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Six TONESの松村北斗と森七菜がW主演を務める映画『ライアー×ライアー』が2月19日(金)より公開される。本作は、累計発行部数190万部を突破した大人気コミックを原作にしたラブコメディー。恋愛経験ゼロの地味女子大生・湊(森)が、親友に頼まれてギャルメイクで街に出た時に義理の弟・透(松村)と偶然出会ったことから始まる恋を描く。本作でメガホンを取った耶雲哉治監督に、撮影の裏話を聞いた。
耶雲哉治監督
――最初に原作のコミックを読んだ時の感想を聞かせてください。
僕は少女漫画は読み慣れている方ですが、その中でもすごく読みやすいなという印象でした。1巻冒頭のつかみも面白く、その後の展開もテンポ良く進んでいったので、どんどん引き込まれていきました。ただ、これを2時間の映画にするのは難しいな、と(苦笑)。それから、「ギャルメイクをしたことによって別人だと思われる」というのは、漫画ならではと言いますか、漫画だからこそ違和感なく受け取れる設定だと思うので、これを実写化する上でそこをどうするかは不安要素ではありました。
――原作は全10巻のため、映画化するにあたってエピソードもかなり選ばなければいけなかったと思いますが、どのようにして選んだのですか?
この作品は、湊が別人になって透と接するというライアー(嘘)があり、さらに実はもう一つライアーがあるというストーリーになっています。そこで、映画化するにあたって、もう一つのライアーを大きな山に持っていけるんじゃないかと考え、そこに向かってエピソードを精査し直すという作業を行いました。原作では、2つの嘘がバレた後もストーリーは続きますが、映画ではもう一つの嘘が明らかになるところを山場にする構成になっています。
――では、演出面ではどのような点を意識されましたか?
原作もそうですが、前半は特にコメディー要素が強いので、原作にあるスピード感は実写化する上でも守らないといけないと思い、いかに楽しく見せるかにはすごくこだわりました。今回、(松村)北斗くんも(森)七菜ちゃんもらぶコメディーをガッツリやるのが初めてで、苦労している様子が伺えたので、「もう少しテンポを早くした方がいいね」とか「ここはもう少し溜めた方がいい」という細かい指示は出しました。でも、2人ともすごく器用なので、撮影を重ねていくうちに、そのテンポを理解して、対応してくれたので不安はありませんでした。
――特にどのようなシーンで苦労していたのですか?
撮影初日に2人の自宅での登場シーンを撮影したのですが、そのシーンは七菜ちゃんがドアに頭をぶつけたりとまさにドタバタコメディーだったんです。そこからのスタートだったので、2人とも探り探りやっている感じがありました。ただ、コメディーシーンは2人ともすぐにテンポ感を取り入れることができるようになっていたので、苦労したという点では、コメディーよりも透とみな(湊が変身した姿)の1回目の別れのシーンだと思います。透が涙を流して、それを見たみなも泣いてしまうというシーンだったのですが、それまではずっとコメディー色の強いシーンを撮影していたので、シリアスなシーンがやってきてどうすればいいんだろうと悩んでいたようです。
――監督はそれに対して、どのようなディレクションをしたのですか?
なぜ泣くのかという透とみなの心情を紐解いて、言葉にして、彼らに話しましたが、こうしてほしいという具体的な指示はしませんでした。2人は自分の中で作り上げたお芝居をしていたので、それに対して僕が演技指導をするということはなかったです。その撮影はちょうど撮影中盤に行われたので、そのシーンを乗り越えたことで、後半の人間ドラマやラブストーリーのシリアスなシーンは順調に進んだと思います。2人が一皮剥けたような感じがしたので、それ以降は特に楽しんでお芝居できていたのかなと思います。
――そんな森さんと松村さん印象は? 演じている2人を見て、どんなことを感じましたか?
北斗くんは、お芝居に対して、すごく真面目で謙虚。今回は、初主演ということもあり、すごく責任感を感じているのが分かりました。役に対してすごく考えてお芝居をしている様子が見えましたし、本読みのときにもたくさん質問をしてくれたり、相談してきてくれました。
七菜ちゃんは、「不安なんです」と言いつつ、自分で考えてきたことを演技で見せるタイプ。今回演じた湊は、本音を隠して、ずっとひとりで考えている役なので、合っていると思います。2人のコンビネーションも良かったですし、今回のキャスティングは大成功なんじゃないかなと思います。
――2人のキャスティングは、監督からのオファーですか?
