取材:記事・写真/RanRanEntertainment
『自分が感じたものや考え、生きてきたことを総動員させてやっていきたい(水)』
『真拆は先を想像するために表現していく非常に重要な役どころ(久保田)』
――それぞれの役について、初めはどのような印象を持たれましたか?
水:いつまでたっても高子が出てこない!(笑)。でも読み進めていくうちに、語りべの部分が高子であり、真拆であり、真拆の情熱であるといった、いろいろなものを語っていくので、語りの部分が非常に大事なのだなと思います。高子というよりも語りべ=高子であり、語りべと高子は多面性のある役どころなんです。高子に関してはずっと最後のほうに出てくるので、ぼんやり見えるけれど今は「これだ!」という確かな手ごたえがまだない感じ。自分の感情を表現するにあたっては、自分が感じたものや考え、生きてきたことを使う以外はないので、それらを総動員させてやっていきたいと思っています。最終的には誰の心の奥底にも潜んでいるであろう“欲望の塊”なのかなと思いますね。
――久保田さんの真拆役は現代的な感覚持つ主人公ということですが。
久保田:正直、この作品を最初に読んだときには何を言っているのかわからなくて(苦笑)。文だけを見たら昔ながらの言葉使いだったり、漢字だったりするのでまずそこを変換するのに時間がかかりました。読んでいけばいくほど、これは現実の世界の話なのか、夢の世界の話なのか、虚構か現実か夢か現か、過去か未来か、もう何が何なのかわからなかった。最終的に真拆がどうなったのかも描かれていなく、それ以降のお話は、読んでいただいたみなさんの想像次第でいろいろ変わっていくだろうし、これはやりようによってはどうにでもなるなと。思う存分楽しんでやっていきたいです。
――今回、真拆役として彩吹真央さんもWキャストで出演されます。宝塚以来の男役でしょうか。
水:おそらくそうだと思います。男女で同じ役ってどういうことかと思いましたが、やればやるほど男と女とか関係ないもっと深い人間の根源的なところから“魂の叫びの語り合い”のような感じで、実際やってみるとなるほどなと。もちろん二人はまったく違う“真拆”ですけど男や女であることを超越した作品だと感じますね。
久保田:別の現場が被っていて最近合流したので(苦笑)。
水:合流したとたんに、「じゃあ一部通しましょう!」と急に通し稽古したんだよね(笑)。ずっとゆみこ(彩吹真央)とやっていたので何か新しい風が吹いた感じでした。解釈は同じように谷さんが導いてくださっていますが、表現方法がまったく違うので自然にこちらも変わっていく感じがしてすごく面白いですね。
久保田: やはり演じる人間が違うので。それぞれの呼吸の仕方や間など、また感情を受け取ってから解釈して発する言葉などもすべてタイミングで変わってくると思います。受け取る水さんは大変だと思いますけど(笑)。
水:でも楽しいですよ。谷さんも「あえて男と女だからと二人を変えるつもりもなくて、同じようにやるからこそ、違いが出てくるものになったらいい」とおっしゃっていました。
――久保田さんは別のお芝居をやられていて、そのまま引きずった状態でこちらの稽古をするのは大変だったりしませんか?
久保田:僕はそこを切り替えられる人間で、役に引っ張られないんですよね。
水:そうなんだ~。
久保田:使っている脳が違うのか、現場に入るとそれだけしか見えなくなってしまうんです。そこは便利かなと思っています(笑)。
――お稽古されていて、苦労している部分はどんなところでしょうか?
