本作は、20世紀初頭のニューヨークを舞台に、ユダヤ人・黒人・白人、それぞれのルーツをもつ家族の固い絆や、差別・偏見に満ちた世界を変えて、より良い未来を作っていこうとする姿を描く。『ライオン・キング』や『キャバレー』といった名作が上演された1998年トニー賞ミュージカル部門において、13部門ノミネート4部門受賞の傑作ミュージカルが、ついに日本で初上演される。
演出を手がけるのは、次回作が最も待望される演出家の一人である藤田俊太郎。娘の未来のためにラトビアから移民としてアメリカにやってきたユダヤ人、ターテを石丸、新しい音楽“ラグタイム”を奏で、新時代の到来を目指す黒人ピアニスト、コールハウス・ウォーカー・Jr.を井上、正義感に溢れ人種の偏見を持たない、裕福な白人家庭の母親、マザーを安蘭が演じる。
この日、公開されたのは劇中の４シーン。
まず最初に披露されたのは、劇中の幕開きを飾る10分間の壮大なナンバーの最後の数分となる「Ragtime」だ。石丸が演じるユダヤ人たち、井上が演じる黒人たち、そして安蘭が演じる白人たちが、時代を捉えた音楽・ラグタイムにのせて重層的なハーモニーを繰り広げる。3つの人種が織りなす物語がここから始まることを予感させる。アンサンブルによるダイナミックなダンスが目を引いた。
次に、井上と遥海、アンサンブルによる「The Getting’ Ready Rag」が公開された。この楽曲は、井上が演じるコールハウスが、黙って出て行った愛する恋人・サラへの想いを歌う一曲だ。仲間たちに励まされたコールハウスは、愛するサラとよりを戻すために生まれ変わろうと努力する。そして、サラに見直してもらうためにも、“夢の象徴”であるヘンリー・フォードの新車・モデルTを買うことを決意する。情熱的なダンスシーンが繰り広げられる迫力あるナンバーとなっていた。歌い出し冒頭でミスをした井上がすぐにやり直しを要求すると、一気に場が和み、カンパニーの雰囲気の良さも感じられた。
そして、3曲目は井上と遥海による「Wheels Of a Dream」。二人の間に生まれたリトルコールハウスの輝く未来と幸せを願って二人が誓う、このミュージカルを代表するビッグナンバーの一つだ。待機スペースで聞いていた安蘭が、二人の歌声に感動し、思わず涙を流す様子も見られた。
最後に、石丸と安蘭による「Our Children」を披露。第2幕で歌われるこの楽曲は、石丸演じるターテと、安蘭演じるマザーが運命的な出会いから数年が経った再会の時に歌われる。お互いそれぞれの子どもたちが彼らの前で仲良く遊んでいる中、子どもたちの純真無垢な姿を通して、二人はひと時の幸福を感じるのだ。ターテとマザーが心の深い部分で繋がる珠玉のナンバーだ。二人の美しい歌声が響き渡った。
ミュージカル『ラグタイム』は、以下の日程で上演。
東京公演：2023年9月9日(土)〜30日(土) 日生劇場
大阪公演：2023年10月5日(木)〜8日(日) 梅田芸術劇場 メインホール
愛知公演：2023年10月14日(土)〜15日(日) 愛知芸術劇場 大ホール
