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2021年10月28日 17:00

【前編】『アイの歌声を聴かせて』吉浦康裕監督インタビュー! ジュブナイル+AI+ミュージカルの普遍的なエンターテインメント

取材:記事・写真/RanRanEntertainment

ポンコツ“AI”とクラスメイトが織りなす、爽やかな友情や絆を描いた『アイの歌声を聴かせて』が、10月29日(金)から公開される。
景部市高等学校に転校してきた謎の美少女、シオンは抜群の運動神経と天真爛漫な性格で学校の人気者になるが、実は試験中の「AI」だった。シオンはクラスでいつもひとりぼっちだったサトミの前で突然歌い出し、思いもよらない方法でサトミの“幸せ”を叶えようとする。スコットランドで開催された日本アニメの映画祭「Scotland Loves Animation」でAUDIENCE AWARD(観客賞)を受賞し、シオンの声を土屋太鳳、サトミを福原遥、そしてサトミの幼馴染のトウマを工藤阿須加が務めることでも話題の本作。今回は、原作・脚本・監督を務める吉浦康裕監督に、本作の制作の裏話や本作への思いを聞いた。

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――本作で描かれている昔ながらの日本の風景、文化のなかにAIがいるという光景が、私にはすごく不思議なものに見えて、新鮮でした。

ある企業がAI製品を普及させようと頑張っているけれども、まだ法整備も進んでいない過渡期の中、実験特区として先行して試験的にAIを使っている地域を舞台にしています。そうなると、おそらく都心よりはちょっと田舎になるだろうということで、あの景色が生まれました。それから、サトミの自宅は、古民家をリノベーションしていて、見た目は古い家なのに、セキュリティや家電は最新のものを使っているというのも面白いなと思い、そういったギャップを見せたいという思いもありました。

――なるほど。では、本作の最初の発想はどこから生まれたのですか?

王道のオリジナル作品で、幅広い層に楽しんでもらえる普遍的なエンターテイメントを作るというのが最初の目標でした。そう考えた時、自分の考える王道はやはり少年少女が活躍するジュブナイルで、そこに僕がデビューした当時から興味を持って描いてきたモチーフであるAIを足した、という流れです。昨今は、AIという言葉自体がメジャーになってきて、こういった枠組みの映画だでもそのモチーフを使える良い時代になってきたので、それで「ジュブナイル+AI」が最初にのコンセプトになったんです。ただ、作っていく中で、まだ何かが足りないとなり、そこにミュージカル的な要素を付け加えて、今回の形になりました。

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――監督は、AIのどこに魅力を感じていますか?

シオンというキャラクターが顕著だと思うのですが、彼女はAIなので、一見人間のようでいて、AIならではの特殊な性格づけができるんです。例えば、融通が利かず、1つの命令をひたすら実行し続ける。融通が利かないというのは、裏を返せば一途で健気とも取れます。
もし、シオンが人間だったら、その性格付けは嘘くさくなってしまいますし。でも、ロボットやAIだとその健気さも、観客は素直に受け取ってくれる。「だって、ロボットだから」と。なので、僕は、作劇的に「人間そっくりなんだけど、実はロボットなんです」というのは非常に魅力的な装置だと思っているんです。それに、この作品は、歌がテーマになっていて、突然歌い出すという特殊な状況が「彼女はAIだから」というのに妙にマッチするんです。今回、ミュージカルファンじゃなくても受け入れてもらえるようなミュージカルにしたいという思いもあったので、シオンがAIであることで、その違和感もなくなり、自分でも気に入っています。

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――アニメ作品にミュージカル的な要素を入れようというのは、本作以前から考えていたことだったんですか?

脚本を詰めていく段階で、共同脚本の大河内(一楼)さんとブレストしていく中で出てきたアイディアなのですが、僕自身、監督を目指していた中高生の頃から、ミュージカルを日本の手描きのアニメーションでやりたいとずっと思っていました。結果的に、自分がやりたいことを全部組み合わせた作品ができるな、と。

昨今は、テレビシリーズのアニメーションでも、歌ったり踊ったりすることは、それほど特別なことではないとは思うんですよ。主にライブシーン等で。ですが、自分がやりたかったのはあくまでもミュージカル。さっきまで会話していたキャラクターがシームレスに歌い出すというのをやりたかったんです。それは、ある意味チャレンジングだったと思います。というのも昨今、歌唱シーンってCGで描くのがメジャーな手法なんですよ。ですが、さっきまで手描きだったキャラクターが次のカットではCGになるのは違和感がある。つまりミュージカル=手描きアニメーションでキャラクターを歌わせる必要があった。それは大きなチャレンジでしたが、完成したらオンリーワンの作品になるんじゃないかと決意して制作することにしました。

