映画『ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿』
スカラ座史に残る伝説の指揮者トスカニーニ、
オペラ『トゥーランドット』にまつわる感動秘話が明かされる!
12月23日よりロードショー公開中
ダニエル・バレンボイム
「トスカ」「蝶々夫人」を作曲した、ジャコモ・プッチーニ。オペラ好きならずとも間違いなく耳にしたことがある、名歌曲の数々。実際、一年の中で最も重要なステージとされる、オペラシーズン初日(12/7)が今年も幕を開け、演目はプッチーニの「蝶々夫人」初演版が選ばれた。実は、この1904年のオリジナルの初演版は不評につきブーイングの嵐となったいわくつきの作品で、今年はなんと“112年ぶりに再演”ということでも大きな話題となっている。やじが飛んだ1904年の初演とは異なり、今年の公演には13分間におよび起立しての拍手喝さいが送られた。
意外なことに、プッチーニは生前、オペラに重厚な芸術性が欠如されているとし、大きく評価が分かれる音楽家だった。そんな彼が見直された背景にあったものとは――映像では、1898年からスカラ座の音楽監督も務めた指揮者アルトゥーロ・トスカニーニとプッチーニにまつわる逸話が明かされる。
フィギュアスケーター・荒川静香が演技に使用したことで一大ムーブメントを起こしたプッチーニ作「トゥーランドット」は、1926年にスカラ座で初演を迎えた。しかし、プッチーニは楽曲を仕上げる前に亡くなったため、未完の遺作として、トスカニーニは指揮を振る。トスカニーニは、演奏の途中で突如指揮を止め、プッチーニが“その部分で息を引き取った”ことを告げ、劇場を大きな感動の渦に引き込んだのだ。他の劇場では考えられない“事件”だが、トスカニーニの熱い信念がなせる業は後世にも語り継がれ、結果的にプッチーニの音楽家としての評価を底上げする契機にもなった。
その後もトスカニーニは、オーケストラ・ピットを低くしたこと、女性客に帽子を取らせてアンコールを禁止し、聴衆の注目を歌手や作曲家から指揮者へと変化させ、衝撃の変革を次々と行っていく。ワーグナーやドビュッシーといった外国の作曲家の新しい曲もレパートリーに取り入れ、その後のスカラ座の礎を築いていった。
映像では、スカラ座と縁が深い、音楽学者のフランコ・プルチーニ、指揮者のフランチェスコ・マリア・コロンボ、元音楽監督のダニエル・バレンボイムらがエピソードを語るほか、ワーグナー作「トリスタンとイゾルデ」の2007年上演版のアーカイブも盛り込まれている。
映画『ミラノ・スカラ座 魅惑の神殿』は、Bunkamuraル・シネマ他12月23日より全国ロードショー公開中