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2012年10月2日 18:38

BEN KIM(ベン・キム)、単独インタビュー!

奇跡のピアニスト、レオン・フライシャーに師事し、日本にも多くのファンを持つピアニスト、BEN KIM(ベン・キム)。内田光子やエッシェンバッハを世に送り出した、ミュンヘン国際音楽コンクールで見事優勝を飾り注目を集め、今や世界各国で活躍の場を広げている。その自由なひらめきと知的な解釈との融合で人々を魅了。そんな彼が、1年半ぶりに来日。秋の気配が感じられる、と或る日RanRan Entertainment(ランランエンタメ)のインタビューに応じてくれた。

チェック柄のシャツをサラッと羽織り、爽やかな笑顔で迎えてくれたBEN。少年のような人懐っこい笑顔にクラシックという固いイメージをいっぺんに払拭され、ちょっと肩透かしをくらったかのような、そんな和やかな雰囲気でインタビューがスタートした。

Q:今回の来日目的を教えて下さい。

コンチェルトとして、東京ニューシティ管弦楽団、第83回定期演奏会(9月30日)での共演、そして、東京オペラシティコンサートホールで行われる『未来のマエストロ・シリーズ2012-2013』リサイタル(10月5日/コンサートイマジン主催)をはじめとするリサイタルツアーがあります。また、9月19日に発売しましたアルバム『ショパン:前奏曲集&即興曲集』のプロモーションを行うために来日しました。

Q:5歳からピアノを始められたとのことですが、始めたきっかけは?

僕が幼い頃、両親が忙しく働いていて保育園に通っていたのですが、通園時の時間つぶしにリュックサックの中に小さなキーボートを入れておいてくれたんです。それを僕は夢中になって弾いていたんですね。聞いた音をすぐリプレイできるほど・・・。それを見ていた周りの大人たちが、「この子は鍵盤楽器をやらせるといいかも!」と言ったそうです。かなり興味を持っていたみたいで、それがきっかけになったのだと思います。

Q:では、そんなベン少年は、どんな子供だったのでしょうか?

自分ではよくわからないですが(笑)、他人の話によると、すごく好奇心旺盛な子供で「なぜ?」「どうして?」と常に言っていたそうです。音楽に対しても強い好奇心が向けられたようです。中学生、高校生の頃は、スポーツも大好きでしたし、アカデミックなこと全てに好奇心を持つ子供でした。

 

Q:その中でも、ピアノの練習は夢中でやっていたんでしょうね?

僕の両親は、練習を強制したことがないんです。幼い時期から教育を始める人もいますが、僕の場合はそういったことがなくて、本当に音楽が好きなのかを見極めようと慎重だったようです。ですから、幼い時は6時間も7時間もピアノの前に座っているようなことはなかったですね。両親は、僕の決断に委ねる形をとってくれたので、子供の頃から水泳、サッカー、テニスなど、スポーツは何でもやりました。バイオリンも10年間やっていたんですよ。だけど、不思議なことにピアノは一度もやめようと思わなかった。常にピアノは僕の横にあったのです。

転機となったのは、17歳の夏です。その頃は、音楽の中心地でもないアメリカ・オレゴン州のポートランドに住んでいて、普通の公立高に通っていました。そんな時に、オレゴン州のオーケストラの指揮者であり、バレエ団の指揮者である方が、僕の才能を見てぜひ音楽の道に進むべきだと助言してくれたのです。ニューヨークやボストンなどのプレカレッジに行ってみては?とも進められたのですが、その時はまだそこまで決断ができず、まずはアスペンの音楽祭に参加しました。そこで、それまで会ったことのない音楽大学生たちとの交流を経験し、「音楽家としての人生」を考えるようになりました。そこから音楽に真剣に取り組もうと考えるようになったのです。

Q:5歳からピアノを始めたと聞いていたので、てっきり英才教育を受けられているのかと思いました、普通の少年時代を過ごしたのですね。

はい。そういう時代を過ごせてよかったと思います。英才的教育を受けてきた人から比べたら、始めた年は同じでも、専門的なことや高度なことを吸収することは遅れたとは思いますが、他のことを色々吸収することができたので逆によかったです。

Q:ピアノ以外に興味を持っているものはありますか?

高校生の頃は、プロのピアニストになるとは100%決めていなかったので、大学に入学するにあたって、数学系の試験資格を取っていました。数学が好きなんです。今は本当に音楽で忙しいのですが、自由な時間がとれた時は“ロッククライミング”をします。よく「手に大丈夫なの?」と聞かれるのですが、手だけではなくて体中の筋肉を使うので、とてもいいリフレッシュになるんですよ。

Q:ロッククライミングは楽しいですか?

