取材:記事・写真/RanRanEntertainment
文豪・坂口安吾の名作をほさかようが演劇リメイクした舞台『白痴』が3月28日(水)に開幕した。初日公演前には、公開舞台稽古が行われ、小早川俊輔ら出演者たちが、妖艶な世界の中で熱量の伝わる演技を見せ、会場に訪れたマスコミをはじめとした観客を魅了した。
本作は、1947年に坂口安吾が発表した小説をほさかようが演劇リメイクした作品。時代は、戦争下の日本。林立する安アパートの半分以上が軍事工場の寮となり、そのほとんどの部屋では妾と淫売が暮らしている街の一角に、若手の映画演出家である伊沢は暮らしている。伊沢が住む部屋は、この街の“仕立て屋”が持つ寮で、隣家には、町でも有名な資産家ながら「気違い」の一家が住んでいた。
ある日、気違いの妻である白痴の女が、伊沢の部屋に隠れていた。どうやら彼女は義母から逃げ出してきたらしい。その日から、二人の秘密の同居生活が始まる…。
主人公・伊沢を演じるのは、本作が初主演舞台となる小早川。小早川といえば、ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンを始め、舞台やテレビで活躍中の俳優だ。小早川は、初日に向けて「濃厚な稽古も終わり、いよいよ初日の幕が上がろうとしています。今作品の魅力の一つは、主人公の伊沢を中心に、目まぐるしく場面が展開されていくところです。その臨場感や関係性を生み出すために、座組が一体となり共に闘い、ここまで進んで来ました。その時間を大切に、作り上げてきたものを真摯にお客様にお届けしたいと思います。是非、劇場で楽しんで頂けると幸いです」とコメントを寄せた。
また、脚本・演出を務めるほさかは「古典と呼ばれる文学作品を扱うには覚悟がいります。穿った解釈をしていないだろうか。原作をなぞるだけになっていないだろうか。今、この時期に上演する意味を見出せているだろうか」と本音を吐露。しかし、「座長の小早川俊輔はじめ、出演者、スタッフ共に誰一人守りに入らず、果敢にその答えを探し続けてくれました」と続け、「手応えはあります。坂口安吾が描いた『白痴』という作品の、新たな一面を見つけられたのではないかと。どうぞご期待ください。応えますから」と本作への自信をのぞかせた。
公開稽古では、理想を掲げ、醜いものを嫌悪しながらも、職をなくすことを恐れ、周りを気にする青年を熱演する小早川の姿が深く印象に残った。さらに、佐伯亮、中村龍介ら脇を固める出演者たちも相まって、作品全体が狂気に満ちた空気を醸し出し、まるで幻想空間に迷い込んだような世界観を見せてくれた。
原作の坂口安吾による『白痴』は、いかようにも読み解ける作品で、難解な文学であるともいえるが、本作ではほさかが導き出した、その答えの一つを見せてくれる。原作を読まれた方も、未読の方も、ここで描かれる、“『白痴』という作品の、新たな一面”をぜひ、体感してもらいたい。
舞台『白痴』は3月28日(水)~4月1日(日)にCBGKシブゲキ!!にて上演。