取材:記事・写真/RanRanEntertainment
『お芝居では相手との距離感が大事だと思う』
――粘って作り上げたシーンは具体的にどんなシーンでしたか?
京都の素敵な和風レストランでジャッキーと食事をするシーンが私の初日だったのですが、その日がワン・ポーチエさんと初対面した日で、しかも英語でかなり長い会話をするシーンだったんです。お芝居でいつも考えることは、相手との距離感が大事だということ。尚子とジャッキーのような昔の恋人との距離感を、初めましての状態で演じなければならない時などは、二人の距離感をいかに現場で詰めていくかを考えます。お芝居の中でどう距離感を表せるかが俳優としての課題や難しさだと思うんです。
ワンさんがふんわりとした非常に話しやすい方だったので、その雰囲気に助けられた感じもありますね。また、尚子が何か伝えようとしたけれど言い出せないという微妙な感情を出すお芝居では監督が「角度を変えるからいろいろトライしてみて」と言って結構粘って撮影してくださいました。また、後半、尚子の結婚前日にジャッキーが「I love you」と告白するシーンで、尚子のちょっと揺れるけれど思い留まるところは大事な部分だったので粘って演じましたね。このシーンは夜中の住宅街で限られた時間内で撮影したんですけど「感情をもっともっと」と追及してくださって。ここは台本で思い描いていた温度感と違う部分があったので、監督が思うイメージに合わせつつ、いままで作ってきた尚子像をどう寄せていくか、すごく考えさせられたシーンでしたね。監督のディレクション(指示)は台本で読んだ時よりも「ジャッキーに対する未練を強くした方がいい」とのことだったので現場で微調整しました。
――全体的な見どころは?
私も日本という国を出て韓国で活動をしたことで、改めて日本の良さに気づいたのですが、日本人があまりにも身近すぎて流してしまっている部分や日本の古くから伝わる配慮の気持ちというものを気づかせる作品だと思います。ジェイ監督という海外の方が切り取ったことで改めて気づいた気がしますし、日本の良さを振り返えられる大きな魅力がある作品だと思います。
――日本の良さはどんなところだと思われますか?
日本ならではの個性というとやはり奥ゆかしさでしょうか。韓国では、言いたいことや感情などもはっきり伝えるアメリカっぽいところがあります。日本にいるとお互い察し合って伝えないところがありますよね。自分はまさに日本人らしい性格なので、渡韓した初期の頃は「ここまでズバッと言うんだ」と驚きました。日本人は物事をはっきり言わないし、はっきり言うのに慣れていないから日本式のやり方で海外に出た時の苦労はあります。切り替えないと負けちゃう(笑)。でも、日本ではそれが普通でお互いに通じ合えるからすごいですよね。それも日本の魅力の一つとして捉えていいんだなと思いました。
『結婚するならいろいろなことに余裕をもって結婚したい』
――演じられた尚子についてはどう捉えましたか?
尚子役については、女性として結婚前にはこういう葛藤ってみんなあるんだろうなと思いました。私はまだ結婚していないですが(笑)。恋愛面において振り返られるような役だと思います。
――では、ご自身の結婚願望についてはいかがですか?
結婚願望はありますが、まだ自分の中で準備が整っていない気がして。それにはまず相手を探さないと(苦笑)。あとは、もっと料理や家事ができるようにならないといけないかな。今は自分のことで精一杯だから。結婚するならいろいろなことに余裕をもって結婚したいです。私の周りも年齢的に結婚する人が多くなっていますが、自分はまだまだですね。母親が26歳ぐらいで結婚しているので若い頃は26歳で結婚すると思っていたのですが、とりあえず今は34,5歳くらいに設定しておきます(笑)また引き上がるかもしれませんが(笑)。
――ちなみにどんな男性がタイプですか?
恋愛においてリードしてくれる人がいいというのは昔から変わらない気がします。甘えたいのかもしれません。私が引っ張っていくタイプではないので、引っ張っていってくれる人がいいですね(笑)。
――結婚といえば、韓国の高視聴率バラエティ番組「私たち結婚しました 世界版」(2013年)に出演され話題になりました。仮想夫婦役で共演したFTISLANDのイ・ホンギさんを日本で案内されたことはありますか?
