左から)海乃美月 桜井玲香
──柿澤勇人さんと矢崎広さんのクライドが全く違うというお話ですが、それぞれどんな魅力を感じていますか?
桜井 柿澤さんはすごくエネルギーのある方で、お芝居もかなりパワフルなので、柿澤クライドに似合うボニーでいる為には、自分も最初から相当ギアをあげないと、と思っています。何と言うか「主人公感」がありますね。
海乃 あぁ、それは感じる。
桜井 ご自身がすごく発光していらして、ぼーっとしていたらどんどん先に行かれてしまうような感覚を、これまでもご一緒させていただく時にいつも感じていたのね。だから必死についていかなければいけないし、特に今回はただ寄り添うだけではなくて、対等に隣に立たなければいけない役柄なので、こちらも「いつでも張り倒す!」(笑)くらいの勢いで行かないと、と日々感じています。矢崎さんのクライドは全く違う角度から創られていて対抗する勢いみたいなものとはまた違うお芝居になっていると感じます。
海乃 矢崎さんは周りのことをとてもよく見ていらして、稽古場の空気を読んでくださっているんですよね。お芝居をしながらも周りのことが見えるって本当にすごいなと思っていて。
桜井 そう、すごいことだよね。
海乃 同時にご自身のクライド像を緻密に組み立てていらっしゃって、毎日新鮮に、一からお芝居をやっている感覚になります。柿澤さんは本当にぐんぐん進んでいらしていて、そこに乗っていくエネルギーが必要ですね。組み合わせによって全然違うボニーになりそうです。
──皆さんきっと、じゃあ別の組み合わせならどうだろう、とリピート欲を駆り立てられますよね。
海乃 ボニーには、終幕に向かって行く過程で何回か人生の選択を迫られる役だと思うんですよね。是非組み合わせを変えてご覧いただきたいです。
──ところでお二人共、とても大きく括らせてもらうと「ガールズチーム」のご出身ですが。
海乃 あぁ、そうか!
桜井 確かに(笑)
──海乃さんは宝塚退団後の初舞台がシアタークリエとなりますが、桜井さんもミュージカル初出演がシアタークリエでしたよね?
海乃 そうなの?
桜井 そう『レベッカ』という作品で。
海乃 何年前?
桜井 2018年の夏だから、もうすぐ7年?
──初めてクリエに登場されることについての思いが、おわかりになるのでは?
桜井 海ちゃんは舞台を極めてこられている方だから、私とではスタートが違うので感じ方も違うと思いますが、やっぱり男性と近い距離でお芝居をすることが、当時の私もほぼほぼなかったから、すごく緊張したので「頑張って!」と思っています。
海乃 それは私も本当に緊張していて、こうして距離を縮めていくのかと、玲香ちゃんを見ながら勉強しているの。
桜井 今回、(ラブシーン等で俳優の意向を尊重しながら演出意図のよりクリアな体現を目指したり、心理的な安全性を保つなどを担当する)インティマシーコーディネーターの方に入っていただいていますが、海ちゃんはかなり挑戦をしていると思うから、そこはダブルキャストだし、私も不安なことはいろいろあるので、お互い支え合いたいなと思っています。
因みにクリエはお客様が近くて、ダイレクトにお客様の感情がわかることもあるんですよ。
海乃 緊張しそう!
──感覚としては宝塚バウホールの方に近いのかな?と思います。客席からの印象ですが。
海乃 あぁ、そうですよね。(桜井に)宝塚にもバウホールってキャパ500席の小劇場があるの。
桜井 そうなんだ!大きな劇場ばかりかと思ってた。
海乃 若手が主演をさせていただけたりもする小劇場で、客席との一体感があって。
桜井 クリエも一番後ろの席までまとまりがあって。細かいお芝居もできる感じ。
海乃 そこが私にはひとつのハードルで。宝塚大劇場だと大きめの芝居が必要だし、「男役」「娘役」という、役を演じる前にひとつの型というのかな、「宝塚の娘役としてこうあるべき」というものがまずあったのね。
桜井 あぁ、そうか、そうか。
海乃 今回それがないから。
桜井 自分自身として演じるということでしょう?