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――確かに、アイドルもののアニメで歌うのとは全く違う、ミュージカルらしさを本作には感じました。

ミュージカルって、キャラクターのその時の心象風景を歌い上げるのが一つの王道のスタイルだと思うのですが、この作品ではいわゆる“ミュージカル ルール”は発生しないことにしました。シオンが突然歌い出すと周りはポカーンとする。それでも、シオンが歌ったその歌が、次第に周りに良い影響を与えて、それでお話が前に進むという構図にしたかったんです。だから、やっぱりAIシオンというキャラクターがあったからこそ成立するミュージカルになったと思います。

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――歌うことで周りに影響を与えることができるという、いわゆる「歌の力」みたいなものは、監督はこの作品以前から感じていたことなんですか?

そうですね。僕は、中高生くらいの時から、将来アニメーションを作りたいと思っていたんですが、当時はディズニーの手描き劇場アニメが全盛でした。ちょうど『美女と野獣』や『ライオンキング』『アラジン』などが公開された時代で、そういう映画を観て、いつかは日本のアニメーションでこういうスタイルのミュージカルをやりたいと思うようになったんです。それがずっと自分の中にくすぶっていて、今回お「突然歌う」というアイディアが出てきたときに、ミュージカルにすれば面白くなるんじゃないかという理屈以上に、ずっとやりたかったことができるという気持ちがありました。なので、今作は「本当にやりたいこと」×「本当にやりたいこと」が実現した作品です。その分、熱量やモチベーションは高かったと思います。

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――そうするとシオンの歌声は、本作のかなり重要なキーになったんだと思います。土屋太鳳さんがシオンの声を担当し、透明感のある歌声を披露されていましたが、監督からみて土屋さんの歌声はいかがでしたか?

シオンはAIなので変幻自在にいろいろな歌を歌えるという設定で、シオンが劇中で歌う曲は全部が違う曲調、違う歌い方でした。だから土屋さんは本当に大変だったと思います。でも、それをやってくださったので、本当にありがたかったです。曲ごとにそれぞれレッスンを積んでくださっていたようで、明るい曲も小悪魔的な曲もバラードも、本当に素晴らしかったという思いしかないです。歌が要の作品ですので、感謝しかありません。シオンというキャラクターに命が吹き込まれた瞬間でした。

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後編~

『 アイの歌声を聴かせて 』
10 月 29 日 (金) 全国ロードショー

配給: 松竹
コピーライト:© 吉浦康裕・ BNArts /アイ歌製作委員会

<STORY>
景部高等学校に転入してきた謎の美少女、シオン(cv土屋太鳳)は抜群の運動神経と天真爛漫な性格で学校の人気者になるが…実は試験中の【AI】だった!

シオンはクラスでいつもひとりぼっちのサトミ(cv福原遥)の前で突然歌い出し、思いもよらない方法でサトミの“幸せ”を叶えようとする。

彼女がAIであることを知ってしまったサトミと、幼馴染で機械マニアのトウマ(cv工藤阿須加)、人気NO.1イケメンのゴッちゃん(cv興津和幸)、気の強いアヤ(cv小松未可子)、柔道部員のサンダー(cv日野聡)たちは、シオンに振り回されながらも、ひたむきな姿とその歌声に心動かされていく。しかしシオンがサトミのためにとったある行動をきっかけに、大騒動に巻き込まれてしまう――。
ちょっぴりポンコツなAIとクラスメイトが織りなす、ハートフルエンターテイメント!

<CAST>
土屋太鳳 福原 遥 工藤阿須加 興津和幸 小松未可子 日野 聡
大原さやか 浜田賢二 津田健次郎 咲妃みゆ カズレーザー(メイプル超合金)
<STAFF>
原作・監督・脚本:吉浦康裕
共同脚本:大河内一楼 キャラクター原案:紀伊カンナ 総作画監督・キャラクターデザイン:島村秀一
メカデザイン:明貴美加 プロップデザイン:吉垣 誠 伊東葉子 色彩設定:店橋真弓 美術監督:金子雄司〈青写真〉

撮影監督:大河内喜夫 音響監督:岩浪美和 音楽:高橋 諒 作詞:松井洋平
アニメーション制作:J.C.STAFF 配給:松竹
歌:土屋太鳳
©吉浦康裕・BNArts/アイ歌製作委員会
公式 HP:https://ainouta.jp/introduction.html
公式 Twitter/Instagram:@ainouta_movie

 

 

 

 

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