取材:記事・写真/RanRanEntertainment
――他の作品でも役に入り込んで抜けなくなるということがあるんですか?
よく憑依型と言われる女優さんは、役が乗り移って、なかなか落ちないと言いますよね。でも、私はそういうタイプではないんですよ。自分では、俯瞰(ふかん)で役を見ているタイプだと思っていたんですが、この作品で初めて“抜けない”という体験をしました。
――それだけ綾子というキャラクターが強烈だったんですね。
そうだと思います。この映画を観た方は大抵綾子のことを「嫌な女だね」と言うんですよ。今回、撮影後に、その綾子の嫌な部分だったり、綾子を構成している要素を、自分自身のもののように捉えてしまった時期があったんですよね。それで自己嫌悪に陥ってしまって…今はだいぶ客観的に見られるようになりました。
――ところで、杉野さんは俳優だけでなく、監督、プロデューサーとして日本のみならず、海外でもご活躍されていらっしゃいます。バイタリティー溢れる活動の原動力はどこにあるのでしょうか?
日々目にするニュースだったり、世の中で起こっていることに対しての疑問だったり、沸き起こる怒りや感情だと思います。もっと人は自由だし、もっと人の可能性は無限大だし、人の根底には誰だってピュアなものがあるはずという祈りのような感覚があるんでしょうね。私自身も固定観念に囚われているところがあるので、それを開放したいという思いもあります。
――このコロナ禍では、その活動にも色々と制限があったのではないかと思いますが、コロナ禍を経験して、今、どんなことを感じていますか?
コロナ禍で、例えば海外に渡航できないという状況が続いたことで、肉体的な自由さよりも私は精神的な自由さを求めているんだなと改めて感じました。もちろんアメリカにも韓国にもフランスにも行きたい。今まで世界を飛び回っていたのに、なんで行けないの? というもどかしさはありました。ですが、それよりももっと自分が乗り越えたいと思っていたのは、思考や精神の自由さなんだということを突きつけられたように思います。ただ、貴志と綾子もそうですが、何かに囚われてしまっている状態というのは、結局は自分の心が生み出したものなのだろうと捉えています。
――改めて、作品の見どころと、上映を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。
初めて観ると、物語や会話、そしてキャラクターの強烈さに戸惑う方もいらっしゃるかもしれませんが、2回3回と観ていただくと、また違った見方ができる作品です。私は、この作品を何度も観ましたが、見方がどんどん変わっていくんですよ。けして明るいお話ではないですが、最後には驚きの展開があり、解放感を感じられると思います。
暗闇の中で一筋の光を探し求める登場人物たちの姿を、是非映画館の暗闇で見ていただきたいです。
――ありがとうございました。
■あらすじ
亡くなった妻に囚われ、夜ごと精神安定剤を服用する精神科医・貴志(仲村トオル)のもとに現れたのは、モラハラの恋人に連れられ患者としてやってきた綾子(杉野希妃)。恋人との関係に疲弊し、肉親の愛に飢えていた彼女は、貴志の寄り添った診察に救われたことで、彼に愛を求め始める。いっぽう妻(中村ゆり)の死に罪悪感をいだき、心を閉ざしてきた貴志は、綾子の救済者となることで、自らも救われ、その愛に溺れていく…。しかし、二人のはぐくむ愛は執着と嫉妬にまみれ始め、貴志の息子・祐樹(藤原大祐)や義父母との関係、そしてクリニックの診察にまで影響が及んでいく。そんな頃、義弟・茂(斎藤工)から綾子の過去について知らされ、さらに妻の秘密までも知ることとなり、貴志は激しく動揺するのだった。自身の人生がぶれぬよう、こらえてきた貴志のなかで大きく何かが崩れていく。失った愛をもう一度求めただけなのに、その渦の中には大きな魔物が存在し、やがて貴志の人生を乗っ取り始める。かたや綾子は、亡き妻にいまだ囚われる貴志にいらだち、二人の過去に激しい嫉妬をいだく。彼女は貴志と妻の愛を越え、極限の愛にたどりつくために、ある決断を下すのだった――。
映画『愛のまなざしを』
2021年11月12日(金)より全国公開
出演:仲村トオル 杉野希妃 斎藤工 中村ゆり 藤原大祐
万田祐介 松林うらら
ベンガル 森口瑤子 片桐はいり
監督:万田邦敏
脚本:万田珠実 万田邦敏
プロデューサー:杉野希妃 飯田雅裕
企画:和エンタテインメント
配給:イオンエンターテイメント 朝日新聞社 和エンタテインメント
製作:「愛のまなざしを」製作委員会
(ENBUゼミナール 朝日新聞社 和エンタテインメント ワンダーストラック イオンエンターテイメント はやぶさキャピタル)
(c) Love Mooning Film Partners
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