海乃 そう、自分に近いもので演じやすいというか、自分の感情にストレートにハマっていけばいいのかなって。
桜井 すごく新鮮なんだね。
海乃 宝塚出身の人がみんなそう思うのかはわからないけど、私はゼロからスタートしている感じ。宝塚に14年いたからさっき玲香ちゃんはスタートが違うと言ってくれたけど、全く違う感覚があるのね。だから失敗しちゃダメだと思ってしまったりもするけど、玲香ちゃんはもちろん、皆さんが優しくサポートしてくださるので「新人です!」というつもりでやっています。
──桜井さんが「乃木坂46」を卒業された時にはどんな感覚でしたか?
桜井 いま海ちゃんの話を聞いていて、似た感覚を持っていたなと思いました。やっぱりグループの名前というフィルターがひとつかかっていたから、それが保険にもなってくれていた代わりに、アイドルが舞台の世界にお邪魔させていただいている、というような気持ちも正直どこかにあったんです。「アイドルとして」がいつもベースにあると言うか。でも乃木坂を卒業して、ひとりの役者として再スタートした時に、寄りかかれるものがなくなって、より努力をしなければならないし、やっぱりグループの名前を含めて与えてもらってきたものを、一人で掴みにいかなければならないので、自分自身のスキルアップに対しての意識も大きく変わったなと思っています。
──こうしてお話を伺っていると、共通するものがたくさんおありになるお二人の舞台がとても楽しみで、同時に同じ舞台に立たれているのが観られないのは残念でもあるのですが。
桜井 そう、Wキャストってそれがね~。次は海ちゃんと一緒の舞台にも立ちたい!
海乃 是非是非!
──その未来も楽しみにしつつ、まずこの『ボニー&クライド』の舞台を楽しみにしている方たちに、メッセージをお願いします。
桜井 フランク・ワイルドホーンさんの楽曲がとてもキャッチ―で、本当に素敵な曲がたくさんあるので、観てくださっている皆さんに全てが印象に残るよう、大切に歌っていきたいです。楽曲を含め疾走感があって、カッコいい作品ですから、もし辛いことやイライラすることがあったとしても、劇場を出る時にはスッキリしている、そういう爽快感のある作品だと思っています。パンチのある作品をお届けできるよう頑張ります。
海乃 私はワイルド・ホーンさんが音楽を手掛ける作品に出演するのが初めてで、改めて素晴らしさも難しさも感じています。ポニーの歌は他のキャストの方々と比べてバラード系が多いのですが、メロディー自体にボニーの真っすぐな心情が描かれているのを感じるんです。そこに乗ることで、更に楽曲が引き立つように歌いたいです。玲香ちゃんが言った通り、本当に疾走感とスピード感のある作品で、登場人物の感情の起伏が手に取るように伝わる作品なので、ボニーとして存在感を出せるよう頑張りたいです。是非観にいらして下さい!
ミュージカル『ボニー&クライド』
3月10日(月)~4月17日(木)@シアタークリエ
脚本:アイヴァン・メンチェル
歌詞:ドン・ブラック
音楽:フランク・ワイルドホーン
上演台本・演出:瀬戸山美咲
出演:柿澤勇人/矢崎広(Wキャスト) 桜井玲香/海乃美月(Wキャスト)
小西遼生 有沙瞳 吉田広大/太田将熙(Wキャスト)
霧矢大夢 鶴見辰吾 ほか
【公式サイト】
https://horipro-stage.jp/stage/bonnieandclyde2025/
https://www.tohostage.com/bonnie_and_clyde/index.html
《全国ツアー》
【大阪】2025年4月25日(金)~30日(水)@森ノ宮ピロティホール
〈お問い合わせ〉キョードーインフォメーションTEL.0570-200-888(11:00~18:00、日祝休み)
【福岡】2025年5月4日(日)~5日(月祝)@博多座
〈お問い合わせ〉博多座電話予約センターTEL.092-263-5555(11:00~17:00)
【愛知】2025年5月10日(土)~11日(日)@東海市芸術劇場大ホール
〈お問い合わせ〉メ~テレ事業TEL.052-331-9966(平日10:00~18:00)
ヘアメイク:高橋里帆(Happy Star)/スタイリング:山本杏那(桜井)ヘアメイク:小澤桜(MAKEUPBOX)/スタイリング:宇田川純子(海乃)
取材・文:橘涼香/撮影:有田純也