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2024年1月31日 17:35

『カム フロム アウェイ』製作発表会見 ミュージカル界のトップスターが集まり、大切なメッセージを熱量たっぷりに伝える

石川禅 浦井健治 加藤和樹 田代万里生 橋本さとし 吉原光夫
安蘭けい 咲妃みゆ シルビア・グラブ 濱田めぐみ 森公美子 柚希礼音

何百人もの登場人物を12人のキャストが演じ分け、100分間ノンストップで展開されていくミュージカル『COME FROM AWAY』。2001911日に起きたアメリカ同時多発テロ事件の裏で起きていた実話を元にした物語だ。
アメリカ国内に入る予定だった38機の飛行機と7000人の乗客・乗員は、カナダ・ニューファンドランド・ラブラドール州にある「ガンダー国際空港」に降り立った。非常事態の中、人種も宗教も言語も異なる人々のために尽くした街の人々と、彼らに感謝する乗客たち。ある女性はガンダーの子供たちのための奨学基金を作り、ある男性は企業の社長となって毎年911日に「人の為に使うように」と全社員に100ドル渡している。世界貿易センタービルの人々を助けようとして命を落とした消防士の息子を持つ母親は、自分を支えてくれた街に毎年戻ってくる。
ステージと客席が一体となって作り上げる本作は高く評価され、トニー賞演出賞、ローレンスオリヴィエ賞作品賞などを受賞している。 日本初演に向け、カナダ大使館にてキャスト全員による制作発表記者会見が行われた。

石川禅 浦井健治 加藤和樹 田代万里生 橋本さとし 吉原光夫
安蘭けい 咲妃みゆ シルビア・グラブ 濱田めぐみ 森公美子 柚希礼音

まずはカナダ大使館の首席公使であるデボラ・ポールより「この作品はカナダの魅力を強く描き出している作品。カナダのニューファンドランドの小さな街・ガンダーでの出来事を描いています。2024年はカナダと日本の外交樹立95周年。心温まるストーリーを通じて、多くの方がカナダについてもっと知り、人と繋がることで生まれる癒しの力の大切さを感じてくださることを願っています」と挨拶した。

ホリプロの代表取締役社長・菅井敦は「ある日突然思いもよらない事件や災害が発生した時、人種や宗教などのハードルを乗り越えて助け合い、未曾有の緊急事態を乗り越えていく様子を描いています。今上演する意義のある素晴らしい作品だと思います。ぜひこの機会をお見逃しなく」とアピールした。

物語の舞台となっているカナダのニューファンドランドの地形や文化について、カナダ観光局日本地区代表の半藤将代より説明がなされたあと、キャストが登壇。

安蘭けいは「ニューヨークで見てとても感動し、日本で上演の機会があったらぜひ出演したいと思っていたので大変嬉しいです。私はダイアンに加えて様々な役を演じます。一言しかない役でも個性を見せられるように挑戦したいです」と意気込んだ。

石川禅は「安蘭さんとのロマンス担当なんですが、それに加えてニューファンドランドでシルビアさん演じるボニーの尻にしかれる旦那もやっています。とてつもない作品に参加できるのが光栄です。この作品はとてもシンプルな舞台で、動くのは13個の椅子と3卓のテーブルのみ。椅子は全部違うデザインで、国籍が違う人たちが飛行機に乗り合わせたようでもあり、集まったキャストの個性のようでもあります。キャストが椅子を動かして舞台上に旅客機が現れたりするのに四苦八苦していますが、無事テイクオフできることを願っています」と語る。

続く浦井健治は「稽古場が色々な意味で豊かです。個性も差し入れも(笑)。支え合いながらお稽古をしています。各国で上演され続けてきた作品を日本キャストで初めてやらせていただくので、ステージングが出来上がった中に入っていく。でも我々の個性を尊重しながらできています。その過程や試行錯誤が非常に豊かで尊いなと思っています」と笑顔を見せる。

加藤和樹はつい先日まで本番中だったため、遅れて稽古に参加したという。「第一線で活躍している方々が揃っているので、この力が一つになったらどれくらいのエネルギーになるんだろうと感じています。良い感じに伝播していくと、元々の作品の力とキャストのエネルギーの相乗効果でとんでもない爆発力を生み出すんじゃないかと思います」と稽古の印象を明かした。

咲妃みゆは「私は9.11が発生した当時、小学生でした。ニュースで知って感じたショックを鮮明に覚えています。悲しみだけだと思っていた事件のそばでこんなにあたたかい出来事が起きていたと知り、感動が増している状況です。大きな苦しみを生み出したのは人だけど、それを癒したのも人というのがこの作品のポイントだと思います。遠い国で起こった出来事ではなく、どの場所もどの国もニューファンドランド島になり得ると思いながら見ていただけたら」と気持ちを伝える。

シルビア・グラブは「私もニューヨークでこの作品を見ました。本当に素晴らしかったです。前知識なしで見に行ったんですが、オープニングから鼓動が高まって、かっこいいなと思いました。ものすごく人間臭い人たちがいて、バンドの皆さんも舞台上にいる。楽しい作品だなと思いながら見て、内容がわかった瞬間泣いてしまいました。この題材をこれだけ愛のある舞台にしていることに感動し、日本でやるなら絶対参加したいと思っていたので、お話をいただいて「どの役でもやる!」と即答しました。これだけのメンバーが揃っているので素晴らしいものになると思います。ぜひ100分楽しんでください」と熱量を持って語った。

