2016.07 取材:記事・写真/RanRan Entertainment
――お互いに求めるものが違う夢二とたまきは、葛藤しながらも離れられず、別れたりヨリを戻したりを繰り返します。「別れたいけれど別れられない」という気持ちはわかりますか?
まったくわからないですね(笑)。僕は人にも物にも、そんなに強い執着はないので…。僕がやめられないものといえばタバコくらいかな。嫁からやめるようにたまに言われますけど、やめられないですから(笑)。
――夢二とたまきは取っ組み合いのケンカをするような激しいシーンもありましたが…。
僕には女性に手を上げるという概念がないので、新鮮なシーンでしたね。でも、台本を読んだとき、夢二もたまきも、どちらの意見も正論といえば正論で、どちらかが悪いわけではないと思ったんです。なので、2人が言い合う姿が滑稽に見えるように演じました。
夫婦というか、男女がお互いに何かを求め合うと、たぶん、あんなふうに噛み合わなくなってしまうのだと思うんですよね。実際の僕の夫婦関係は、もちろん愛情はちゃんとあるけれど、お互いに「相手に何かを求めることはナンセンス」と考えている2人が一緒にいるという感じなんです。だから、夢二とたまきのように、相手に激しく何かを求めるような気持ちは、僕自身の中にはまったくないですね。
――もし駿河さんが、たまきのような女性に激怒されたらどうしますか?
たぶん、「ああ、怒ってるな~」と思いながら、何も言わずに、その怒りの波が過ぎるのを待ちます(笑)。相手に手を上げられたら、止めることはするかもしれないですね。止めて、ぐっと抱きしめて「ごめん」って言う(笑)。よくわからないけど、とりあえず謝っておく(笑)。でも、うちの奥さんは、たまきのように怒ったりしないと思うので大丈夫です。器の大きい人なので、だから僕と結婚したんです(笑)。
――たまき役の黒谷友香さんとは撮影現場ではどんな雰囲気でしたか?
夢二とたまきは葛藤のある間柄だったので、現場では黒谷さんとほとんど話しませんでした。すごく役作りに徹するタイプなんだなと思って、僕も距離を置くようにしていたんです。
――彦乃役の小宮有紗さんとは?
共演は初めてだったんですけれど、夢二は彦乃に甘えるようなところがあったので、僕も現場で夢二みたいな感じで小宮さんにひっついていました(笑)。朝から晩まで撮影があってしんどかったので、「俺の癒しはここしかない」という感じで、ずっと相手をしてもらっていたんです。15歳くらい下なんですけどね(笑)。世間話をするくらいなんですけれど、もう、そこにいてくれるだけで癒されました。
今回、自分の芝居に関しては本当に反省点が多いんですけれど、黒谷さんの演じるたまきと、小宮さんが演じる彦乃が、すごく対照的な存在でいてくれたおかげで夢二が成立したと僕は思っているんです。現場にも役柄につながるような雰囲気があって、芝居にもいい影響があったんじゃないかなと思います。
――駿河さんが思う、この映画の見どころを教えてください。
撮影や美術、音楽も含めてなんですけれど、細部までこだわりのある作品なんです。障子の後ろの影とか、ちょっとしたライティングとか、全体的にすごく凝っているので、ぜひ大きなスクリーンで見てほしいですね。それと、時代背景もとても魅力的だと思います。西洋のものと日本の文化が絶妙に入り混じっていて、昔のものとその時代のものもうまく混在していて、「ああ、いい時代だな」と実感できる。日本って、そういうものがだんだん少なくなっていると思うんですよね。だから、そういういい時代の日本を感じてもらえるとうれしいです。海外の人にも見てもらいたいですね。
前編~https://ranran-entame.com/wp-ranranentame/movie/41409.html
駿河太郎
1978年6月5日生まれ。03年より音楽活動を開始。08年、俳優へ転向。11年のNHK連続テレビ小説「カーネーション」のヒロインの夫役で注目をあびた。「半沢直樹」「ラヴソング」などのドラマをはじめ、映画、舞台でも活躍。本作で、Japan Film Festival LA 2015優秀主演男優賞を受賞。16年は、9月に映画『真田十勇士』、10月に『湯を沸かすほどの熱い愛』が公開、8月に自身初となる歌舞伎「廓噺山名屋浦里」に出演、9月に舞台『真田十勇士』に出演。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/suruga-taro/
Story
大正時代。夢二(駿河太郎)は、自らの絵を売る店を営みながら、美人画のモデルでもある妻・たまき(黒谷友香)、息子とともに暮らしている。しかし、生活のために絵を描く毎日に、芸術家として葛藤を覚えていた。ある日、運命の女性・彦乃(小宮有紗)と出会う。やがて、たまきとの関係は崩壊していき…。
7月30日より全国順次公開
■原作:野村桔梗「竹久夢二のすべて」(駒草出版)
■監督・脚本:宮野ケイジ
■出演:駿河太郎、小宮有紗、加藤雅也、黒谷友香ほか
■2015年/日本/108分
■配給:ストームピクチャーズ