北斗くんが以前に出演していた『坂道のアポロン』のプロデューサーが本作のプロデューサーもしているのですが、『坂道のアポロン』での北斗くんの演技がすばらしく、今回の企画にも合っているんじゃないかということで、北斗くんに関してはプロデューサー主導で決まりました。
それで、じゃあ、湊はどうしよう、と。湊は難しい役なので、演技力があって、大学生にも高校生にも見えて新鮮な女優さんをと考えたときに、七菜ちゃんだとスタッフみんなで話し合って決まりました。
――なるほど。ところで、今回は、渋谷のスクランブル交差点や犬山城など、貴重な場所でのロケも行われたそうですね。
はい、あまり許可が下りない場所なのですが、今回はありがたいことに撮影させていただけました。渋谷のスクランブル交差点は、夜中の12時から朝6時までしか撮影許可が出ないんです。それに加えて、照明機材やレールは持ち込めないなどの制約があるので、皆さん、あまり撮影しないんです。でも今回は、撮影時期がちょうど一番陽が長い7月だったので、朝だったら太陽が出ていたんですよ。渋谷のスクランブル交差点で湊と透が出会うシーンは、この作品の重要なシーンでもあるので、それならば本物の場所で撮影しようということで、朝1時間の撮影時間に賭けて撮影しました。とにかく時間がなかったので、夜中の3時に集合して、準備をしながら、北斗くんと七菜ちゃんには先に絵コンテを見せて、お芝居のテンポも分かってもらってから、撮影に入りました。かなり用意周到に臨んだ撮影だったので、全部OKとなった瞬間に、2人はハイタッチをして喜んでいましたね。
渋谷では、そのスクランブル交差点の撮影を行った後に、カフェのシーンも撮影しています。劇中で出てくるカフェは、実際に渋谷にあるカフェなんです。待ち合わせ場所もそうです。すべてスクランブル交差点から歩いていける範囲にあるので、そこはリアルに映ると思います。
――犬山城で映画撮影の許可が下りたのは、本作が初めてだったそうですが。
そうなんです。原作では、彦根城だったのですが、今まで撮影したことがない国宝であることや、現存する最古の天守閣であることから、きっと湊も烏丸くんも好きだろうと思って、今回、だめもとで聞いてみたらOKをいただけたんです。『ラスト サムライ』の撮影も断ったそうなので、なぜ今回OKが出たのかはわからないですが(笑)。
――国宝の犬山城での撮影だからこその苦労はありましたか?
渋谷のスクランブル交差点と同じように、持ち込める機材に制限があったり、レールなどが使えなかったりということはありました。よく映画やドラマの撮影というと、モニターがたくさん置いてあって、その真ん中に監督が座っている姿を想像すると思いますが(笑)、今回の現場では僕はスマートフォンくらいの小さなモニターを渡されて、それを観ていました。ただ、それは犬山城に限ったことではなく、他のロケでも同じです。今回は、機動力を重視したので、大掛かりな機材を持ち込んで撮影ということはあまりしませんでした。撮影スタッフが、ミュージックビデオなどを主戦場にしている若い人が多く、小回りの効く機材を使い慣れていたので、それらを採用して、僕もほとんど座らず、モニターを持って電波の入りやすいところにいました。
――では、今回、ラブコメディーだからこそ意識することはありましたか?
ラブコメの映画を撮ったのは今回が初めてでしたが、今までの作品にも、それぞれちょっとしたコメディーシーンがありましたし、どの作品にもそういうシーンをどこかに絶対入れたいと思っているのでラブコメだからこそということは特にないです。ただ、ラブコメは前半部分にコメディーを入れて、後半ではラブストーリーになっていくので、前半でいかに楽しんでもらえるかということにはすごくこだわりました。
――これまで監督が手掛けたのは、『百瀬、こっちを向いて』や『映画刀剣乱舞-継承-』など、本作とは全く違うテイストの作品が多かったですよね。
確かにそうですね。原作も違いますし、ノリも違うので、当然全く違う作品になるのですが、ただ、どの作品も登場人物の感情にリアリティーがあれば面白くなると思って作っているので、僕の中では全く違うものを作っている感覚はないんです。それから、これまで撮った作品は全て、嘘をついてる人がテーマになっているので、今回も嘘だという共通点もあります(笑)。
――では、漫画や小説、ゲームという原作があることは映画化するにあたって、意識しますか?
意識はします。今回は、久しぶりに漫画原作になりますが、実は、漫画原作が一番大変なんです。原作ファンはすでに絵を見てるので、期待を裏切らないためにもすごく研究しますし、リスペクトもします。例えば、ここではこういう服を着ているから似ているものにしようとか、この人はこういう趣味だからこれを持つだろうとか、そういった見た目で重要な部分は特に原作に合わせるようにしています。
――役者の演技的な面でも、「原作はこうだったから」というディレクションをすることもあるのですか?
あります。撮影を進めていると役者のお芝居が、ついつい自分のやりやすい方向に進んでいってしまう時があるので、そこは原作に引き戻すようにはしています。
――ありがとうございました。最後に、公開を楽しみにされてる方に一言メッセージを。
すでに観た方からは、すごくハッピーな気持ちになれるという感想をいただいているので、こういった時期だからこそ、この作品を通してハッピーになってもらえたら嬉しいです。この作品が、心の栄養分になればいいなと思います。
映画『ライアー×ライアー』
公開時期:2021年2月19日(金)
出演:松村北斗(SixTONES)、 森七菜、小関裕太、堀田真由
原作:金田一蓮十郎『ライアー×ライアー』(講談社「KCデザート」刊)
監督:耶雲哉治
脚本:徳永友一
配給:アスミック・エース
公式サイト https://liarliar-movie.asmik-ace.co.jp
(C)2021『ライアー×ライアー』製作委員会 (C)金田一蓮十郎/講談社
あらすじ
恋愛経験ゼロの地味系女子大生・湊(森七菜)は、両親の再婚で義理の弟になった同い年の透(松村北斗)と同居中。超無愛想だがイケメンで女癖の悪い透が原因で、2人の仲はギクシャクし、お互いに冷たい態度を取り合っていた。
ある日、親友・真樹(堀田真由)の頼みで、高校の制服を着てギャルメイクで街に出た湊は偶然、透に遭遇してしまう。そして、港は、とっさに別人の“JK・みな”だとウソをつき、それを信じた透が、“みな”にまさかの猛アプロ―チをかけてきた。すぐに正体を明かすつもりだったが、専用のスマホをプレゼントしたり、女関係を清算したりと、ウソのように健気で一途な透の姿に、真実を言いづらくなった湊は、“みな”として付き合うことになってしまう。
文・写真/嶋田真己