10月6日、韓国・釜山で開催された第17回釜山映画祭において、米国アカデミー賞外国語映画賞 日本代表作品に選ばれたヤン・ヨンヒ監督の長編デビュー作『かぞくのくに』が公式上映され、上映後ティーチインが行われヤン・ヨンヒ監督、安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュンが登壇した。
まず、監督から「私が、なぜこの映画を作ろうと思ったのか、映画を観て頂ければわかると思いますが…。」と挨拶の後、質疑応答が行われた。
Q:この映画を劇上映画にしようと思われたのはなぜですか?
ヤン・ヨンヒ監督:二つ作品同時に映画を撮りましたが、撮る順序がこうなっただけで、15年かけて2つのドキュメンタリーを作るうち、あることが起こったんです。兄が現れたんです。89年ごろですが、家族ドキュメンタリーを作りたくてNYで映画の勉強をしていました。それで兄が戻ってくるというので日本に帰りました。兄と一緒に兄の同窓会の席に行ったり、兄の昔の恋人に会いに行ったりと、いつも兄にくっついて歩いていました。そうしているうちに、なんだか本当の映画みたいだと思いとても劇的でした。
なぜ久しぶりに兄に会ったのに、こんな話をしなければならないかという事に頭にきたり、妹として悲しい思いもありました。また、逆に「これは本当に劇的な話だ。映画にしなければ」という思いが湧き出てその時から考えていました。(笑)もう10年以上前からこれをいつ映画にできるか考えていました。そこで今回これをドキュメンタリー形式にして、カメラの前では言えないような心の奥底にあることを表現するには劇上映画しかないと思いました。微妙な内容なので、取り上げてくれるところがなかなかなく、プロジェクト自体が無くなるかと思ったのですが、クレイジーな?会社の社長(会場の席に座っている方を指しながら)が、「うちの会社でひとつでやりましょう」と言って下さり実現しました。
Q:今後の作品についてと「かぞくのくに」の演出について
監督:もう家族のドキュメンタリーは作らないです。
今回の作品は再現ドラマを作ろうと思ったわけではないので、俳優の方にはその時の心情だけを説明しました。とても良く理解して演じて頂けました。
Q:この作品に出演して
安藤サクラ:この映画が韓国で上映されることが信じられず混乱しています。正直、自分自身に受けるショックが大きく、何故かとても腹ただしかったです。
井浦新:この映画が韓国で上映されることに価値を感じています。また、いろいろと難しい問題がありますが、是非皆さんに観て頂ければと思います。
ヤン・イクチュン:感極まり涙し言葉がつまる。会場からは拍手が沸き起こった。
Q:言葉について大変ではなかったのか?
井浦新:やはり韓国語を話すことは大変でしたが、映画がしっかりとしていたので言葉は関係なく思いが大切だと思いました。
Q:作品を選ぶ基準は?
井浦新:私は出会いしかないと思っています。
Q:この作品に出演するきっかけは?
ヤン・イクチュン:私は、以前は話があれば何でも出演していましたが、最近は自分の感覚で出演しています。監督には日本でお会いしお話をさせて頂いて感動したのと、映画「息もできない」の配給会社の方とのご縁が有り出演させて頂くことになりました。
一番は、この作品が素晴らしいので、是非出演したいと思いました。
監督自身が「日本語で説明するより韓国語で説明した方が皆さんに理解されますよね」と韓国語で説明。会場は熱心な映画ファンで埋め尽くされ熱いティーチインとなった。
【あらすじ】
25年が経過して、兄ソンホがあの国から帰ってきた。妹リエが心待ちにしていた兄の帰国。ソンホは70年代に帰国事業で北朝鮮に移住した。病気治療のために3か月間だけ許された帰国だった。25年ぶりの家族団欒は微妙な空気に包まれる。一方、かつて同じ場所で学び青春を謳歌した、ソンホ16歳時の仲間たちも彼を待っていた。同じ空気を共有しなかった25年間は家族に、友達に、何をもたらしたのか・・・。2012年日本インディペンデント映画を代表する傑作。
出演:安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュン、京野ことみ、大森立嗣、村上淳、省吾、諏訪太朗、宮崎美子、津嘉山正種
監督・脚本:ヤン・ヨンヒ 企画/エグゼクティヴ・プロデューサー:河村光庸 プロデューサー:佐藤順子/越川道夫
宣伝プロデューサー:竹内伸治 製作:『かぞくのくに』製作委員会(スターサンズ/角川書店) 制作:スローラーナー
宣伝協力:ザジフィルムズ 配給:スターサンズ [2012年/日本/カラー/100分/16:9/HD]