たぶんあの人は、私より日本に十分詳しいと思うので案内することはなかったですね。日本にはよく来ていると思うのですが、とてもお忙しい方なので今はどこの国にいるのか、わかりません(笑)。当時、番組内では韓国語で話していましたが、ホンギさんは日本語が本当に上手なのでカメラがないところでは日本語で会話していました。
――タイトルになっている「おもてなし」。ご自身がお客様や友人をもてなす側としたら、どのようなことを大事にしたいと思いますか?
韓国語を話せるようになると外国の友達が増えて日本のことを紹介するようになり、逆に日本人の友達が韓国に来たら私が案内する機会が増えたので、こういったことが国をまたぐということなんだなと経験してわかりました。“おもてなし”は自分を出さずに相手の視点に立って考えることが理想なのかなと思うんです。最近、日本ではめったに会わない友達が韓国に来たので、その子の好みややりたいことを考えてガイドしてあげました。もてなすことによって相手のことを察するということは、人間関係について考えるきっかけになりましたね。友達に「ありがとう」と感謝されましたが、私も「ありがとう」という気持ちになりました(笑)。この映画でもそういったメッセージ性があるし、自分も何か得ている気がしました。
――最後に、この映画をご覧になる方やファンのみなさんへメッセージをお願いします。
映画『おもてなし』は、現実的にありそうな日常をじっくり描いていて、多くの人が共感して自分の中の引き出しをもう一度開けるような、また、日本のよさを振り返るきっかけになる作品だと思います。完成した作品を観て私も大好きになった映画なので、この良さをたくさんの人に伝えたいし、たくさんの人に観ていただきたいです!
■プロフィール
藤井美菜(ふじい・みな)
9歳の頃から市民ミュージカルの舞台に立ち、中学3年生の時に芸能事務所にスカウトされる。当初はCMを中心に活動し、2005年に出演した「インテル」のCMで話題に。
2006年の映画「シムソンズ」で女優デビュー。第88回全国高校野球選手権大会のイメージキャラクターを務める。2007年の主演作「ブロッコリー」でテレビドラマ初出演。2008年「雨の翼」で映画初主演。以降も「鹿男あをによし」や「ブラッディ・マンデー」、宿命」などの連続ドラマに出演。2012年からは韓国活動を始動、「私たち結婚しました」「ドラマの帝王」などに出演。2018年、キム・ギドク監督の韓国映画「人間、空間、時間、そして人間(原題)」に出演。
日本×台湾の合作映画「おもてなし」は2018年3月3日(土)より有楽町スバル座ほか全国順次公開。
公式サイト: http://omotenashi-movie.net/
【物語】
思い出が宿る場所
琵琶湖畔にある老舗旅館「明月館」が実家の梨花(田中麗奈)は5年前に父を亡くし、旅館を一人で切り盛りし続けている母・美津子(余貴美子)を支えるため、仕事を辞めて実家に戻ってくる。経営不振の中、美津子の大学時代の恋人であり台湾実業家のチャールズ(ヤン・リエ)が旅館を買収して、息子・ジャッキー(ワン・ポーチエ)を再建のために送り込んだ。しかし「おもてなし」の心を持っていないジャッキーに対して梨花は反発し衝突する。そんなジャッキーには、来日への密かな目的があった。それは、かつての恋人・尚子(藤井美菜)とやり直すこと。尚子に婚約者がいることを知ったジャッキーは諦めきれない想いを抱えながらも、尚子の結婚式が開けるように「明月館」を改装して、最後のプレゼントをしようと思いつく。同じく梨花も、不倫していたかつての上司に別れを告げ、人生の再スタートをはかろうとしていた。「おもてなし教室」を主催している木村先生(木村多江)との講義を経て、“日本のおもてなしの心”を学び始めたジャッキーだったが、ビジネスパートナーの黄が「明月館」を売却する手続きをしていることが発覚する。そんな中、ガンのために余命宣告を受けていたチャールズが倒れ・・・。