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2024年10月1日 12:05

【後編】葵わかなインタビュー 舞台『セツアンの善人』 一人二役は私にとって挑戦です!

――本作は、「善と悪」といった二面性を考えさせる作品だと思いますが、葵さんはご自身に二面性があると考えたことはありますか?

みんなにもあるかもしれないですが、“ちゃんとやらなくては”という気持ちと、“面倒くさいからやりたくない”という気持ちが共存していますね。その葛藤は常にあるかもしれないです。

――今回、シェン・テとシュイ・タの二役を演じられますが、どちらかと言えばシェン・テの方に共感できる部分があるのでしょうか?

どうですかね?すごく極端なキャラクターなので、私から見たらシェン・テはいい人と言い切れないのではないのかな、と思いますね。いい人だけれどもそれは誰にとっていい人なのか?本当のいい人というのは、言った方が良いことは言うでしょうし、誰かのために怒ることもする。シェン・テはいい人認定されていますが、ただ都合がいいだけの人という気もします。シュイ・タはすごく冷酷な人と評価されていますが、逆に合理的でダメなことはダメと言いますし、一概に冷酷とは言い切れないのかなと思って、その差が面白いです。見る人によっても感じ方も違うのかな。稽古に入ってみたらもっと極端になるかもしれないですし。私は今のところどちらの気持ちもわかります。

――この作品は「人はどこまで善人でいられるのか?」「人はお金で幸せになれるのか?」と問いかけてきますが、葵さんがこの問に答えるとしたらどう答えますか?

難しいですね。シェン・テもそれで悩んでいますけれど、善人でいた結果、自分が苦しくなってしまったら本末転倒な気がします。これには答えが出ないですよね。

――「人はお金で幸せになれるのか?」についてはどうでしょうか?

今の自分自身を思うと、まだ、“お金がなくても幸せ”とは言えないかなぁ。この先のこととか現実的に考えてしまいます。まだその域までは行けていないです。この間、白井さんが「お金じゃないんじゃないですか」とおっしゃっていて、あ、白井さんぐらいまでになるとそう思えるのだと思いました。年齢なのか、人間的なものなのかはまだわかりませんが、いつかそこまで見えたらいいなと思いました。

――演劇の可能性について、葵さんはどのように考えていらっしゃいますか?

白井さんが、ブレヒトの良さを話してくださって、「難しいテーマがあるのにそれを難しいままで伝えない。観やすく、エンタメとして楽しめる。ポップに感じられるけれど、その実、テーマが深い。ブレヒトの作品はエンターティメントとしてそういう作り方をされているのが素晴らしい」とおっしゃっていて、それを聞いた時に、確かにそうだと思いました。

自分もそういう部分を意識しながらやっていこうと思っています。それが成立したらすごくいい作品になると思っています。

作品って何か伝えたいテーマがあるから存在しているわけで、でも受け取ってくれる人の姿は明確な誰かではなくて、たくさんの人に向けて何かメッセージを伝える。それって必要なものだろうかと思うこともあります。でも、自分が生きてきて、何か考えが変わるきっかけとか、感動して何かを思うのは、作品や物語に触れていた時であることがすごく多かったので、演劇は、やはり必要なものだと思っています。今回もそういう作品になったらいいなと思っています。

――共演の皆さま、多彩な顔ぶれですね。シェン・テが恋に落ちる失職中のパイロット、ヤン・スンを演じる木村達成さんには、どんな印象を持っていらっしゃいますか?

自分が初舞台の時に共演していて、ご一緒するのが2回目なんです。前回ご一緒してから5年振りに共演するのですが、当時からすごく熱量が高い、エネルギーがすごく強い方という印象でした。そこから時を経ていろいろな場所でご活躍されているのを拝見していたので、自分自身もいろいろな経験をして、またここで再会して、役どころでいうといい関係なのかよくわからないですが(笑)、それもすごく楽しみにしています。木村さんの持っている雰囲気はすごく陽のエネルギーを感じるのにどこか暗い雰囲気もあって、ヤン・スンにぴったりだなと個人的に思っています。白井さんとのお稽古の中で、どんな風にヤン・スンが出来上がっていくのか楽しみです。自分も、ヤン・スンと対峙して、どんな風に心が動くのか、変化していけるのかをすごく楽しみにしています。

――木村さんは既に白井さん演出作品に出ていらっしゃいますね。

この前3人でインタビューを受けた時にいろいろ伺って、お二人の関係性は深いものがあるのだなと感じました。

――何かアドバイスなどあったのでしょうか?