田代万里生は「ほとんどの役が現在実在している方をモデルにしており、しかも実名で演じています。演出家から、この作品は9.11ではなく9.12、復興に繋がる作品だと言われました。台本を読み、3.11や先日の能登の地震などのことを思い、どう立ち上がろう、どう支えようと考えました。僕らもいつでもニューファンドランドの人々のようになれるという思いが抱ける作品だと思います。また、プロデューサーになぜこの役のオファーをくださったのか聞いた時、ケビンJもだけど、もう一つのイスラム教徒のアリという人物を演じてほしいとおっしゃっていただきました。イスラムの方の中には9.11で色々な偏見を受けた方もいると思う。僕自身、プライベートで交流がある方にお話を聞く中で、理解し合うにはお互いを知る必要があると感じています。ぜひ劇場で日本初演を見届けてほしいと思います」と、作品や役について語る。

橋本さとしは「稽古が大変とは言いたくないですが、めっちゃ大変です(笑)」と話し、キャスト陣を笑わせる。「稽古場にはすでに本番さながらのセットが組まれており、目印になるバミリの数に引いてしまいました。でも、信頼のおける超人キャストたちも意外とパニクっていたり迷子になっていたり。みんな普通の人なんだって安心しました(笑)。町長の役ですが、僕自身はリーダータイプではない。とりあえず稽古を止めないように、セリフが飛んでも何とか繋いでいます。ミスしてもみんなが笑い飛ばしてくれるので、稽古場で恥をかいて、お客様の前で恥をかかないように精度を上げているところです。ポンコツな店長…じゃない、町長ですが、みんなと一緒に素敵なニューファンドランドを作っていきたいです」と、笑いを巻き起こしながら稽古場の雰囲気の良さを話した。

濱田めぐみは「私が演じるのは、アメリカン航空初の女性機長。物語の中ではところどころ緊張感を持って切り込んでいく役です。私の年代的に、カンパニーで一番年上になることも増えてきたんですが、今回は先輩も多く、さらに先輩たちが可愛らしいポンコツな部分を持っています(笑)。心が温まるカンパニーで幸せです。最初に演出家とお話しした時、「9.11は日本に住んでいた皆さんにとってどのくらいの印象ですか?」と聞かれたんです。正直に話すと、映像でしか見たことがなく、最初は映画かと思った。ただ、起きた出来事は違っても、3.11などと抱える辛さや思いは同じだと感じました。また、被災地での状況が作中で書かれているんです。人が起こしてしまった出来事を人が癒し、愛を持って復興していく様子が描かれている。日本の方が見ても共感できる作品だと感じました。これから1ヶ月ほど、いい初日を迎えられるように稽古を重ねたいです」と意気込んだ。

森公美子は「私が演じるのは、消防士の息子を持つハンナ。「息子がそんなところに行くわけがない」と思っていて、「彼は絶対元気だから早く帰ってそばにいなきゃ」という役です。重い役なんですけど、他の役も演じないといけない。切り替えが迷子になって「今どこ!? 誰!? 誰か教えて!」という状況が続いています。ハンナが息子を思うシーンで泣いてしまったんですが、演出家が「それじゃだめ。軽く歌わなきゃ死んでるってわかっちゃうでしょ」と。結果は亡くなっているけど、もっとポジティブに作らなきゃいけないん役だなと実感しました。ただメインとその他の役が半々だから難しい。大変なんですが、稽古がすごく面白いから別の作品にいかなきゃいけないのに調整したりして。個性豊かな主役級の方がこれだけ集まっているとギスギスするかと思ったけど本当に楽しいです」と、苦労を交えつつ楽しさを語る。

柚希礼音は「コミュニティセンターの会長を演じます。ニューファンドランドの地元のおばちゃん・地元代表という感じのキャラですが、こんなにすごいメンバーをまとめられるのかとドキドキしています。でも、稽古中も皆さんがすごく助けてくれて、一歩ずつ進んでいます。ハンナとはお互い息子を先に亡くすけどずっと続く友情が芽生えたり、あたたかい人だけどイスラムの人に対して偏見を持ってしまっていたり。色々なものを乗り越え、大切に演じていきたいです。昨日改めてドキュメンタリーを見たら最後に町長さんが「人の優しさがどんな悲劇をも乗り越える」とおっしゃっていました。そこを大切に描きたいです」と話す。

吉原光夫は「こんな素敵な場所で制作発表ができるとは思っていませんでした。久美さんが言っていた「私は誰、どこにいるの」ということが稽古場で起きているんですが、それはこの作品の意図でもある。テロや震災などが起きると自分の居場所がなくなり、自分が誰でなぜ生きているのかわからなくなってしまう。そういう時にガンダーの人たちは、無条件で人の思いを引き受けてくれるという実話です。それがすごいなと思っています。大きな優しさで包んだというより、当たり前のように明るく人を受け入れていると感じました。日本のお客さんが何を受け取るか考えた時、今ってSNSや学校でのいじめで、我々も居場所や表現を失っているなと思う。この作品を見て、手を差し伸べるか攻撃するか、どちらをチョイスするのか。でも居場所は必ずあるとニュートラルな状態に戻してくれる作品だと思います。色々なことがおかしくなっている世の中で、無条件に誰かを助けるというチョイスをするというシンプルなストーリー。今のミュージカルでなかなかないと思います。最高のメンバーが必死に命を削ってやっているので、ぜひ楽しみにしてください」と自信を見せた。

本作は2024年3月7日に東京・日生劇場にて開幕。その後、大阪、愛知、福岡、熊本、群馬でも上演される。

 

 

 

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