I love it !! (満面の笑みを見せてくれました(笑))

Q:来日は何回目ですか?

 2006年から、コンサートのために10回くらい来ています。

Q:日本のファンのイメージは?

日本の方は、音楽を大切に思っていて洗練されていますね。演奏家のこともとても大切にしてくれて、礼儀正しいなと思います。クラシック音楽は西洋音楽ですが、日本に入ってきてから長いので、聴衆の中にもレパートリー等、好みがはっきりと分かれていて面白いし、素晴らしくてステキですね。

 

Q:世界各国で演奏されていますが、国によって反応の違いはありますか?

確かに国によって反応の仕方が違います。アジアでは日本以外に台湾や韓国でも演奏しました。どの国でもクラシック音楽に対する愛情、熱い思いというのは変わらないのですが、日本の方は、具体的に「ショパンのこういうところが好き」と掘り下げて言われるところもありますね。あと、礼儀正しいのであまり感情を表に出されないんですが、もう少し出してもいいかな。たとえば、アメリカは、感情とは別に大きな派手な音で終わると派手なアクション、静かな音で終わるとアクションも静かといった感じです。日本ではそうでないですよね。

Q:日本で気に入った場所は?行ってみたいところは?

いつも時間的に余裕がないので色々行くことができないのですが、“東京”という街は、すごく面白いし好きです。日本は、春や秋など季節の変わりゆく姿がステキです。以前、チェコのオーケストラとツアーで東京から九州まで夏から秋にかけて回ったとき、木葉の色が移り変わっていくのを見て感動しました。

Q:日本の食べ物は好きですか?

はい、何でも好きです。僕は食べることが大好きで、最近は料理もします。和食を作るのは無理ですが、イタリア系、地中海系、東南アジアの料理に挑戦しています。好奇心が強いので、初めての料理でも食べてみたい!と思うんです。日本食は全て好きです。

Q:好きな女性のタイプは?

アハハハハ~。(大照れで)そうですね~。僕って、一見大人しそうに見られるのですが、結構にぎやかで元気なんです。だから、静かな落ちついた女性が好きかも。二人してガシャガシャしていたら、うるさいですからね(笑)。

Q:2000年に世界ピアノ・コンクールでの第1位をはじめ、2006年ミュンヘン国際音楽コンクール優勝など数々の賞を獲得し、輝かしい功績をお持ちですが、賞をとった時の気持ちは?取るために何か努力をされていますか?

コンクールに出るということは、まるで銃殺刑するために目隠しして並べられ、バーっと打たれてその玉に当たらなかった人が優勝するといったような感じ。上にいけば精神競争みたいなところもありますが、半分運みたいなものですよ(笑)。僕は、年に1回以上は出ませんし、コンクールフリークではありませんね。よく、ミュンヘン国際音楽コンクールの優勝で見出されたように言われますが、実は、僕がピアニストとして今があるのは、レオン・フライシャーという素晴らしいピアニストと出会いがあったからなんです。高校を卒業する5か月前、たまたま僕が住むポートランドに彼が来て、マスタークラスを行ったので受けてみました。僕は、音楽大学ではない他の大学の入学資格を取っていたのに、「君の才能は凄い。やはり音楽に進まなければダメだ。」と強く言われ、そこで全てが変わったんです。

Q:ご本人は、コンクールで賞をとったことをあまり気にしていないようですね。

何がなんでもコンクールで賞を取りたいというタイプではなかったので、優勝できるとは思ってもいなくてビックリしました。でも、この優勝のおかげでドイツをはじめヨーロッパでのコンサートをすることができ、日本そして世界中で招待を受けるようになり、とても感謝しています。

Q:レオン・フライシャー先生との出会いで、どのような影響を受けましたか?

彼は独特の雰囲気があって、疑うべくもなく一流の音楽家です。彼が語る言葉とか存在感は、なぜか不思議と絶対的なものがあり、支配的とかというものではないのですが、何かを語るとき、それ以外には答えはないんじゃないかという説得力があったのです。モーゼの十戒のような感じで。そして、それがとても自然なんですね。たとえば、車に乗ってカーブを曲がると、遠心力で自然と体が傾きますよね。そういう感覚の雰囲気です。音楽を表現するうえでも無理がないんです。

 

Q:ズバリ、ベンさんにとってピアノの魅力とは?