水:語りべの彩り豊かに、緩急高低をもっともっと幅広くやること。高子の最後の表現が言葉面だけの表現にならないようにどこまで掘り下げていったらいいのかを模索中です。たとえば、「あなたを殺すことなどできません」。言葉としては「あなたを殺すことはできない」という一つの事実ですが、高子のいるポジションによって文字面と表現が変わることを言葉だけで伝えなければいけない。自分の中で確信をもって言ってないと曖昧になってしまうから、自分がなにを思って言っているのかをクリアにする。そこの確信を早くつかみたいです。
久保田:真拆は25歳の青年で、神経衰弱の気鬱があるという設定のもと、気晴らしで外に出たら日傘の女性に出会い、「なんだ、この人は」と思っていたら、お爺さんに出会い、蝶に出会い蛇に出会い……次第に何かに導かれていく中で、急に夢の中で出会った人といままで出会った人がリンクし始めていく。そんな彼の気鬱な部分が徐々に表れていく様子や最初と最後の心情の変化、高揚する起伏の波を表現できたらいいですね。終わる頃にはきっと、この真拆は見違える人間になるんじゃないかなと思います。最終的にどうなったかは書かれていませんが、先を想像するために大事にステップを踏んで表現していく非常に重要な役どころなので難しいです。
水:本当に難しいよね。言葉と裏腹な世界というか、言葉自体も難しい。真拆という人も難しいから(苦笑)。普遍的に人間は、誰しも一度は“自我”について考えたことがあるでしょ?自分の自我とか。私はあまりないんですけどね(笑)。
久保田:アハハ!ないんですか!(笑)。
水:誰でも多少は心当たりがあるようなものを真拆は抱えているので、そういう意味では自分が真拆になって、一緒にドキドキやワクワクして共感しながら観られるのではないかと思いますね。
『谷さんは自分の感性に敏感な人、感覚で捉えて言葉にする感じがヘンタイ(笑)』
――初タッグを組まれる演出の谷賢一さんはお二人からみたどのような方ですか?
水:印象的なのは「僕、わからないときはわからないと言いますから」とおっしゃるところ。すごくいいなと思いましたね。
久保田:ストレートですよね、上手く言おうとせずに思ったことを言われます。
水:「なにか正解をいわなきゃ」というところがないし、「これどうですかね?」と質問しても「え?わからない」ってすごく正直(笑)。確かに誰もやったことがないことやっているのだからわからないですよね。演出家が何もかもわかっている必要もないなって。だから、みんながあらゆる知恵を集めて話し合い、谷さんの心の中に答えがあったとしても、プランナーやアーティストの意見が入ったら「では、とりあえずやってみましょう」と言われる。そこがすごく素敵だなと思いますね。ヘンタイですけどね。
一同:爆笑
――(笑)。どういったところがヘンタイなのでしょうか?
久保田:この台本に書かれていること、たとえば性的描写として考えてそれを包み隠さず言っちゃうところ(笑)。普通はオブラートに包んで言うことをパッと言ったりされるところとか。まあ、そこだけでなく根本がヘンタイなんだろうなと思います。
水:(笑)。このヘンタイの感覚、なんて言ったらいいのかな。
久保田:プレイヤーと演出の立場でなく両方の立場をわかっているから、今回、題材をもらったときに実際、十津川村まで行かれていましたし、きちんと下調べもされていらっしゃるところは役者気質なのかなと思います。
水:すごく自分の感性にとても敏感な人だなと思いました。ピアノを聴いた時に「僕にはこう表現しているように聴こえたんだけど、間違っていたらごめんね」とか。聴くとか見るとかでなく、感覚で捉えてそれを言葉にしてくれるからすごく理解しやすいですね。たぶん、その感じがヘンタイ(笑)。
久保田:爆笑。
水:谷さんの頭の中や見えているものが普通と違うな、という感覚がすごく感じるんですよね。そこがヘンタイ、何度も言うけど。でもそこが好き(笑)。
一同:爆笑。
水:以前、谷さんが座禅をしていたと聞いて今回、私も座禅しているんです。でも座禅ってなかなかできないですよ。見えているけれど見ていない。聞こえているけど聞いていないという状態。本当に毎日やっているけれど、なかなかできないよ。
水:自我というものにぶつかった後に、「そこで消化しきれないから自分ではないものと一つになることで消化できるんじゃないか」と考え、情熱の矛先を向けるけれど、それが自然のもっとも神秘なる美と一つになることによって消化されるであろうということに辿りつく。空間や自然と融合して自分というものを空っぽにして無くすというのが座禅らしいのですが、そういうこともやっていた人だからヘンタイだなって(笑)。実は私も宝塚時代に瞑想みたいなことをやったことがあるので、今は雑念が浮かぶことはあまりないんです。でも、見えるし聞こえる。今回はちょっと真拆の気鬱に寄り添おうかなと思ってやっているんです(笑)。
久保田:へえ~!僕もやってみようかな(笑)。割と神秘的なもの嫌いじゃないので。
水:そうなんだ。でも、そんな谷さんですが死後の世界や幽霊は絶対信じないらしいです。一回だけ不思議体験をしたことがあるらしく「それはどう説明するんですか?」と聞いたら「それは説明できない。でも信じない」って言っていました(笑)。
一同:爆笑
――では、舞台に関して谷さんから何か要望はありましたか?
