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2010年11月3日 02:18

豊川悦司ら映画「一枚のハガキ」舞台挨拶&会見

10月27日、東京・六本木ヒルズにて東京国際映画祭のコンペティション部門正式出品作として、巨匠新藤兼人監督作品「一枚のハガキ」が上映され、舞台あいさつと記者会見が行なわれ、新藤監督、主役の豊川悦司、大竹しのぶ、共演の六平直政が登場した。

 98歳にして49本目となる今作品を「映画人生最後の作品」と語る監督。本作品は、100名の中で生き残った、わずか6名のうちのひとりとして生きた新藤監督の実体験が基になっており、選択権なしに狩り出された庶民に対する思いを映画にしたもの。

舞台挨拶で監督は、「自らの人生が94人の犠牲の上に成り立っているといつも考えて生きてきた。そしてその意味を解決するためにこの映画に取り組んだ。」とし、「戦争は死んだ兵士だけでなく、あとに残した家庭も破壊する。絶対に戦争はやってはいけない!!」と力強く語った。さらに、「お金がなくてつまずくこともあったが、泣いていても仕方がないと地べたを這いずりながら上を向いて映画を撮ってきた。体も頭も少し弱ったのでこれが最後の作品。」と伝えると、六平や会場からも「ぜひ50本目を!!」と声援が送られた。

 今回の映画撮影を振り返り、「自分がいつ死ぬかと、俳優さんや、スタッフも自分も心配しながら撮っていた。」と笑いを誘い、「ちゃんと生きて仕事をしなければいけないという一念で撮り終えることができた。俳優さんやスタッフの皆さん、そして自分自身に感謝している。」と述べると、会場から盛大な拍手を浴びた。

 また、啓太(豊川)は、いつから友子(大竹)に心移りをしたのか?という問いに、
豊川は、「ラストシーンの後半からだと思う。」と答えると、大竹が「ショック!私は出会った時からちょっといいなと思っていたのに。男の人なんてそんなものね・・・。」ちょっとすねて見せ、会場を笑わせる場面も。

 監督が選んだという衣装について、豊川は「戦争直後の服が予想よりカラフルだったが、これが映画のリアリズムというものかと思った。」と感慨深げに語った。

 
~~~「一枚のハガキ」~~~
戦後の惨禍は一兵士の戦死に止まらない。大黒柱を失った家族は破壊される。庶民一人ひとりから見た戦争被害を最後の作品のテーマにした。ストーリーの発端は新藤の体験が基になっており戦争に選択権なしに狩り出された庶民に対する思いを映画にした。

(あらすじ)
戦争末期に召集された100名の中年兵は上官にクジを引かれそれぞれの戦地に赴任した。クジ引きの夜松山啓太はひとりの兵から妻からの一枚のハガキを託される。「今日はお祭りですが あなたがいらっしゃらないので 何の風情もありません」戦死するだろうから生き残ったらハガキは読んだと妻を訪ねてくれと依頼された。終戦になり100名の内6名が生き残りふるさとに帰った啓太を待っている者はなかった。妻は啓太の父と出奔していた。生きて帰るとは思わなかったのだ。ハガキを書いた友子は夫の亡き後、義父に懇願され夫の弟と再婚したが弟も赤紙がきて戦死した。義父がショックで死に義母は自殺した。貧しい農家に友子はひとり残り滅びようとしていた。その時、啓太がハガキを持って訪ねてき、実情を知った。

 ☆ レビュー☆
 反戦のメッセージを庶民目線から送っていて、とても共感できる映画。役者のひとり1人の個性が活かされていて、戦争時代の映画といえども、決して暗いばかりではなく結構笑えるシーンも多く楽しく観ることができる。苦悩の戦時中を淡々と表現し、自分の意思でなくクジで決められた人生をも潔く生きてきた力強さを感じた。ラストの麦畑一面のシーンも圧巻で、情景がとてもいい。
反戦のメッセージだけでなく、今生きている人たちに、これからの人生においてのエールも贈られているのでは?

 『一枚のハガキ』は、2011年夏より全国ロードショー

 

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