スポーツをやっていたときもそうでしたが、昔からどちらかというと「一人でできるもの」が好きだったのかも。団体競技も嫌いではないですが、一人で立って自分の力でやっていくというものが好きでした。そういう意味でも、ピアノは自分にとってアクセスしやすい楽器でした。そして、ピアノが持っているレパートリーの豊かさに引かれました。8歳か9歳の頃、ショパンのノクターン集を見て、最初から最後までどんどん引き込まれていったことを思い出します。

 

Q:世界にはたくさん優れたピアニストの方がいますが、他にはないベン・キムさんの魅力は?

自分のことを客観的に語るのは凄く難しいのですね。ただ、僕の目指すところ、こうありたいと思うために日々格闘努力していることがあります。それは、楽譜を開くと音符が並んでいますが、そこから何を読み取るかということ。たとえばシェークスピアの作品にも、一行一行にただそこに書かれているだけではない色々な意味があります。それを映画や舞台で、あたかももうそれしかないような説得力をもって演じられる役者さんがいますよね。彼のためにこのセリフが書かれているのではないかと思うような。僕も、そんな風に楽譜を読み取って演奏できたらいいなと思っています。楽譜も同じように、まずは作曲家の頭の中に音が生れています。まさに楽譜というのは不思議な世界の暗号。その頭の中に分け入っていくように読み解き、その意味を模索しながら、「それ以外に正解はないんだ」というように聴衆の方が感じていただける。そんな演奏ができるようなピアニストになりたいと思っています。

 

Q:最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

皆さんに支えていただいていることにとても感謝しています。そして、先ほど言ったような目標が実現できるように望んでいます。ぜひ聴きに来て下さい。

一つ一つの質問に、丁寧にかつ分かりやすく説明し答えてくれたBEN。彼の音楽に対する真摯な姿勢が感じられたインタビューだった。しかし、ピアノの話以外は、目をくるくるさせて楽しそうに話し、女性の話になると恥ずかしそうに顔をくしゃくしゃにして笑う、ごく普通のイケメンの青年だった。彼の奏でる表情豊かなピアノの旋律、その魅力にあなたもぜひ浸ってほしい。

 photo:Yasuhiko Akiyama

 

~ BEN KIM(ベン・キム)

1983年、アメリカ・オレゴン州ポートランド生まれの韓国系アメリカ人。5歳でドロシー・ファールマンのもと、ピアノを始める。8歳でソロコンサートを、12歳でオーケストラとの共演を果たす。ピーボディ音楽院でレオン・フライシャーに師事。20歳で同音楽院音楽学士課程プログラムを修了。2005年秋より、マルタ・アルゲリッチ率いる、選ばれた7人のピアニストのためのイタリア・コモ湖国際ピアノ・アカデミーに参加する栄誉にも恵まれた。これまでに、バイエルン放送交響楽団、ボルティモア交響楽団ほか多くのオーケストラと共演。現在、ベルリンを拠点に、アメリカ、ヨーロッパ、アジアで活躍している。

 

★ BEN KIM 2012年 来日公演

コンチェルト

9月30日(日)東京ニューシティ管弦楽団 第83回定期演奏会

会場:東京芸術劇場

 リサイタルツアー

ベン・キム ピアノ・リサイタル

出演:ベン・キム(ピアノ)

珠玉のピアノ名曲集 ~「熱情」「革命」「英雄」

・バッハ:主よ人の望みの喜びよ

・モーツァルト:きらきら星変奏曲 ハ長調 K.265

・ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 作品57 「熱情」

・ショパン:プレリュード 変二長調 作品28-15 「雨だれ」

・ショパン:エチュード ハ短調 作品10-12 「革命」

・ドビュッシー:12のエチュードより

・“半音階のために”

・“装飾音のために”

・“反復する音符のために”

・“対比的な響きのために”

・“組み合わされたアルペッジョのために”

・“和音のために”

・ショパン:ポロネーズ 第6番 変イ長調 作品53 「英雄」

http://www.concert.co.jp/concert/detail/253/

10月5日(金)19:00開演

会場:東京オペラシティ コンサートホール

10月8日(月・祝)19:00開演

会場:東京・武蔵野市民文化会館

10月10日(水)19:00開演

会場:富山・市民プラザ

10月11日(木)18:30開演

会場:金沢・北國新聞赤羽ホール

10月13日(土)19:00開演

会場:沖縄・浦添市てだこホール小ホール

NEWアルバム

ベン・キム/ショパン:前奏曲集&即興曲集

2012年9月19日新譜発売!

①    24の前奏曲 作品28

②    4つの即興曲(作品29、作品36、作品51、作品66)

ベン・キム(ピアノ)

SHM-CD/UCCD-1344 定価¥2,800(税込)

発売・販売元:ユニバーサル ミュージック合同会社

http://www.universal-music.co.jp/p/UCCD-1344?s=70305

 

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