水:たくさんありましたよ。谷さんの中でイメージがあるものの解説などは非常にわかりやすいので。緩急と高低と幅をもっともっとつけてほしいと言われました。
久保田:文字面だけに引っ張られないようにと。「神経衰弱で気鬱」と文字だけみたら暗いなと思って、始めは暗く本読みしたんです。でも、谷さんから「そこはあまり暗くやらないで。ここは明るくやって」と。また、「急に人間が変わったようにキレる人の感覚でこの台詞を言ってみて」などいろいろチャレンジさせてくださるので、そこは嬉しいですね。
『「一月物語」という世にも美味しいパンが出来上がるはず!』
――お二人は初共演ですが、(久保田さんに)水さんとのお芝居はいかがですか?
久保田:朗読劇というものに滅茶苦茶慣れている方だなと。語ることに対してスッと入ってくるというか、お客様がストーリーに入ってきやすいベースを作るのが上手で、物語の世界に入りやすいなめらかな声のトーンで表現される方だなと思いました。
水:最初は上手なナレーターみたいな感じになってしまって。これならプロのナレーターの方でいいんじゃないかと思いましたけど(笑)。でも、今は私がやる意味を意識してやっています。いままでやったことのない難しさを感じていますが楽しいです。現場で音楽と踊りと役者の声とが、今ミックスされて形ができていくことが楽しいですね。谷さんのつかみどころのないようなオーダーから(笑)振り付けの宝満さんが「じゃあこうしましょう」と提案されて試してみるとか、音楽がまったく変わったりするところとか、そういったことがすごく面白いですね。ただ気になっているのは、稽古場で横関さんの踊りが私たちの位置から見えないことなんです。カーテンを閉じていて鏡越しに見えないのが超残念~(笑)。
久保田:視界のギリギリ見えないところで踊られているんです。
水:でも、見てしまって答えが見えるよりも「こんなダンスをやっているのかな」という気配を感じながら、横関さんが表現する蛇や闇などを想像することがいいんだと思う。さらに、これに映像が入ってくると絶対に面白いはず!アーティストプランナーのみなさんがそれぞれ頭の中に持っているものを総動員してこねてこねて……きっと世にも美味しいパンが出来上がるはずです!(笑)。
久保田:アハハハ!(爆笑)
――(水さんに)お稽古場での久保田さんの印象は?
