『COME FROM AWAY』は、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件の裏で起きた奇跡の実話を描いた作品。事件によってアメリカの領空が閉鎖され、行き場のない飛行機はカナダのニューファンドランド島にある「ガンダー国際空港」に降り立った。人口わずか1万人の小さな町・ガンダーで暮らす人々と、飛行機の乗客・乗員たち。人種も出身も宗教も様々な人々の5日間を、100分間ノンストップで展開するミュージカルだ。何百人もの登場人物を12人のキャストが演じ分け、客席と一体となって作り上げる本作は、トニー賞演出賞、ローレンスオリヴィエ賞作品賞などを受賞した。
公演まで約3週間のタイミングで、稽古場取材会が行われた。この日は、キャストの声を受けてアップからスタート。和気あいあいとした雰囲気で軽く歌ったあと、2017年の初演から本作に携わっている演出補のダニエル・ゴールドスタインより「この作品は実話で、登場人物もみんな実在する人々です。作家たちが実際にニューファンドランドを訪れてインタビューし、様々な話を教えていただいたそうです。本作は困難な時に人に優しく、寛容に接することを語る物語。昨今のアメリカ、カナダも日本もそうですが、大変な時にこそお互いに優しくするのが大事なのではないかと思います。僕らが大好きなこの作品を、皆さんにも大好きになってもらえたら嬉しいです。100分ノンストップの作品で、役者は様々な役を通してこの物語を語ります。お客様と実際に繋がり、この物語を語ってほしいと伝えているので、もし役者と目が合っても驚かないでください」と、作品についての説明がなされる。
続いてダニエルが「ニューファンドランドはカナダの北東にある小さな島です。かつて、ヨーロッパからアメリカへの空路で、給油のために泊まる空港があることで有名でした。小さい場所にかなり大きな空港があります。今は東京からニューヨークでも直行できるので、ガンダーで給油する必要もなくなりました。しかし、9.11に突如行き場がなくなった飛行機の着陸スポットとして着目されました。それによってこの物語が始まったわけです。ステージ上にドラム以外のミュージシャンもいて、役者と交流します。この作品のオープニングナンバーである「Welcome to The Rock」をお楽しみください」と話し、オープニングが披露された。
「Welcome to The Rock(ザ・ロックへようこそ)」は、事件を知る直前から知った直後のガンダーの日常が描かれる。小さな田舎町で厳しい自然と共存し、逞しく暮らす人々の姿。キャスト全員による力強い歌唱にグッと引き込まれた。
ダニエルと振付補のジェーン・バンティングによるノートも公開され、ダニエルの「みんな素晴らしすぎる! お客様はぶっ飛んじゃうんじゃないか心配」という称賛にキャスト陣からは大きな笑い声が。ジェーンも「皆さん素晴らしいです。すごく細かい部分だけ」と何点か確認し、丁寧に修正していく。
続いて、「スクリーチというのはニューファンドランド産の、甘くて度数の高いラム酒。ニューファンドランドでは、地元以外の人を“カムフロムアウェイ(遠くから来た人)”と呼んでいます。ニューファンドランドの名誉市民になるにはScreech Inという儀式を行います。9.11から数日経ったところで、地元の人たちがカムフロムアウェイのためにScreech Inをやろうということになりました。橋本さんが演じている町長がこの儀式の進行を務めています。安蘭さんと石川さん演じるテキサス出身の女性とロンドン出身の男性はいい感じになりつつあります。浦井さんと田代さん演じるロサンゼルスから来たカップルは、ニューファンドランドで違う経験をしています。浦井さん演じるケビンTはこの土地に好感を持っていますが、田代さん演じるケビンJはこの事態に恐れ慄いていて、あまり居心地が良くない。このシーンではミュージシャンも全員ステージに登場します。いずれバンドの振り付けも行う予定です」というダニエルの説明を受け、「Screech In(ラム酒を飲め)」が披露された。
本作では、セットの転換も全てキャストが行う。明るくハイテンションなパーティーの様子が楽しく、その中でダニエルが説明していたダイアンとニック、ケビンTとケビンJの関係性が描かれる。
最後に、キャスト陣からのメッセージが寄せられ、ダニエルとジェーン、スタンバイの上條 駿、栗山絵美、湊 陽奈、安福 毅も含めた全員でのフォトセッションを行った。
安蘭けいは「とても楽しい稽古場です。あと3週間程度ありますが、きっとあっという間に過ぎて、どんどんよくなっていくと思います」、石川 禅は「歴史に残るミュージカルとよく宣伝していますが、お客様にとっても私たちにとっても歴史に残るミュージカルになると思います。一致団結してやっています!」とアピール。
浦井健治は「笑いの絶えないカンパニーです。スタンバイのみんなも一緒に、全員で作っている感覚です」と語り、加藤和樹は「自分のためというより人のために、周りを見て一つひとつクリアにして、最高の作品を作っていきたいと思っています」、咲妃みゆは「稽古を通して作品に対する愛や理解が深まっています」と、カンパニーや作品に対する思いの深さを伝える。
シルビア・グラブは「濃いメンバーで、すごく楽しみながら作っています。客席から私たちを応援しに来てください」と呼びかけた。
田代万里生は「初日まで4週間程度で通しを行いました。ここからどんどんブラッシュアップして、万全の体制で初日を迎えたいです」、橋本さとしは「2曲披露するだけで疲れましたが、見てもらったことですごく気合が入りました」、濱田めぐみは「愛すべき皆さんと楽しくやっています。このエネルギーのまま突っ走って素敵な初日を迎えたいです」と意気込む。
森 公美子は「歌やお芝居に加えてセットの転換もやるので色々なことを覚えなきゃいけなくて奮闘しています。面白いものを見せられると思います。音楽も踊りも素晴らしいです」と見どころを語り、柚希礼音は「人と人が支え合う話を、カンパニーみんなで支え合って作っています。支え合わないとできない作りになっているらしく、さすがだなと思いました。絆が生まれて、それをお届けできるよう頑張ります」と話す。吉原光夫は「和気あいあいとしたカンパニーです。ダニエルがゆっくりたっぷり稽古をしてくれるし、ジェーンは僕らができなくても痺れを切らさずに教えてくれる。さっきダニエルが言ったように、辛い状況でどれだけ人に優しくできるかがこの作品のテーマ。自分が辛い時に誰かに愛を注げるように精進します」と語る。
ダニエルの「日生劇場でお客様とご一緒できるのを楽しみにしています。日本のお客様にも本当に楽しんでいただける作品だと思います。ディティールの多い作品で、何度見ても発見があります。まだまだ稽古は続きますが、この物語をお届けできるのを本当に楽しみにしています」という挨拶の後、全員の声を受けた橋本が「僕らの気合を皆さんにお届けしたいと思います!」とカウントを始めるが、「1、2、3……」にキャスト陣は「え?」「どれ?」とざわざわ。改めて打ち合わせをし、カウントに合わせて全員で「Screech!」と声を合わせて取材会を締め括った。
ミュージカル『カム フロム アウェイ』
2024年3月7日~29日
日生劇場
大阪 愛知 福岡 熊本 群馬ツアー公演あり