木村さんも、やるのみ、頑張るのみという感じでした。きっと熱のこもった稽古場になるのではないかと想像しています。ご一緒させていただく皆様はお芝居の道をまっすぐ歩まれてきた方が多いと思うので、正直すごく緊張もしています。でも一緒に稽古場にいて、得られるもの、刻まれるものがあると思うので、自分のことで一杯一杯になり過ぎて周りが見えなくならないように、稽古場の時間を大切にしたいと思います。

――先ほど、稽古場には何も考えないでいく、とおっしゃっていましたが、今回男性の役もされるということで、何か準備はしていこうと思っていらっしゃいますか?

音楽劇なので、女性のシェン・テとして歌う歌もあれば、男性のシュイ・タとして歌う歌もあります。男の人の声として歌を歌ったことがないので、音程なのか声の出し方なのか、そういうものはバリエーションとして準備していけるものなので、そういった練習はしていきたいと思っています。

――最後にご覧になる皆さまに向けてメッセージをお願いいたします。

テーマとしては「善と悪」「幸せとは何か?」「お金は必要なものなのか?」といった、答えがない、みんなが普遍的に抱えているものだと思います。それをユニークなキャラクターと、音楽の力を使って、楽しんでいただきつつ、没入してもらえるような作品になると思いますので、難しく捉え過ぎず楽しんで観ていただけたらなと思います。

――ありがとうございました。

『セツアンの善人』
東京公演
日程:2024年10月16日(水)~ 2024年11月4日(月・休)
会場:世田谷パブリックシアター
作:ベルトルト・ブレヒト
音楽:パウル・デッサウ
翻訳:酒寄進一
上演台本・演出:白井晃
訳詞・音楽監督:国広和毅
出演:葵わかな 木村達成 渡部豪太 七瀬なつみ あめくみちこ
小林勝也 松澤一之 小宮孝泰 ラサール石井 ほか
主催:公益財団法人せたがや文化財団
企画制作:世田谷パブリックシアター
後援:世田谷区
ツアー情報
兵庫公演
日程:2024年11月9日(土)13:00、11月10日(日)13:00
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
公式サイト https://setagaya-pt.jp/stage/16042/

【ストーリー】
善人を探し出すという目的でアジアの都市とおぼしきセツアンの貧民窟に降り立った3人の神様たち(ラサール石井、小宮孝泰、松澤一之)は、水売りのワン(渡部豪太)に一夜の宿を貸してほしいと頼む。ワンは街中を走り回って神様を泊めてくれる家を探したが、その日暮らしの街の人々は、そんな余裕はないと断る。ようやく部屋を提供したのは、貧しい娼婦シェン・テ(葵わかな)だった。その心根に感動した神様たちは彼女を善人と認め、大金を与えて去っていった。それを元手にシェン・テは娼婦を辞めてタバコ屋を始めるが、店には知人たちが居座り始め、元来お人好しの彼女は彼らの世話までやくことになってしまう。ある日、シェン・テは、首を括ろうとしていたヤン・スン(木村達成)という失業中の元パイロットの青年を助け、彼に一目惚れをしてしまう。その日からシェン・テはヤンが復職できるように奔走し、金銭的援助もしはじめるのだが、その一方で、人助けを続けることに疲れ始めていた彼女は、冷酷にビジネスに徹する架空の従兄、シュイ・タ(葵わかな・二役)を作り出し、自らその従兄に変装をして、邪魔者を一掃するという計画を思いつく……

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取材 文:高橋美帆  撮影:藤咲千明

 

 

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