水:非常に好青年だなと思います。谷さんも久保田くんのビジュアルが気鬱な真拆にぴったりだと言われていて(笑)。今の若いエネルギーもあって、プラスの面だけではないものも持ち合わせているだろうなと。声も明晰だし男性的なパワーもあるので、今の久保田くんのいろいろな面がリアルに役に投影されれば、魅力的な真拆になるだろうと思いますね。
久保田:ありがとうございます(照れ笑い)。
――ファンのみなさんへメッセージをお願いします。
水:夢幻朗読劇って聞いたことがないし、誰も知らないし、谷さんが勝手に作った言葉なのですが(笑)。最初は「一月物語(いちげつものがたり)」も何て読むのかわからないし、なんで「いちがつ」にしないんだろうって(笑)。
一同:爆笑
水:おまけに小説も難しいし、もうわからないことだらけなんですよ。でもこれはもう観るしかない。「百聞は一見にしかず」とはこのこと。観ていただけたら必ずや見たことがないような世界を体感できると思います。“作品とあなた”みたいな一対一の気分になれるはずです。アトラクションみたいな感じになるといいですね。受け身ではなくて、お客様も物語に巻き込まれていくような感覚になれるのではないかと思います!感動してほしいし、明日へのエネルギーに繋げていただきたいです。絶対に人生観が変わると思う作品です!
久保田:演劇ならば想像はつきますが「朗読劇とは何だ?」というところも多いと思うんです。(水:わかる!)「ただ本を読むだけなんでしょ?」というイメージがありますけれど、とにかくだまされたと思って一度観に来てください。チケット代以上のものは提示できると断言できますので。それ以上の世界観をお客様にお届けできる自信があるので、とりあえず観に来てください。「こんな作品あったのか!観ておけばよかった!」と後悔しないためにも是非観に来てください!
貴方に会う為に、私は戻ってきた。
――夢か現か……いま夢幻世界の幕が開く。
芥川賞作家・平野啓一郎の代表作『一月物語』。
幻想的で、日本の古典的な妖しさを漂わせた物語を、
朗読と音楽と身体表現を織り交ぜ、珠玉の朗読劇として上演
夢幻朗読劇『一月物語』
原作:平野啓一郎
構成・演出:谷 賢一
音楽・演奏:かみむら周平
振付:宝満直也
出演:水夏希 / 横関雄一郎 / 榊原 毅 /彩吹真央・久保田秀敏(Wキャスト)
公演期間:2018年3月7日(水)~12日(月)
チケット:全席指定:7,800円
会場:よみうり大手町ホール
公式ホームページ http://ichigetsu.com/
■プロフィール
水夏希(みず・なつき)
千葉県出身。1993年宝塚歌劇団入団、2007年雪組男役トップスターに就任。宝塚歌劇の代表作『ベルサイユのばら』では、オスカル、アンドレなど主要4役を演じ、宝塚初の天覧公演の主役も務めた。2010年退団後は、舞台を中心に活動中。主な出演舞台:『7DOORS~青ひげ公の城』、『客家~千古光芒の民』、『屋根の上のヴァイオリン弾き』、『新版 義経千本桜』、『FLAMENCO CAFÉ DEL GATO』、ブロードウェイミュージカル『シカゴ』宝塚OGバージョン、『エリザベートTAKARAZUKA20周年 スペシャル・ガラ・コンサート』、ミュージカル『アルジャーノンに花束を』等。今夏、ミュージカルコメディ『キス・ミー・ケイト』出演予定。4月6日(金)~ 4月7日(土)COTTON CLUBにてCOTTON CLUB LIVE「Middle of the journey」を開催する。
■久保田秀敏(くぼた・ひでとし)
1987年1月12日生まれ。福岡県出身。身長:175cm血液型:O型
スカウトにより芸能界入り、ドラマ、舞台と多彩な活躍を繰り広げている注目の俳優。テレビドラマ「JIN-仁-」や大奥シリーズ「第二部~悲劇の姉妹~」(2016年)」などに出演。映画「新宿ミッドナイトベイビー(2016年)」「ディアスポリス(2016年)」。
舞台「ミュージカル・テニスの王子様2ndシーズン」にて仁王雅治役で出演。一躍人気を獲得。その後も同シリーズ作品に多数出演。舞台「心霊探偵八雲 いつわりの樹」主演。「私のホストちゃん」シリーズではテレビドラマ版、舞台版共に流星という同じ役で出演、代表作に。
久保田秀敏オフィシャルブログ「Clear file」Powered by Ameba
久保田秀敏 (@kubotahidetoshi) | Twitter
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