・ロックのてっぺんで」。デューイのダメ人間ぷりとロックへの熱い想いに引き込まれる。
デューイとネッドが音楽ゲームをするシーンからはじまる「ロックの申し子／マウント・ロック リプライズ」では、デューイとネッドが心から音楽を愛している様子が伝わってきて、少年のような姿に和んでしまう。現実的で厳しいパティに頭が上がらない様子もユーモラスで可愛らしい。
そして、デューイが生徒たちの音楽の才能に気づき、彼らと共にバンドバトルに出ることを思いついてスカウトする「俺たちはバンド」。クラシックしか演奏したことのなかった生徒たちがロックに触れ、新鮮な驚きとワクワクを見せてくれる一場面だ。一度は絶望的に感じたバンドバトルへの活路を見出したデューイの興奮、役割を与えられてイキイキとした笑顔を見せる生徒たちが眩しい。
続いて行われたゲネプロでは、デューイを西川貴教、ネッドを太田基裕、パティをはいだしょうこが演じ、生徒はビートチームが出演した。
キャストによって雰囲気が大きく違うため、全く違う作品を見ているような新鮮さが楽しい。アドリブには客席からも笑い声が上がり、会場全体がワクワクした熱気に満ちていた。また、会見で出た通り生徒役の子供たちのパワフルさと大人顔負けの演奏や歌唱に圧倒される。濱田演じる校長の厳しさと可愛らしさ、ネッドとパティカップルや学校の先生たちのコミカルなやりとり、それぞれの生徒の家庭の物語など、音楽以外の部分も見どころたっぷりだ。
思い切り笑えてクールで熱いロックにノって、生徒と先生、親子や大人同士のやりとりにグッとくる 。本作は8月17日（木）より東京建物Brilliant HALLにて開幕。9月23日（土・祝）からは大阪公演も行われる。
